目次
医療DX令和ビジョン2030とは
「医療DX令和ビジョン2030」は、医療分野のデジタル化を進める政策です。総務省の「令和3年版情報通信白書」によると、医療・福祉分野のDX取り組み企業は約9%にとどまり、他分野よりもデジタル化の取り組みが遅れています。
出典:総務省「令和3年版情報通信白書(2)我が国におけるデジタル化の取組状況」(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112420.html)
日常診療の一例を示します。紙の診療情報提供書を用意したり、CD・DVDが規格違いで読み取れなかったりと、診療に支障をきたした経験がある先生もいるのではないでしょうか。
国はこうした状況を踏まえ、患者さんへのより良い医療の提供と医療機関の事務負担軽減を両立させる長期計画として、医療DXを推進しています。なお、医療DX全体の背景や定義については、詳細に解説した記事も用意しているため、参考になさってください。
医療DX令和ビジョン2030の3つの柱
「医療DX令和ビジョン2030」は、以下の3つの柱を軸に進められています。
- 全国医療情報プラットフォームの創設
- 電子カルテ情報の標準化
- 診療報酬改定DX
それぞれの中身について、詳しくみていきましょう。
1. 全国医療情報プラットフォームの創設
「全国医療情報プラットフォーム」は、レセプト請求や保険資格確認のために構築されたオンライン資格確認等システムのネットワークを発展させたものです。レセプト・特定健診・予防接種・電子処方箋・電子カルテなど、医療全般の情報を医療機関間で共有できる基盤として整備が進められています。
出典:厚生労働省「第23回 健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ2024(令和6)年12月2日全国医療情報プラットフォームで共有される情報について全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001343119.pdf)
紙の紹介状がなくても病歴や検査歴を確認できるようになるほか、マイナンバーカードによる電子署名で同意書等の手続きも簡略化されます。重複検査や重複投薬の回避につながり、診察・治療の質向上も期待されています。
情報を安全に共有するためには、アクセス権限の管理や通信の暗号化など、高度化するセキュリティ脅威への対策も欠かせません。プラットフォームの土台となるオンライン資格確認等システムは、2023年4月から導入が原則義務化されており、基盤整備は着実に進んでいます。
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会総会(第527回)資料① 医療DXの基盤となるオンライン 資格確認の導入の原則義務付け」(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000974974.pdf)
2. 電子カルテ情報の標準化
電子カルテ情報の標準化は、国際規格であるHL7 FHIRを用いて、下表の3文書・6情報を共有できるようにする取り組みです。
| 共有できる情報 | 内容 |
|---|---|
| 3文書 |
|
| 6情報 |
|
標準化とあわせて、低価格で導入しやすい「標準型電子カルテ」の開発・普及も進行中です。2025年3月には、先行医療機関でα版の提供が始まり、モデル事業を重ねながら機能改善が続けられています。
なお、電子カルテの導入をめぐっては、2025年12月に成立した医療法等の一部を改正する法律により、政府は2030年12月31日までに電子カルテの普及率を約100%とする目標が設定されました。
出典:厚生労働省「第28回 健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ2026(令和8)年3月12日電子カルテの普及について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001657580.pdf)
単なる数値目標ではなく法律上で定義されたため、未導入のクリニックにとっては対応の緊急度が増したといえるでしょう。標準型電子カルテや標準化対応電子カルテについて、詳しく解説した記事も用意しているため、あわせて参考になさってください。
3. 診療報酬改定DX
診療報酬改定のたびにレセコンベンダー各社が改定内容を個別に読み解き、報酬計算プログラムに反映する作業が発生し、大きな負担となってきました。こうした負担を軽減するのが「診療報酬改定DX」です。
柱となるのが、各レセコンベンダーが共通で利用できる計算プログラム「共通算定モジュール」です。支払基金は、クラウド型レセコン向けの共通算定モジュール(医科の出来高算定に加え、病院の包括払い対象であるDPCにも対応)の本格運用を2026年6月1日に開始しました。
出典:厚生労働省「共通算定モジュールの概要」(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001703800.pdf)
あわせて、診療報酬改定の施行時期を後ろ倒しにし、対応作業が特定の月に集中する状態を解消する取り組みも進められています。
医療DX令和ビジョン2030のスケジュール
2022年の提言から2030年の完成形まで、施策は3つの柱ごとに段階的に進められています。ここでは、年度ごとの主な動きと、クリニックの対応ポイントを整理しました。
| 年度 | 該当する柱 | 政策の動き | クリニックの対応ポイント |
|---|---|---|---|
| 2022年度以前 | 全体 |
|
とくになし(政策検討フェーズ) |
| 2023年度 | 3.診療報酬改定DX |
|
レセコン・電子カルテの更新時期を把握 |
| 2024年度 | 1.全国医療情報プラットフォーム |
|
|
| 2025年度 | 1.全国医療情報プラットフォーム 2.電子カルテ情報の標準化 |
|
(24年度から引き続き)電子処方箋が未導入なら導入を検討 |
| 2026年度 | 3.診療報酬改定DX |
|
|
| 2030年 | 全体 |
|
電子カルテが未導入なら計画的に検討 |
実際の政策内容や時期については、厚生労働省の「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームのページなど、最新情報も定期的に確認なさってください。
出典:厚生労働省「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_210261_00003.html)
上表の対応ポイントのうち、いまから対応を検討しておきたい情報をまとめました。
一例として、電子カルテ未導入の場合、適切な電子カルテの情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。ウィーメックスが提供しているメディコムシリーズは標準化に対応しており、デジタル庁の標準型電子カルテ開発ワーキンググループにも参画しています。
情報収集の一環として、以下製品ページも参考になさってください。
▶製品ページで電子カルテの情報を収集する
まとめ
医療情報を十分に活かせない状況は、医療現場にとっても負担となってきました。「医療DX令和ビジョン2030」は、日本の現状を変えていく強いメッセージが込められた政策といえるでしょう。
乗り越えるべき課題はハード・ソフトの両面に多く残っている状況です。今後の政策の動きに注目しつつ、自院で取り組める医療DXの推進を図られてみてはいかがでしょうか。
本記事で解説した内容を含め「医療DX令和ビジョン2030」の全体像を解説したセミナーも用意しているため、視覚的な振り返りとしてご活用ください。
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