コラム:診療科別のクリニック開業ポイント
コラム クリニック開業ポイント

整形外科で失敗しない開業ポイント・年収や開業資金も解説

  • 診療科別のクリニック開業ポイント

1. 序文

医療機関の開業と一口に言っても、診療科目によって必要な投資予算や収益モデルも変わってきます。本稿では「整形外科」について、開業資金・年収・開業のポイント・事例の記載をします。

2. 整形外科の開業資金・平均年収に関して

(1)開業資金に関して

以下は、整形外科クリニックの投資予算のサンプルです。
整形外科 開業投資予算 サンプル

開業投資予算サンプル (C)株式会社G.C FACTORY調べ ※ 医師会入会費に関しては地域差があるのと、入らない先生もいるので外しています。 ※各医療機器の価格はあくまでも参考価格となり、実際は購入のタイミングやメーカーの選定によって変動します。

前提条件を「テナント開業」「60坪(坪単価12,000円)」「医師1名」「手術なし」「運動器リハビリ実施」と仮置きして作成をしています。
ご覧の通り、整形外科クリニックは治療・検査・リハビリに多くの医療機器の購入が必要なため一般的に開業資金が多くかかる診療科目となります。(上記の表では約8,488万円となっています)また、前提としている「運動器リハビリ実施」の場合、理学療法士を採用して運動器リハビリを実施することとなり、そのスペース(診療所で運動器リハビリの施設基準を算定する場合は45㎡)も必要となります。この前提では60坪(約200㎡)としていますが、70~80坪にする方も多く、その点でテナントの家賃や礼金などの費用や内装工事にかかる費用もほかの診療科目より高くなる傾向にあります。ちなみに当然ですが、例えば診察と検査のみで回す診療モデルの場合は異なるものの、診療上の必要性や収益の面から近年開業する多くの先生がリハビリテーションを実施しています。

(2)平均年収に関して

次に平均年収に関してです。まず、統計データでは、整形外科の平均年収は約2,988万円(※1)となっています。もちろんこちらは統計値に過ぎないですが、傾向としてほかの診療科目に比べて高くなっています。(同じ統計で全体平均が約2,374万円)
考えられる要因として、整形外科の場合は、医師以外にもリハビリテーションのスタッフが医師の指示でリハビリテーションを実施することでも診療報酬を算定することができるため(2020年7月時点で、運動器リハビリⅠの場合は185点、運動器リハビリⅡの場合は170点、運動器リハビリⅢの場合は85点が算定できる)来院の頻度や一度に診ることができる患者さんの数が多くなることが大きいでしょう。

3. 整形外科の開業ポイント

次に、各開業工程におけるポイントを記載します。

(1)立地の選定

  • 車での乗り入れがしやすい入り口が必要です。
  • 1階か、車いすの方でも楽に出入りできるエレベーターがあることが必要です。
  • 余裕をもった駐車場が必要です。難しい場合でも駅やバス停から近くないと厳しいでしょう。
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(2)内装

  • 車いすや松葉杖の方のため、全体的に広めである必要があります。
  • いすは高さが異なる(少し高めの腰掛など)の用意があると良いです。
  • リハビリ室は基準では45㎡(運動器リハビリの施設基準を出すために ※2)必要であり、また実際の運用ではそれでは狭いと考えてもっと広く確保している先生が多いです。

(3)採用

  • 理学療法士・作業療法士・放射線技師といった専門職の採用が必要になります。
  • これらの職種は給与に地域差が出るので(通常の地域差に加えて、供給が学校の数によっても変わってくるため)最初に周辺の求人の価格を確認する必要があります。
  • 通常の求人媒体だけではなく、各専門職が見るWEBサイトにも求人票を掲載することがあります。

(4)マーケティング

  • 高齢者から若者まで幅広い年代へのマーケティングが必要なため、アナログの広告(看板やチラシなど)やWEB広告(リスティング広告や各種ポータルサイトなど)の双方が有効です。
  • 介護保険を使った通所リハビリテーションや介護リハビリテーションを提供する場合には、近隣のケアマネージャーへの認知活動や連携活動も重要です。

(5)その他

  • リハビリテーションを自費にて実施する場合は、保険診療との混合診療に注意が必要です。
  • 介護保険のリハビリに注力をされる先生も増えており、高齢化の流れから利用者も増えてきています。
  • 整形外科は職種が多いことからスタッフ数が多くなる傾向にあります。常時10名を超えた際の就業規則の届け出を忘れてしまうケースがあるので注意が必要です。

4. 実際にうまくいった医師の成功事例

以下に、特徴的な方法によって整形外科として成功されている先生の事例を記載します。

(1)運動器リハビリを売りにしつつ、自費の「からだ年齢健診」も実施

  • 医療ビルにて開業。医療ビルの強みとして同じ建物に薬局があること、駐車場がたくさんあることを有効活用して積極的な集患を実施
  • 物理療法は最低限として(ウォーターベッドなどはリハビリの合間の時間に無償で利用をしてもらうなど)運動療法を中心に実施
  • 運動器リハビリの予約枠も作り、待ち時間が少なくリハビリができるように工夫
  • 運動器リハビリを提供する中で、希望者には筋肉年齢(体成分分析装置で計測)、血管年齢・ホルモン年齢・骨年齢・姿勢などを自費で計測して、理学療法士がトレーニング指導を実施し、収益に繋げている
  • 姿勢の測定や歩き方の補正なども実施して若い人に対しても遡及している

(2)賃料や人件費が高い都心での整形外科開業を成功した事例

  • 東京23区内で開業
  • 固定費を有効に活用するために、土日も終日診療を実施。(好立地のため、手軽に非常勤の医師の採用が可能だった)
  • 駅から少し離れてしまうため、送迎バスを用意(車のリース代とドライバーの人件費を考えても、患者さんが増える方が損益的に有効と判断)
  • ケアマネージャーとの連携を取り、通所リハビリ・訪問リハビリを実施。その際に送迎バスのドライバーが運転手を務める(時間を被らないよう設定)

5.まとめ

整形外科は広いテナントや豊富な機器が必要なことから、投資額も多くなり、開業に二の足を踏んでしまう先生も少なくありません。一方で整形外科の開業は医療保険・介護保険・自費と工夫や強みを出すバリエーションが多く、スタッフ種類も多岐に渡ります。自院の戦略や特徴を出すことができるという点で非常に面白いと感じる先生も多い診療科目です。

筆者プロフィール

株式会社G.C FACTORY

https://ma.gcf.co.jp/

代表取締役 金子 隆一

コンサルタントとして、医療機関のM&A、開業、運営支援において累計100件以上の実績を有する。クライアントの問題解決に励むと同時に、都内の大規模在宅支援診療所のバックオフィス業務の設計及び実行責任者を兼任している。