一般(患者さん向け)

韓国の医療情報の電子化

日本のお隣の国、韓国はデジタル先進国として高い評価を受けている国です。今回のコラムでは、デジタル化の現状と、医療現場での電子データの活用についてご紹介します。

韓国のデジタル化の現状と課題

韓国はデジタル化先進国として国際的にも高い評価を獲得しており、OECDが2020年に41か国を対象におこなった調査でも、韓国の「デジタル政府指数」は第1位となっています。
韓国内での電子政府サービスの広がりは、同国の行政安全部が毎年公表している「電子政府サービスの利用実態調査」(2021年)の結果に明確に現れています。調査対象の満16歳から74歳の一般市民のうち、「行政機関や公共機関が提供する電子政府サービスを知っている」と回答したのは全体の96.5%であり、非常に高い水準となりました。実際に直近1年以内に電子政府サービスを利用したことがある人も対象者全体のうち89.5%にのぼっており、韓国において電子政府サービスは重要なインフラであるといえます。

韓国は2001年の「電子政府法」制定を契機とし、電子政府サービスの活性化・効率化に取り組んできました。2021年には「第2次電子政府基本計画」を策定し、2025年までに主要な公共サービスのデジタル転換率を80%まで高めること、行政・公共機関のクラウド転換率を100%とすることを目標として掲げています。
現在では、政府ポータルの「政府24」を利用すれば、転出・転入、妊娠、出産などの手続きがワンストップで完了します。また、スマートフォンから発行された電子証明書は、行政・公共機関だけでなく民間銀行などの850を越える機関でも利用でき、国民にとって利便性の高いシステムが広がっています。

しかし一方では、個人情報の漏出やハッキングによる事件・事故も発生しています。業務上の過失で情報が漏洩する事例が多く、欧州や米国と比べて罰則による抑止力が弱いこと、個人情報漏出を監視する公共機関の体制が不十分なことが専門家より指摘されています。個人情報を取り扱う行政担当者のモラル向上や抑止力強化が課題といえるでしょう。

医療におけるデータ化

韓国での電子データの活用は、医療の現場でも進められています。韓国の主要大学病院は、2014年から院内にビーコンを設置し、アプリも提供しています。アプリで診察予約をし、当日病院に向かうとビーコンとアプリが反応、道案内と診療案内をしてくれるのです。診療に必要な基本情報は初回の確認だけで良く、受付のたびに保険証を提示したり、個人情報を書いたりする手間も省けるようになりました。診療が終わるとアプリには診療費の明細や処方箋が表示されます。病院によっては診療費をアプリ経由でクレジットカード払いできるため、診療後に会計を待つ必要もありません。

韓国では、電子カルテや検査記録、処方箋管理などあらゆる記録がデジタル化されています。医療関係者がタブレット端末でそれらを閲覧・記録するだけでなく、アプリ配信元病院での過去の診療・投薬記録を患者さんがいつでも確認できるのです。医療におけるデータ化は、医療現場と患者さんの間をつなぐことにも貢献しています。

今回は、お隣の国韓国でのデジタル化の現状と、医療現場での電子データの活用についてご紹介しました。日本でも2023年1月より電子処方箋が導入されており、医療現場での電子データの活用はますます広がっていくと考えられます。医療機関受診時の利便性向上など、患者さんにとっても電子データ活用のメリットは大きいでしょう。

※今後の電子処方箋の厚生労働省による仕様の進捗により、内容が変わる場合はございます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html
電子処方箋ページ(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html)の内容をもとに、ウィーメックス株式会社で独自に解釈、編集したものです。