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温故知新!「血圧計」が多様化するきっかけ

 古代エジプトのパピルス文書や中国最古の医学書といわれる『黄帝内経』には、脈拍を認識させる記述が残っているものの、17世紀まで世の中に「血圧」の概念は存在しなかった。それどころか長い間、血液は肝臓で作られているという通説がまかりとおり、心臓の機能すらわかっていなかった。
 1628年になってようやく、イギリス人の医師ウィリアム・ハーヴェイが『心臓と血液の運動』を発表し、人間の血液が心臓から送り出されて再び心臓に戻るということを解明した。しかし、この血液循環説をもってしても、「血圧」の概念に気づく者はいなかった。
 それから約100年後の1733年、イギリス人の牧師ステファン・ヘールズが、馬の頚動脈に3メートルのガラス管を挿入すると約2.5メートルの高さまで血液が上昇し、心臓の拍動にあわせて上下運動することを発見。血液は、心臓の収縮運動によって送り出されている事実を突き止め、ついに「血圧」の概念に思い至る。さらに、この馬の血圧が呼吸や体動などの外因によって変化することも明らかにした。しかし、当時の医学界における「血圧」の重要度が低かったためか、測定装置の開発は遅々として進まなかった。

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 1828年。ようやくフランス人の理学博士ジャン・ポアズイユによって、長いガラス管に代わって研究室内でおこなえる水銀U字管を使用した動脈内圧の測定法が考案される。この歴史的実験の際に使った血圧の単位「mmHg」が、名残として今日まで続いている。
 その後、改良を重ねられた血圧計は、1896年にイタリア人の医師リヴァ・ロッチによって、現在の血圧計とほぼ同じ原理の上腕カフ(加圧帯)を用いた水銀圧力計による測定法にたどり着いた。また、1905年にはロシア人の軍医ニコライ・コロトコフが、ロッチの水銀血圧計と聴診器を併用して、最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)を測定する方法を考案した。動脈をカフで締め付けたときに発生する「コロトコフ音」で血圧を測定するこの方法は、現在でもWHO(世界保健機関)が認定する標準血圧測定法として、世界中の医院で採用されているほどの大発見となった。

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 聴診による「コロトコフ法」が医院に浸透していく一方で、水銀の臨床使用への懸念や、ヘールズが18世紀から指摘していた外因による誤差など、潜在する問題がささやかれるようになった。そこで、1980年代にアメリカで導入されたのが、カフで止めた血液が流れ始めるときの動脈壁の振動をセンサーでキャッチして血圧を測定するオシロメトリック法である。その原理自体は19世紀からあったものの、圧力センサーの技術不足のため開発が頓挫していた。それが技術革新によって時を経て現代によみがえったことで、従来の腕だけでなく手首や指でも測定できるタイプを登場させるなど、血圧計が多様化するきっかけとなった。

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