インドネシアにおけるメディコム進出は、受付から診断、保険請求、調剤に至るまでトータルソリューションを提供するのが最終目標地点だが、第一段階として、混雑が顕著な外来受付業務を支援するシステムから手をつけることになった。現地のパートナー会社とタッグを組み、病院関係者にヒアリングをする。そして、仕様を詰めていくのだが、いきなり壁に突き当たった。
「打ち合わせをして、その内容に合わせて設計して、デモを見せる。すると『そうじゃない』『やり直してくれ』という反応が返ってくるのです。前回あれほど確認したのに、別の担当者が出てきてひっくり返されてしまうことも。こちらとしてはわけがわからない状態でした」
次第に、病院の各セクションが完全な縦割りで、自分の担当以外のことを知る人がほとんどいないことがわかってきた。さらに向こうからすれば、日本の企業が導入しようしているシステムの全容もよく見えない。このすれ違いを突破するには、さまざまなセクションの人に丁寧にヒアリングし、説明していくしかない。現地に赴任することとなった同僚と連携して、ひとつずつ、課題を解決していった。しかし、インターフェイスの部分でまたしても一悶着があった。
「受付のモニターに担当医の名前が表示されるのですが、日本だったら『内科・山田医師』ですむところを、あちらでは医師の肩書きや役職からすべて入れてくれと言うのです。そうすると3、4行になってしまうのですが、それでいい、むしろそうじゃないと絶対ダメだと」
些細なことかもしれないが、鈴木は製品のローカライズにおける要衝を思い知らされる出来事の連続だった。
「現地の習慣や文化に合ったものをつくること。それができないと結果として浸透しない。先入観を捨てて、お客様の声に耳を傾け、そこに適合したものをつくることの大切さを何度も思い知らされました」
こうして完成したメディコムの外来受付システムは、モニターに診療カードをかざすだけで受付手続きが完了するスマートシステムだ。これまで手続きに追われていた病院関係者に大好評を博した。鈴木は、このシステムがインドネシアの病院経営者や管轄省庁から高い評価を得ていることを小谷社長から聞かされ、喜びを噛み締めた。病院でのパイロットテストを終えて、2018年春、待ちに待った製品化に漕ぎつけることができた。