学生時代の学んだことは?
物心ついたときから花や動物に心惹かれ、その営みや不思議について考えるのが好きでした。人間とはまったく異なる生き物の機能や生態を解明したいと農学部に進みました。学部では微生物、植物、動物を含めた幅広い分野のバイオテクノロジーを学び、院では植物の機能に着目して植物のDNAを取り出し、遺伝子組み替え技術で機能を高める研究をしていました。
PHCを選んだ理由は?
学生時代は生物がもつ特有の機能を活用することで、医療や食糧問題など世の中の諸問題や困っている人を助けることができればと考えていました。ヘルスケアを主力とするPHCならば、私も人のお役に立てる研究ができるのではないかと考えたため、PHCを選びました。今従事している仕事は学生時代の研究と直結しているわけではありませんが、研究の進め方や実験動作など基本的なことは学生時代に培ったことが生きています。また、バイオの力で人に役立つことを実現するという大きな目標は今も変わりがありません。就活中、PHCの採用担当者とそうした思いを含めてお話しできたことが入社の決め手となりました。
今、どんな研究をしていますか?
病気の早期発見に役立つ小型のバイオマーカー測定装置の開発研究に携わっています。バイオマーカーとは、体液中の物質から病気の存在や進行を診断する指標。糖尿病をはじめとする生活習慣病は、その言葉の通り、生活習慣の積み重ねから発症するものです。いわゆる予備軍と呼ばれる人や、すでになってしまった人の進行度合いをバイオマーカーで早期に感知できれば、発症や進行を食い止めることができるかもしれません。私たちの研究は、現代の医学が目指す予防医学の進歩に貢献できる可能性があります。
開発を進めるうえで難しいことは?
バイオマーカー検出は、現在の技術では大型の高感度な装置が必要です。それをより多くの人が広く活用できる形にするために、小型化・低コスト化を実現する。それが私たちの目指すゴールです。毎週1回、テーマの担当者とプロジェクトのリーダーが集まって検討会を開き、アドバイスをもらい、方針を決めることでプロジェクトを進めています。私も毎回報告させていただくのですが、ブレイクスルーできるようなアイデアを出せるまでには至っていないと感じます。ただ、この検討会が私の研究活動の起点になっていることは確かで、毎回、他分野研究者のものの見方や圧倒的な知識と経験に触発されています。また国内外の論文を調べたり、異なる視点からデータを読み返したりと、自分の研究をじっくり見直す機会になっています。
PHCはどのような会社だと思いますか?
ダイバーシティ(多様性)豊かな会社だと思います。例えば、松山地区のR&Dにはメカニック、ソフトウェア、化学など多岐にわたる専門性を持つ研究員たちがいます。また、ドイツのバイエルに源流を持つアセンシア ダイアベティスケア(ADC)がグループ入りしたことから海外の研究者も見かけるようになりました。女性研究者も結婚や子育てしながら、第一線で活躍しています。多様な分野から人が集まる松山地区は、新しいものを生み出すには最適の環境だと思います。
社名の由来であるPrecision(精緻)をどう実現していますか?
とことんまでやり抜くことでしょうか。まだ世の中にない技術を追求するR&Dでは、枠にとらわれないアイデアを生み出す突破力が求められます。そのブレイクスルーは一朝一夕でできるものではなく、日々の地道な積み重ねから培われるもの。そのために今日の仕事にとことん向き合い、最後までやり抜く積み重ねが大事だと考えています。