統合報告書 2023

PHCグループの現状と目指す姿特集 PHCグループの目指す
バリューベース・ヘルスケア

バリューベース・ヘルスケアとは

現在の医療でも治療が難しい疾患があることや、受けられる医療に地域差があること、増大傾向にある医療費等ヘルスケア業界には課題があります。このような課題に対し、医療コストを最適化し、患者さんにとっての医療アウトカムを最大化することに注目し、上記課題の解決を目指すアプローチがバリューベース・ヘルスケアです。

3つの基本的な考え方

医療の質の向上
既存の医療では治療が難しい疾病に対し、
最先端の治療法によりソリューションが提供可能となること
医療アクセスの向上
いつでも、どこでも、誰でも、
安価に治療・診断・検査が受けられること
費用対効果の改善
個人の特性や症状に応じた効果の高い薬・治療法が
開発され、医療現場で選択できること

ヘルスケア業界の課題

課題 内容
医療の質 イメージ医療の質 製薬企業や研究機関では、細胞医療や遺伝子治療といった先端治療法の開発が進んでいます。細胞医療には、iPS細胞を使って人の臓器等の組織を培養・作製し、患者さんに移植する再生医療等があります。遺伝子治療には、遺伝子に異常がある患者さんから幹細胞を取り出し、健康な人由来の正常な遺伝子を組み入れる治療があります。この細胞は正常遺伝子から必要なたんぱく質をつくるので、これを増殖させて患者さんに戻し、正常な遺伝子の働きで治療を行う方法です。このように従来は十分な治療法がなかった疾病の治療・改善ができる先端治療の開発の加速が課題になっています。
医療アクセスの格差 イメージ医療アクセスの格差 先進国では利用可能な治療や薬、医療を受ける環境が、新興国や途上国では利用が難しいケースがあります。先進国の中でも都市部と地方で受けられる医療に差がある等、医療アクセスの格差が存在します。デジタルを活用した遠隔診断・治療の普及やより簡便に検査・診断ができる製品、より安価な薬の開発等が求められています。
医療費の増加 イメージ医療費の増加 OECD Health Statisticsによると1970年にはGDPの5%程度だった総医療費が、2021年には日本では10%を超え、米国でも17%を超える水準になっています。原因としては人口の高齢化や疾病構造の変化、新技術の導入等が挙げられますが、医療費の増大は先進国をはじめとして多くの国で共通の課題となっています。

PHCグループの貢献

課題 内容
医療の質の向上 イメージ医療の質の向上 医療アウトカムの最大化には、既存の医療・治療法では十分な結果が得られにくい疾病に対する先端治療法の開発が必要です。細胞医療や遺伝子治療がその代表例ですが、PHCグループはそのような最先端の開発現場に必要な機器やソリューションを提供しています。新型コロナウイルスワクチンの製造・保存に不可欠である超低温フリーザーや細胞培養に必要なCO2インキュベーターがその一例で、いずれも世界2位のシェアを有しています。細胞培養では、細胞の代謝分析がリアルタイムにできる装置を提供し、細胞医薬品の研究・開発を支援しています。
医療アクセスの向上 イメージ医療アクセスの向上 PHCグループは、小型の生化学分析装置の製造や心臓バイオマーカー測定機器の販売を行っています。今後も小型の簡易迅速検査器の開発・製造に注力し、いつでも、どこでも、安価に誰もが検査・診断を受けられる環境の実現に貢献していきます。医療アクセス格差を改善する医療DXでは、ヘルスケアIT製品・サービスをはじめとする様々なソリューションを提供しています。
費用対効果の改善 イメージ費用対効果の改善 従来は治療や投薬に対しての報酬が一般的でしたが、治療で得られた結果(アウトカム)に対して報酬が支払われるという考え方が広まっています。その実現には、治療や薬の効果に対する知見や一層効果の高い薬・治療法の開発が重要です。PHCグループは医療データを扱う領域で事業を展開しているため、ビッグデータを分析し、個人の特性や症状に応じた治療・薬を選べる最適な医療や、医薬開発を進める重要データの提供等を通じて、費用対効果の改善に貢献していきます。
  • ※ Global Assessment of Life Science Equipment Market and The Impact of COVID-19(Frost & Sullivan、2021年11月1日発行)

独自の強みでバリューベース・ヘルスケアに貢献

バリューベース・ヘルスケアの推進において、PHCグループは下記のような役割で貢献できると考えており、まさに当社グループの強みが発揮できると確信しています。

PHCグループは薬や治療法を研究開発する製薬企業や大学・研究機関の方々、診断・治療の最前線にいる病院・診療所・薬局の皆様、そして患者さんにいたるまで、川上から川下までを網羅する幅広い医療関係者と強固な関係を築いています。更に、当社グループの製品・サービスは医療の各分野でリーディングポジションにあり、医療関係の皆様から厚い信頼を頂いています。このようなポジションにいるからこそ、ユーザーの皆様との対話や議論を通じて、今後のヘルスケアで求められる製品・サービスを創り出すことができるのです。

そうした製品・サービスを実現させるのが、高精度・高品質なモノづくりの力です。ヘルスケアは命や健康に直結する領域なので、精度と品質が極めて重要で、これまで培ってきたモノづくりの力が開発や生産の大きな支えになっています。

PHCグループは、独自の強みを最大限に活用してバリューベース・ヘルスケアに貢献していきます。

佐藤 浩一郎PHCホールディングス 代表取締役副社長 最高執行責任者
(COO)

佐藤 浩一郎