レセプト請求に対して、審査側が適当でないと判断した場合にレセプトを差し戻すことを「レセプト返戻」と呼びます。
厚生労働省はレセプトの完全オンライン化を推奨しており、現在では電子レセプトは全体の9割を占めるようになりました。
2021年7月処理における、社会保険診療報酬支払基金の請求状況は、以下のようになっています。
参考:オンラインによる返戻再請求のご案内ーオンライン請求を実施されている保険医療機関及び保険薬局の皆さまへー|社会保険診療報酬支払基金 (ssk.or.jp)
国は10年以上という長い時間をかけて、レセプトの電子化を推進してきました。その結果、電子レセプトが主流になりましたが、請求方法は完全にオンライン化できていません。CDやDVDなどの電子媒体でレセプト請求を行う医療機関は全体の23%にのぼります。オンライン請求であれば電子媒体への出力や郵送の手間、データ紛失のリスクを減らすことも可能です。電子媒体での請求がなくならない理由としては、以下の事情が考えられます。
・オンライン請求に対応したレセコンや、オンライン請求用のパソコン準備への設備投資が難しい
・院内のネットワークやセキュリティがオンライン請求に対応できていない
電子レセプトによるオンライン請求に一本化するためには、こういった医療機関へのサポートも必要になってくるでしょう。
レセプト返戻のオンライン媒体・紙媒体、現状の割合は?
電子レセプトが主流になっても、レセプト返戻や再請求は紙媒体での実施が可能でした。この背景には、医事システムとの互換性やシステム上の問題の発生、作業の煩雑化を避けるためなどの事情があったようです。実際、返戻レセプトのダウンロードの状況は以下のようになっており、電子レセプトと比べると普及が進んでいないことがわかります。
参考:社会保険診療報酬支払基金「オンラインによる返戻再請求のご案内ーオンライン請求を実施されている保険医療機関及び保険薬局の皆さまへ」
レセプト請求のオンライン返戻・再請求の制度変更について
厚生労働省は、以下を理由にレセプトに関連したすべての業務をオンライン化する方針です。
・医療保険事務全体の効率化を図る
・オンライン請求に取り組む医療機関と薬局のデジタル化のメリットを最大化する
2021年1月時点で、同年10月よりオンライン請求可能な医療機関では紙媒体での返戻を廃止する案を出していました。しかし、同年11月には廃止のスケジュールを変更するとしています。
具体的には、紙媒体による返戻は当面継続したうえで、医療機関の準備ができたところで廃止を決定する予定です。
また、紙媒体での返戻レセプトにかかわる再請求を除き、オンライン請求を行う医療機関は再請求も2022年度中にオンラインによるものとする案を出しています。現場の混乱を招かないように、段階的な移行が進められているのです。
社会保険診療報酬支払基金は、レセプト請求のオンライン返戻・再請求のメリットを6つあげています。
【メリット1】メリット1 電子レセプトとしての一元管理
ダウンロードした返戻レセプトをオンラインで処理し、電子レセプトと一元的な管理が可能です。
【メリット2】セキュリティの強化
オンライン返戻・再請求では、暗号化通信だでけでなく、安全性が確保されたネットワーク回線を使用します。紙媒体の返戻・再請求の際に起きうる書類の破損や紛失の問題が発生しません。
【メリット3】ASPサービス
事務的・人為的な記録ミスで返戻・再請求となるケースをシステムの自動チェックで回避可能です。
社会保険は、毎月10日締め切り後の同月内12日までであれば、オンライン上でエラーを訂正して再提出できます。
【メリット4】ペーパーレス
紙に出力する必要がなくなるため、ペーパーレスを実現できるというメリットもあります。
【メリット5】業務量の軽減
再審査等請求を紙レセプトに出力する手間が不要になります。再審査等請求内訳票を添付する作業も同様に不要となり、業務量の軽減が期待できるでしょう。
郵送や持ち込みの際には受付時間が制限されていましたが、オンライン化によって土日祝日でも提出が可能です。
【メリット6】統計・分析への対応
データを電子化するため、履歴管理が容易になります。さらに、統計・分析といったデータの二次利用も可能です。