PHCのビジネススタイル 探究心は止まらない 診断薬事業部 第3技術部 第1システム課 川内 由香(2006年入社) PHCのビジネススタイル 探究心は止まらない 診断薬事業部 第3技術部 第1システム課 川内 由香(2006年入社)

PHCのビジネススタイル探究心は止まらない

診断薬事業部 第3技術部
第1システム課

川内 由香

(2006年入社)

PHCが追求してきた“早期診断”技術への挑戦

糖尿病をはじめとする生活習慣病患者が急増する時代に、PHCは病院や患者さんが簡単に安心して使える診断機器の開発に力を入れてきた。その皮切りとなったのが1991年に開発された手のひらサイズの世界初の血糖値センサ。以来、病院や患者さんが簡単に使いこなせる各種診断機器の実用化を次々と成功させてきた。従来は小さな病院やクリニックで血液検査する際は外部の検査機関を頼ることが多く、結果が出るまで1週間ほど要した。しかし、PHCが開発したPOC生化学分析装置は、その場でわずか6分、生活習慣病の診断項目である血液中のHbA1c、血中脂質を測定することができる。生化学を専門とする川内由香は入社以来、POC生化学分析装置の測定ディスクに使われる試薬の改良に携わってきた。
「例えば、血中脂質なら測定ディスクに水滴1滴分(約19μL)の血液を垂らすと、ディスク内の迷路のような流路を血液がめぐり試薬に触れます。すると、コレステロールの量に応じて試薬の色が代わり、中性脂肪、善玉コレステロールなどの各種コレステロール値が測定されます」

酵素由来の試薬はとてもデリケートだ。「タンパク質が主体なので、お肉やお魚と同じで室温で劣化してしまうのです。ですから、病院では専用のフリーザーに保管し、使用直前に常温に戻す手間が必要でした。医療現場ではもっと扱いやすくなればという声があったのです」
そこで川内らディスク開発チームが掲げたのは、ディスクの常温保存を実現するという新たなるミッションだった。

PHCが追求してきた“早期診断”技術への挑戦

失敗を積み重ねた先に、新たな技術の光を見いだす

「常温保存を実現するにあたって最大のネックとなったのは“水分”でした。この問題を解決するには、酵素の活性を維持したまま試薬を完全に乾かすドライ化技術が必須だと考えました。ドライ化すれば、試薬のスペースも縮小されます。ディスクの常温保存化とコンパクト化でユーザービリティを高めるのが、私たちの目指すゴールになりました」
だが、試薬をドライ化させつつも精緻な精度を維持するのは容易ではなかった。
「パッとひらめいて発明できたらカッコいいんですが、現実はトライ・アンド・エラーの連続です。そのつどチームで話し合っては、次の手を模索する地道な努力の積み重ねでした」
研究開発のプロセスとは、いわば失敗の連続だ。思いつくかぎりのあらゆる方法を試して検証を繰り返す。しかし、その失敗も大切なノウハウの一部となっていく。
「私が入社する前から、POC生化学分析装置の改良はさまざまなプロジェクトが走っていました。時には先輩方が残した資料を読みあさり、次の実験のヒントを得ることもありました」
開発の道のりは果てしなく、いつゴールにたどり着くかは誰にもわからない。だからこそ、計画性が大切だと川内は説く。

「小さなプロセスでも、チームで話し合い、『これは3カ月以内には実現しよう』と計画を立てて取り組むこと。手探りでもゴールを決めることで、今やるべきことが見えてきます。チーム内のコミュニケーションも重要です。電子設計、流路設計などさまざまな分野の開発者が集まっているので、最後は1枚のディスクとして技術が集約できるように、方向性や考え方の足並みを揃えることが大切なのです」

数えきれないほどのPDCA(plan-do-check-action)サイクルを回しつづけた結果、川内らのチームはとうとう試薬のドライ化に成功し、常温保存できるHbA1c、血中脂質の測定ディスクは完成を見た。

失敗を積み重ねた先に、新たな技術の光を見いだす 失敗を積み重ねた先に、新たな技術の光を見いだす

そして、量産化へ。技術革新への探究心は止まらない

完成した測定ディスクは、同じ松山地区にある生産工場で量産化される。
「研究開発って完成したら終わりじゃないんです。精緻なシステムだけに量産化の波に乗るまで色々なトラブルや問題が生じますから、量産引き継ぎも大切な仕事です。幸い、研究所近くに工場があるので、問題が生じればすぐに駆けつけて解決に向けて動くことができます」
折しも、量産化がほぼ完了した段階で川内は第一子の産休に入っていた。
「職場復帰直後に大きな生産トラブルがあって、いきなり仕事の世界に引き戻されました。でも、PHCは子育て中の女性研究者が多く、子供同士が同じ園に通っていたりします。まわりの人の協力でなんとか乗り切れました」

開発チームと工場の必死の尽力があって、現在、ディスクは量産化の波に乗り、安定した高品質、高精度が実現している。川内らが開発した測定ディスクは販売元である世界的なヘルスケア企業を経由して2012年以来、世界40カ国以上で販売されている。さらに翌年に施行された改正薬事法が普及の後押しとなった。
「POC生化学分析装置が一部の薬局やコンビニで設置可能になって、患者さんが店頭でHbA1c、血中脂質を測定できるようになりました。2週間ごとに訪れて測定する糖尿病の患者さんもいらっしゃるそうで、健康管理や病変の早期発見に貢献できる仕事ができたと開発者として喜びを噛みしめています」

川内が次なる目標に掲げるのは、ディスク生産のコスト削減技術だ。血液検査がより安価にできるようになれば、検査のハードルも下がり、現代の医療が目指す早期発見・早期治療の実現に着実につながる。
「技術の進歩に終わりはありません。医療の現場から寄せられる声や要望に耳をすまし、私は技術の力で応えていきたい。現場にいる方々の声が、開発者としての探究心を刺激する源泉となっているのです」

そして、量産化へ。技術革新への探究心は止まらない