3. 泌尿器科の開業ポイント
厚生労働省の平成30年「医療施設に従事する医師数」によると、診療所に従事する泌尿器科の医師数は約1,991人です。
他の診療科だと内科38,883人、眼科8,442人、整形外科7,903人、耳鼻咽喉科5,351人となっており、他の診療科目に比べて非常に少ない人数であることがわかります。また、泌尿器科の診療だけを専門にしている診療所の数はさらに少ないので、競合相手が少ないのも特徴です。
厚生労働省の医療施設調査によると、平成26年は3,726件、平成29年は3,741件で若干の増加傾向にあります。 厚生労働省の患者調査の概況によると、腎尿路生殖器系の疾患の受診率は入院外来ともに35歳~64歳から増え始め65歳を過ぎると急増傾向になります。 現在は高齢化が進んでいるため、泌尿器科は今後も重要な役割を担っていく診療科と言えるでしょう。
しかしながら、泌尿器科は一般的に文字通り「尿」というイメージが強く、受診するのが「恥ずかしい」と思われがちで毎日行われる排尿に関連する科でありながら一度も受診したことがない人も多いのが泌尿器科です。その分悩んでいる人の数も決して少なくありません。また、男性より女性にとって他の診療科と比べて受診のハードルは高くなりますので、男性と女性の待合室や動線を分けるなどの工夫で受診のハードルを下げる工夫をして集患につなげましょう。
泌尿器科を受診される患者さんの多くは高齢者で尿失禁や前立腺肥大症などの疾患で来院される方が多くなっています。高齢化が進む地域では訪問診療のニーズもあるため、訪問診療の取り組みを検討しましょう。
泌尿器科の収益構造は他の診療科と同じく下記の公式で成り立ちたちます。
「診療収入 = 1日当たりの患者数 × 1人1日当たりの診療単価 × 通院回数」
泌尿器科の1人1日当たりの診療単価は院外処方の診療所で約7,500円前後※1です。
他の診療科より診療単価は高い傾向にあります。また、通院日数は外来診療中心の泌尿器科では1.5日程度で他の診療科より短い日数です。
開業の最終意思決定をする際に考えるべきことは「毎月の人件費、家賃、リース料などの固定費」「借入金の元本返済」「院長の生活費」を賄うために、1日当たり最低何人患者数をみないといけないか、ということです。
一般的に、収支分岐点は1日の患者数と言われます。
泌尿器科の収支分岐点の1日当たりの患者数は35-40人/日が1つの目安としています。収支分岐点である1日の患者数が50人を超えるようであれば慎重な検討が必要となります。本当にその場所で1日50人来院があるのかについて、信頼できる相談相手と相談してから最終的な判断をしましょう。