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  5. クリニック開業の適齢期は?開業時の平均年齢や定年について

クリニック開業 医師 2021.07.21 公開

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クリニック開業の適齢期は?開業時の平均年齢や定年について

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討

目 次

1. クリニック開業の適齢期

開業医に求められる役割として、①医師、②管理者、③経営者の3つがあります。
開業するクリニックの標榜科によっても異なりますが、①の開業後の医師に求められるのは、地域の患者さんの健康不安に幅広く応えるプライマリーケアの役割です。専門医としての技能・経験に加えて、幅広い臨床経験を積んでおくことが望ましいです。
②の管理者は、診療所のトップとして看護師や医療事務職など専門性を持つ職員をまとめ、チームとして適切な地域医療を提供していかなければなりません。組織の中で部下を持つ管理職としての経験も必要でしょう。
③の経営者としては、長期の事業計画を策定し事業として成功させるビジョンと戦略を持つ必要があります。開業時に内装工事や医療機器などの大きな設備投資することを考えると、20年くらいの事業計画になります。
以上、開業に必要な経験能力を身につけ、ある程度の自己資金の準備をし、20年以上の事業を始めることを総合的に考えると、開業の適齢期は40代から50代前半ではないでしょうか。

2. クリニック開業の平均年齢

実際にクリニックを新規開業した勤務医の年齢について、統計資料があります。2009年日本医師会が、全国の医療法人および個人医院の診療所・病院を対象に開業時期および開業動機に関するアンケート調査を行いました。

このアンケートは「病院勤務医が厳しい勤務環境を理由として開業を志向している」という仮説のもと、病院勤務医の開業理由として過重労働が主な理由なのか、ほかに高い志があるのか、また、実際に開業医が病院勤務医に比べて時間的、精神的、経済的に恵まれているのかなどの実態把握を目的として実施されました。

回答者全体の新規開業年齢の平均値は41.3歳です。開業5年以内の回答者では44.9歳、開業30年超では37.5歳と、開業の平均年齢は年々高くなっています。30年前は30代での開業が主流でしたが、最近では40代以降の開業が増加しています。ある程度、病院などの勤務先でキャリアを積んでから開業するケースが増えているようです。

新規開業の場合の開業後年数別開業年齢

引用: 社団法人日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」

3. クリニックを継ぐ場合の適齢期

クリニックを引き継ぐ場合の適齢期について、日本医師会総合政策研究機構が2019年に発表したワーキングペーパー「医業承継の現状と課題」に興味深いアンケート結果があります。
診療所・病院の後継者として「子どもを考えている」と回答した割合は、診療所経営者の52.9%、病院経営者の34.8%という結果です。病院・診療所の経営者の回答なので、実際に子どもである医師が親の病院を受け継ぐ割合はもっと低いとみて間違いありません。子どもが承継するのはおおよそ3院に1院程度で、それ以外は廃院するか第三者への承継となります。
もう一つの資料は「診療所に従事する医師数と平均年齢」です。2018年時点で診療所に従事する医師の平均年齢は60歳を超えています。60歳以上の医師が全体のほぼ半数を占め、70歳超の医師も20%です。診療所の事業承継は緊急課題です。
実子が引き継ぐか第三者が引き継ぐにしろ、クリニックの引き継ぎには、一定期間、譲渡側と承継者が一緒に勤務する時間が必要です。遅くとも70代前半には承継し、その後20年ほど事業を続けることを考えると、承継する子や第三者の譲受人は40代が望ましいといえます。

年齢階級別にみた診療所に従事する医師数及び平均年齢の年次推移

引用: 厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(2018年)」図3 診療所に従事する医師数および平均年齢
参照: 日本医師会総合政策研究機構「日医総研ワーキングペーパー No.422 2019年1月8日」

4. 開業の動機は様々

前述の日本医師会定例記者発表のアンケート調査によると、開業の動機として「①理想の医療の追求」「②将来に限界を感じた」「③経営も含めたやり甲斐」がベスト3に上げられています。

新規開業の場合の開業動機

引用: 社団法人日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」

(1)理想の追求

開業動機のトップは、理想の医療の追求です。勤務医としての将来に限界を感じるとともに、勤務医では得られない仕事へのやりがいを求めて、医師としてのキャリアアップをめざしている姿が浮かびます。
理想を求めて開業を目指す背景には、当直や勤務の拘束時間が多いことや毎日の診療に追われて医師としての医療水準の維持が難しいことなどを負担に感じる勤務医の業務実態の課題があります。
後述のグラフにもあるように、5年以内の開業医の6割は、このまま勤務医を続けるより開業して理想の医療を追求したいと開業しています。

負担な業務
主な開業動機についての開業後年数別の回答

引用: 社団法人日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」

(2)労働環境が悪い

その次に上げられた開業動機は、④精神的ストレスや⑤過重労働に疲弊など、労働環境に関するものです。
同じアンケートの開業後年数別のまとめによると、開業10年以内の開業医の3割は、過重労働や精神的なストレスに疲弊したことを動機としています。あらためて勤務医の過重労働が負担になっている実態がうかがえます。
具体的な理由としては、当直に加えて長時間勤務の時間的拘束、診療以外の会議や資料作成が負担となっているようです。

(3)収入が少ない

日経メディカルの調査によると、勤務医の平均年収は男性1,220万円程度、女性1,016万円程度で、医師全体としてはおおむね高額な給与を受け取っており、6割以上は給与面では満足と応えています。ただし、35歳未満の医師に限っては、主たる勤務先からの収入779万円でアルバイト収入を加えても940万円(2013年の調査)となっています。
勤務医の収入に関する満足度調査では、少し古い資料になりますが、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が「勤務医の就労実態と意識に関する調査(2012年9月)」を公開しています。1000万円未満では5割以上の人が不満・少し不満としています。厳しい勤務でアルバイトもままならない若手勤務医の不満が下記のアンケート結果に表れているようです。

給与・賃金の額に対する満足度

参照: 日経メディカル「医師の生涯年収は何億円?」
参照: 独立行政行政法人労働政策研究・研修機構 「勤務医の就労実態と意識に関する調査」

5. 開業医の定年について

イメージ

勤務医であれば、勤務先の定年退職の規定に従い定年を迎えます。医師免許そのものには有効期限はありませんが、病院では60歳定年後に再雇用し、65歳定年としているところが多いようです。
開業医ならば定年の心配なく、生涯現役として働き続けることができます。
ただし、シニア医師としての勤務は、内科と外科では事情が異なります。手先の器用さや手術の腕で評判の外科医や歯科医の場合は、高齢化により視力や手指の動作に制限が生じて、最大限の能力を発揮できなくなる場合もあります。また、病院の勤務態勢の厳しさから体調不安を抱える医師も少なくありません。

将来的に開業を考えているのなら、勤務医を続けるにしても体力的に長時間立ち続けて緊張を強いられる手術主体の外科医から、開業医としてのニーズが多い整形外科やリハビリ、訪問診療などの経験を増やすことを検討してもいいかもしれません。

6.開業医の平均年収

開業医の平均年収については、あまり正確な資料はありません。
厚生労働省の2019年度医療経済実態調査によると、個人の一般診療所院長の収入(売上-経費の損益差額)は約2,500万円です。医療法人院長の給料は約2,700万円です。
それに対し、同調査の医師の平均給料と令和2年賃金構造基本統計調査の医師給与の統計から推定すると、勤務医の年間給与は1,000万円から1,500万円になります。
勤務医に比べて、開業後のクリニック院長の収入が多く見えますが、実はすべて手取りになるわけではなく、そこから所得税や社会保険を払い、開業時の借入金の返済をしなければなりません。手取りでは勤務医と変わらないかもしれません。
上記調査の医療法人院長には雇われ院長も含まれていますので、院長の給料=開業医の年収ではありません。個人医院と条件は異なりますが、開業医の年収としては、ざっくり2,500万円から2,700万円を目安とするとよいでしょう。

参照: 厚生労働省「第22回医療経済実態調査(2019年)」
参照: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査/令和2年賃金構造基本統計調査」

7. 自己資金なしでも開業は可能

クリニックの開業は自己資金なしでできるのでしょうか?
「できる」というコンサルタントもいますが、かなり危険と言わざるを得ません。実際、在宅診療や心療内科など設備投資が少ない診療科であれば開業コストはかなり低く抑えられるので可能かもしれません。
しかし、一般的には賃貸物件であっても4,000万円から1億円の開業資金が必要です。金融機関から融資を受ける場合は、融資申込の際に事業計画を提出し、審査を経て融資の可否が判断されます。その判断基準は、貸したお金を返済できるかどうかです。経営者として中長期の事業計画をたてているならば、自己資金ゼロでの開業はあり得ません。
オススメは、開業しようと思った時点から月10万円でもコツコツ毎月貯めながら、地元金融機関に1、2年後の開業に向けて融資相談することです。残高が100万、200万円でも着実に貯める人なら返済できる人と信用を得られ、自己資金が少なくても融資を受けられる可能性があります。
また、分院展開している医療法人や調剤薬局などでは、院長勤務の医師を募集しています。そこで院長として働きながら医院経営を学び、開業資金を貯め勤務した医院を譲り受ける方法もあります。

筆者プロフィール

株式会社アイリスプランナー
中小企業診断士/医業経営コンサルタント
奥野 美代子(おくの みよこ)

https://www.irispl.jp/

外資系ブランド27年の実績をもとにした「魅力発信ブランディング」コーチングで院長のビジョン実現とスタッフ育成を行い、採用・集患に悩むことなく地域から選ばれる開業医の魅力発信・ブランディングを支援します。

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