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【数値で見る経営課題②】診療圏分析「定量調査」を行いクリニックの現状を把握

前回ご紹介した「レセコン分析を基にご自身のクリニックを診断」では、自院の「強み・弱み」を解明していただきました。今回はこれに引き続き、さまざまな統計資料を利用してクリニックのポテンシャルを機械的に測る、診療圏分析「定量調査」についてご紹介します。

診療圏分析の種類について

クリニックの経営に用いられる診療圏分析は、「定量調査」と「定性調査」に分類することができます。さまざまな統計データから機械的に算出する調査方法を「定量調査」といい、競合のクリニックや周囲の状況について、現地に足を運んで詳しくみる調査を「定性調査」といいます。

定量調査では、どれだけの患者さんが来院して、どれだけの医業収益を上げることができるかを、理論的に導き出します。いってみれば、クリニックの持つポテンシャル、潜在的な要因を探っていく調査です。一方、定性調査は、定量調査と実績とのギャップを埋める要因分析で、後天的な要因を確認していきます。

今回の記事では「定量調査」、次回の記事では「定性調査」について詳しく解説していきます。前回の記事と合わせて、クリニックの経営に役立てていただければと思います。

1.商圏の設定

定量調査は、以下の手順で進められます。
①商圏の設定
②商圏のポテンシャル(人口)の把握
③競合医療機関の影響力測定
④想定診療収入の算出

まずはご自身のクリニックの「商圏」を知ることが重要です。商圏とは、ご自身のクリニックに患者さんが来院される範囲をいいます。来院時間が短ければ、患者さんが来院する可能性も自然と高まるでしょう。

商圏は、一般的に「同心円の距離で囲まれる場所」で半径1km前後といわれています。地図上に、半径1kmの「同心円の距離で囲まれる場所」を記入してみてください。この範囲においては、ご自身のクリニックがアドバンテージを持っていることになります。

外的要因によっては、違った診療圏を設定する必要があります。たとえば、幹線道路が走っている場合や、沿線次第では診療圏が伸び、同心円が歪む結果となります。

また、診療圏内に河川が横たわっており、橋を経由しなければならなかったりすると、到達までの時間が伸びたり、河川が心理的圧力となり、診療圏を歪める結果となります。

一方、駅近の都市部では、来院方法が徒歩になることも多いため、駅からの導線を考えて診療圏を設定する必要があります。

2.商圏のポテンシャル(人口)の把握

次に、商圏の人口調査を行っていきましょう。クリニック所在の市区町村のホームページに地区別の人口が公開されている場合がありますので、それを利用することをおすすめします。仮に公開されていない場合でも、市区町村はデータを持っていますので問い合わせてみてください。

それぞれの地区の面積と、先ほどの同心円がどれだけ重なっているかに注目してみましょう。ここから大まかな割合を出し、全体の人口に掛け合わせて対象人口を算定します。この作業を自らのクリニックの診療圏が及ぶすべての地区で行い、すべての対象人口を合計すると、ご自身のクリニックの診療圏の人口を算出できます。

3.競合医療機関の影響力測定

次に、競合医療機関の影響力を測定します。まずは、競合医療機関をピックアップすることから始めてみましょう。

本来は、競合医療機関の詳細を調べ上げ、競合医療機関の規模や知名度など特殊事情があれば比率に傾斜をつけるべきですが、今回は、すべての医療機関の影響力は、同程度であると仮定します。

まずはピックアップした競合医療機関の所在地を地図上に示してください。ご自身のクリニックの商圏設定と同様に競合医療機関ごとに同心円を描き、自身のクリニックと交わる箇所については、競合医療機関と1対1で患者を分け合うと仮定してください。

等分に分け合う形になりますので、同心円が重なった部分の人口は、2分の1で分け合います。もし競合医療機関との重複が2医療機関であれば、3分の1で分け合う形で算出してみてください。

4.想定診療収入の算出

最後に、想定診療収入を算出してみましょう。

ここまでの作業で、ご自身のクリニックの商圏のうち、競合医療機関に影響を受けない人口数が算出されましたので、統計データの受療率を掛け合わせ、想定患者数を算出します。

平成29年(2017)患者調査の概況によると、全国の受療率(人口 10 万対)は、「入院」1,036、「外来」5,675 とされています。

参考:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/index.html

ご自身のクリニックの状況に応じて、適当なデータを使用していただければ、予想される来院患者数が算出できますので、これに想定されるレセプトの平均単価を掛け合わせます。こうすると、想定診療収入を弾くことができます。

まとめ

ご自身のクリニックでの想定診療収入を算出していただくと、多くの場合、実態とかけ離れた結果が算出されることと思います。前提条件が異なる部分が大きな原因ですので、どれくらいギャップがあるのかをしっかり確認したうえで、次回ご紹介する、診療圏分析の「定性調査」でこのギャップに臨んでみてください。

関連記事:数値で見る経営課題! 診療圏分析前に行ないたい「レセコン分析」
https://www.phchd.com/jp/medicom/column02/01/column58
竹中 啓倫

筆者情報

竹中 啓倫

税理士・米国税理士・認定心理士
上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。

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