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クリニック・薬局経営コラム

クリニックの法人化は医療法人以外も!MS法人の活用と留意点

クリニック開業を目指していたり、すでに開業されている先生のなかには、法人による経営を検討している方も多いと思います。しかし、医療法人の設立となると、いろいろな制約があり、躊躇される先生もいらっしゃるかもしれません。そこでこの記事では、法人化のメリットも享受できる「MS法人」の設立についてご紹介していきます。

MS法人とは何か?

「MS法人」とは、メディカル・サービス法人の略で、「クリニックは医療行為(非営利事業)に特化し、非医療行為を切り出して法人化することを目的」としています。クリニックを一括りにして管理せず、医療行為とそれ以外を分けて経営することが、MS法人の事業目的です。
クリニックが別に法人を併設しているケースとしては、眼科におけるコンタクトレンズなどが代表例といえるでしょう。
このほか、クリニックの建物をMS法人で所有し、クリニックに賃貸することは医療行為にはあたりません。MS法人で建築・取得してクリニックに賃貸することができます。
診療科によっては、高額な医療機器が必要となるため、MS法人で取得してクリニックにリースすることもできるでしょう。
また、保険請求業務は医療行為ではないため、別会社に外注することも可能です。つまり、どの診療科でもMS法人設立のチャンスがあります。

医療法人との違いについて

クリニックの法人化といえば、まず、医療法人設立が思い浮かびます。確かに、過去においては有効な手段であったといえます。
しかし、平成18年に医療法が改正され、社員(株式会社でいう株主のこと)に対して持ち分を定めることができなくなり、解散時の残余財産の帰属先は、「国、地方公共団体、公的医療機関の開設者、財団または持ち分の定めのない社団の医療法人」のなかから選ぶことしかできなくなりました。
つまり、医療法人にすると、解散時に自分へ取り戻すことができなくなったのです。これが、医療法人化の最大のデメリットです。
一方、MS法人の場合、非医療行為部分に限られますが、解散した場合、財産は株主(先生)に帰属します。クリニック部分は個人事業として運営し、それ以外をMS法人所有にすることにより、解散しても財産を取り戻すことができます。

MS法人のメリット

MS法人設立の最大のメリットは、節税効果にあります。個人の場合、所得税は超過累進課税になるため、住民税込みの最高税率は55%に対し、法人税率は30.62%(東京に本社を置く大企業の場合)。所得税の高税率部分の所得を法人に移すことで節税効果が得られます。
たとえば、役員報酬は法人では経費に計上することができ、受け取った役員は給与所得となり、給与所得控除というみなし経費を差し引いて税金を計算することができます。残念ながら、院長や医療従事者が役員になり、役員報酬を受け取ると税務上問題が発生する可能性がありますが、医療従事者でない方であれば、役員報酬を支払うことができます。そのため医療従事者の配偶者や関係者がMS法人の役員に就任するのもひとつの方法となるでしょう。
また法人には、個人では経費化できなかったものを経費として計上することができます。たとえば、一定の生命保険料の経費化などもそのひとつです。「長期平準定期保険」と呼ばれますが、比較的長期の掛け捨て保険です。
中途解約することによって解約返戻金を得られ、この金額は収益に計上しなければなりませんが、役員退任時には役員退職金を支給できるため、経費をぶつけることで、法人税を軽減することができます。

MS法人のデメリット

メリットがある一方で、MS法人設立にはデメリットもあります。まず考えられるのは、クリニックの患者さんが減少し、利益が減ってしまった場合です。住民税込みの所得税率は所得695万円を下回った場合、所得税率は20%以下となり、住民税率10%を加えても実効税率を下回るため、逆に増税になってしまいます。
このほか、事務コストの増加が想定されます。単純にクリニックと法人の事務作業が必要になり、決算も両方で必要です。法人では、クリニックに対して請求作業が必要になり、クリニックでは法人に対して支払作業が発生します。
また、人の問題として、従業員間で壁ができてしまうことも考えられます。医療従事者はクリニック所属、それ以外はMS法人所属になるケースが一般的ですが、双方の待遇を公平に保つことに注力する必要があります。間違っても、医療従事者は上でそれ以外は下といった、ヒエラルキーが生まれないよう注意しましょう。

まとめ

MS法人の設立に関しては、ご自身のクリニックにとってのメリット・デメリットを比較検討しなければなりません。また、MS法人の活用を単なる節税策とみるのではなく、営利事業を分離することにより、「クリニックを医療行為に特化するための手段」と捉え活用していくことが重要です。
MS法人設立は、「手間を増やすだけで、合理性がない」「単なる節税策」と捉えられる場合もあります。しかし、その本質の意味を主張することができれば、場当たり的な節税策ではないと認められるでしょう。

【参考】
No.2260 所得税の税率|国税庁
竹中 啓倫

筆者情報

竹中 啓倫(たけなか ひろみち)

税理士・米国税理士・認定心理士
上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。

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