医療トラブルの未然防止に「故障モード」を考える
医療におけるトラブルは時として人命に関わることもあり、徹底的な防止策を講じることが必要です。製造業をはじめとする多くの産業では、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)と呼ばれる故障等のトラブルを未然に防ぐための手法が採用されています。今回は、医療におけるリスク管理の上でも参考になるこの手法の概要をご紹介します。
FMEAと故障モード
FMEAは「故障モード影響解析」とも呼ばれる、システムなどの故障要因を抽出する方法です。システムを、最小単位である部品などのレベルにブレイクダウンして、それぞれで不具合が生じた場合に大きな影響を及ぼす部品はどれかを特定します。FMEAの特徴は、〈故障〉と〈故障モード〉を分けて考える点にあります。例として、水道の不具合を考えてみましょう。「水が出ない」という事象が〈故障〉にあたります。では、部品単位でこのような故障につながる原因をリストアップしてみましょう。「水道管が詰まる」「蛇口が回らない」などが考えられますね。これが〈故障モード〉です。故障そのものは多種多様な事象として現れるため、網羅的に拾い上げ、一つずつ対策を講じていくことは非常に困難です。しかし、故障モードを洗い出し、故障を適切に分類することで、効率的なリスク管理を実現することができます。
リスクアセスメントの手順
このようにして故障モードをできる限り多くリストアップして、それぞれのリスクを評価していきます。故障モード一つひとつに対し、〈結果の重大性〉、〈発生頻度〉、〈発見のしにくさ〉の指標で評点をつけていきましょう。結果の重大性と発生頻度は5段階、発見のしにくさは3段階で採点し、それぞれ点数が低いほど好ましい評価とします。なお、各指標の評価基準はあらかじめ決めておき、常にその基準を使用します。それぞれの評点をかけ合わせ算出された総合点が高いものほど、重大なリスクとして優先的な対応が必要です。なお、採点方法・評価方法はここでご紹介したものの他にもさまざまなバリエーションがあり、対象となるリスクやプロセスなどの種類に適したものを使用します。
トラブル対策のポイント
洗い出したリスクの優先度が明確になったことで、どのリスクから対応していくか、計画を立てることができるようになります。どの程度の重大性のものまで対応するかはケースバイケースですが、まずは優先度の高い上位の3~5つの改善に取り組みましょう。対策を実施した後は、狙いどおりリスクの度合いが下がっているか確認することも大切です。FMEAのプロセスで故障モードを明確にすることで、対策の策定もスムーズに進めることができるでしょう。また重大性の特定により、真に取り組むべきリスクを把握でき、多忙なクリニックや薬局経営にあっても、スピーディかつ効果的にそれぞれの対策を講じることが可能です。
人々の健康に対する大きな責任を担うクリニックや薬局では、トラブルの未然防止はとりわけ重要な要素です。やみくもに対策を打つのではなく、緊急度の高いものから対処していくことで、適切にリスクをコントロールしましょう。FMEAのプロセスを経験することで、スタッフの安全意識を改めて喚起する効果も期待できます。日々の業務に潜むリスクを洗い出して、安心・安全を実現しましょう。
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