令和8年度診療報酬改定は+3.09%、調剤は+0.08%。薬局経営者がおさえておきたいポイントとは
令和7年12月、令和8年度診療報酬改定の内容が明らかとなりました。今回の改定では、診療報酬を全体で3.09%引き上げる方針です。平成28年度からの直近10年は+0.5%前後で推移していたため、今回の上昇率は高い水準といえるでしょう。一方、調剤分野に限ると+0.08%に留まり、内容は賃上げや物価高騰対応が中心です。本記事では改定率の内訳や基本方針の意図を整理し、薬局経営への具体的な影響について解説します。
※本内容は公開日時点の情報です
目次
本体の改定率は+3.09%と大幅アップ
令和8年度改定における診療報酬本体の改定率は、+3.09%となりました。3%以上の上昇は、平成8年以来30年ぶりの大幅なプラス改定です(平成8年度は+3.40%)。改定率の内訳は以下の通りです。
| 区分 | 改定率 | 備考 |
|---|---|---|
| 診療報酬本体(全体) | +3.09% | 過去30年で最高水準の引き上げ |
| (内訳) | ||
| ① 賃上げ対応分 | +1.70% | ベースアップ評価料や処遇改善など(全科共通) |
| ② 物価対応分 | +0.76% | 基本診療料(初診料・再診料・入院基本料)や調剤基本料の引き上げなど |
| ③ 入院時の食費・光熱水費分 | +0.09% | |
| ④ 緊急対応分 | +0.44% | 令和6年度改定以降の経営環境の悪化を踏まえた対応 |
| ⑤ その他(各科改定率) | +0.25% | 実質的な技術料や薬学管理料などの改定枠 |
| ・医科 | +0.28% | |
| ・歯科 | +0.31% | |
| ・調剤 | +0.08% | 他科に比べても低水準 |
| ⑥ 効率化・適正化など | ▲0.15% | 長期処方・リフィル処方の取り組み強化や後発医薬品の使用促進など |
調剤の改定率は+0.08%ですが、この改定率には薬剤師や事務職員などの賃上げ対応分が含まれています。さらに物価高騰への対応や処遇改善など、使途が限定されている予算が大半を占めているとされています。また、長期処方・リフィル処方の活用による効率化や後発医薬品の使用促進などで、0.15%の医療費削減も見込まれています。これらを考慮すると、改定による薬局の利益増加は限定的といえるでしょう。
出典:令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf)
企業物価指数(2025年12月速報)(日本銀行)(https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2512.pdf)
令和7年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12604000/001522755.pdf)
薬価改定率は-0.87%
今回の改定では、薬価や材料価格などの引き下げも同時に実施されます。具体的な改定率は以下の通りです。
- 薬価:▲0.86%(国費ベースで▲約1,052億円)
- 材料価格:▲0.01%(国費ベースで▲約11億円)
- 合計:▲0.87%(国費ベースで▲約1,063億円)
なお施行時期は、薬価が令和8年4月、材料価格は令和8年6月となる予定です。
令和8年度診療報酬改定の全体意図
今回の3.09%というプラス改定が示された背景には、急激な物価高騰や全産業的な賃上げ傾向など、社会情勢の変化があると考えられます。特に医療業界は、他業界と比較して賃金の上昇率(ベースアップ率)が低いため、医療従事者の人材確保や働き方改革の一環として、プラス改定が行われたと推察されます。
また、水道光熱費や食材料費などの高騰が、医療機関や薬局などの経営を圧迫している現状への配慮もあるでしょう。持続可能な医療・介護の実現に向けて、プラス改定が判断されたと考えられます。さらに、高齢化の進展を見据えた医療・介護の連携強化や、医療DXの推進による業務効率化なども意識された内容になっているといえるでしょう。
出典:令和8年度診療報酬改定の基本方針の概要(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001607220.pdf)
調剤に関連するポイント
令和8年度診療報酬改定の基本方針の中で、調剤に関わる項目を見ていきましょう。主な論点と改定内容の要点は以下の通りです。
| 主な論点 | 改定内容の要点 |
|---|---|
| 賃上げ・処遇改善 |
ベースアップ評価料の見直し:計算式の簡素化と対象職種の明確化により、算定のハードルを低下。 調剤基本料の引き上げ:物価高騰による経営コストの増加や賃上げに対応するため、基本料を増点。 |
| 医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進 |
医療DX推進体制整備加算の要件厳格化:マイナ保険証の利用率や電子処方箋等の応需実績などが算定の必須要件化。 医療情報取得加算の拡大:オンライン資格確認や電子カルテ情報共有サービスなどで得た情報を服薬指導に活用した場合の評価を拡充。 |
| 対人業務の充実度 |
地域支援体制加算の実績要件の厳格化:地域支援体制加算の実績要件として、服薬情報提供料や在宅訪問指導などの年間実績の見直し・厳格化。 リフィル処方箋の促進:リフィル処方箋の受付実績が、調剤基本料や地域支援体制加算の算定要件に追加。 |
| かかりつけ機能・地域医療 |
感染症対応の標準化:パンデミック時に対応可能な医療機関(第二種協定指定医療機関)の指定が地域支援体制加算の算定要件に。 在宅医療の質の重視:在宅医療のターミナルケア(終末期医療)や麻薬管理に関する評価の拡充・重点化。 |
| 医薬品供給体制の強化 |
後発医薬品使用体制加算の基準引き上げ:後発医薬品の使用目標値(カットオフ値)の引き上げ方針。 地域連携の必須化:近隣薬局との在庫情報共有や医薬品融通の体制確保を地域支援体制加算や連携強化加算の算定に要件化。 |
今回の改定では、賃上げや物価高への対応などの経営支援が盛り込まれています。一方、新たな要件に対応できない場合、算定不可となるリスクもあるでしょう。特にマイナ保険証の利用率が未達の場合、評価対象外となる可能性も示唆されています。また、医療DXの活用実績や対人業務の質などが重視される傾向があるようです。地域支援体制加算では、感染症対応や他薬局との連携が要件化される見込みです。地域医療への貢献度が、今後の算定や加算の可否を左右する要因となるでしょう。
出典:令和8年度診療報酬改定の基本方針の概要(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001607220.pdf)
薬局経営者がおさえておきたい、今後の経営への影響
今回の改定方針から、薬局経営に求められる変革の方向性が浮き彫りになりました。
まずは門前から地域へという流れです。医療モールや門前薬局などへの集中が見直され、地域包括ケアシステムの中で機能する薬局が評価されるようになるでしょう。かかりつけ機能を持たない薬局は、経営的なメリットを享受しにくくなる可能性があります。
経済的な側面では、薬価のマイナス改定と診療報酬のわずかなプラス幅という厳しい現実があります。従来の対物業務中心の収益構造では、利益を確保するのが難しくなると予想されます。対人業務へのシフトを確実に進め、技術料で収益を上げる体質への転換が急務といえるでしょう。
また、DXの推進・導入は必須となりつつあります。オンライン資格確認や電子処方箋の活用などは、業務効率化だけでなく医療機関との連携強化にもつながるでしょう。これらを活用できないと、地域連携の輪から取り残される可能性があります。
さらに医療費の適正化に向けて、OTC類似薬の保険適用見直しやリフィル処方箋の普及などが進む可能性も考えられます。これらは処方箋枚数の減少につながる可能性がありますが、健康相談やOTC医薬品の提案などの新たなニーズを生む好機とも捉えられるでしょう。変化を先取りし、柔軟に対応できる体制づくりが求められています。
診療報酬改定の関連コンテンツ一覧
令和8年度診療報酬改定の情報と合わせて、以下のコンテンツもぜひご活用ください。経営判断に役立つ最新情報や、医療DXに関わる具体的な対応策を解説しています。
なお、今後発表される個別改定項目や確定情報についても、順次配信していく予定です。
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