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クリニック開業 医師 事務長 2026.10.26 公開

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承継開業と新規開業ではどちらが向いている?比較表と診断チェックリスト

開業を考えはじめた勤務医の先生にとって、承継開業と新規開業のどちらが自分に合うのかは、判断に迷いやすいところではないでしょうか。早く・初期費用をおさえて開業したい先生は承継開業、理想の診療を一から追求したい先生は新規開業が検討の軸となりえます。本記事では、両者の違いを比較表で整理し、自分に合う方法を確かめられる診断チェックリストを紹介します。自身の状況やイメージと照らし合わせる資料としてご活用ください。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討 #開業地選定 #事業計画 #マネジメント

目次

承継開業と新規開業の違い

承継開業は、すでに開業しているクリニックの運営を引き継いで開業する方法です。ゼロから立ち上げる新規開業との違いを、下表にまとめました。

比較項目 承継開業 新規開業
初期費用 設備や内装を引き継げれば、おさえやすい(譲渡対価は別途必要) 5,000万円~2億円程度が目安
開業準備期間 条件により異なる(新規開業より短くなる場合がある) 1年〜2年が目安
引き継げるもの 患者さん・スタッフ・設備など なし(すべてゼロから構築)
診療方針の自由度 前院長先生の方針との調整が必要 自由に設計しやすい
黒字化までの期間 患者基盤を引き継げれば、早まる場合がある 数年かかる場合もある

※費用は、立地・物件・診療科によって変動します。また、運転資金は承継でも別途必要です。

各項目の詳しい内容は、後述するメリット・デメリットと手続きに分けて紹介します。

自分に合った開業方法チェックリスト

ご自身の考えに近い項目にチェックを入れてみましょう。左右の列でチェックの数を数えると、開業方法の方向性を確認いただけます。

観点 承継開業に近い考え方 新規開業に近い考え方
資金・経済面
時間・スケジュール
立地・地域性
方針・考え方

「地域の医療ニーズと、自分の専門性が一致している」場合は、どちらにも該当します。数には入れず、開業地を選ぶ際の確認項目にしましょう。

チェックした内容をもとにした判定の目安は、下記のとおりです。

  • 左の列が3項目以上多い:承継開業を軸に検討する
  • 右の列が3項目以上多い:新規開業を軸に検討する
  • 差が2項目以内:優先したい条件を絞って再検討する

本チェックリストの結果は、あくまで1つの目安です。最終的には、資金計画や地域の状況もふまえた総合的な判断が欠かせません。結果に応じた次なる一歩として、各特集ページもご活用ください。

▶承継開業を軸にする方:承継開業特集ページ

▶新規開業を軸にする方:クリニック開業ガイド

▶判断に迷う方:相談・お問い合わせはこちら

承継開業のメリット・デメリット

承継開業には、費用や期間の面で利点がある一方、引き継ぐ形ならではの注意点もあります。両面を把握したうえで、ご自身の条件と照らし合わせて判断しましょう。ここでは主なメリットと、デメリットに対する対策の方向性を整理してお伝えします。

承継開業のメリット

承継開業の主なメリットと、とくに当てはまる先生は下記のとおりです。

メリット とくに当てはまる先生
準備の時間・労力を節約できる 勤務を続けながら、限られた時間で開業準備を進めたい先生
初期費用をおさえられる

初期資金をおさえて、早期回収を重視したい先生

※ただし、譲渡対価は別途必要

通院中の患者さんを引き継げる 開業初日から来院が見込める環境で、診療を早く軌道に乗せたい先生
業務に慣れたスタッフと働ける 既存スタッフと協働しながら、円滑に運営を始めたい先生
地域の認知度を活かせる 地域に根ざした診療を、開業時から続けたい先生

早く診療を軌道に乗せたい先生にとっては、大きな魅力といえるでしょう。

承継開業のデメリット

承継開業のデメリットは、事前の確認と準備で備えられる場合があります。主なデメリットと、対策の方向性は下記のとおりです。

デメリット 対策の方向性
患者層が偏る場合がある
  • 患者さんの年齢層や診療内容の内訳を、契約前に確認する
  • 新しい患者層に向けた情報発信や、予約方法の見直しを検討する
人件費が高めの場合がある
  • 給与水準や人件費の割合を、事前に確認する
  • 収支計画に反映し、見直しが必要な場合はスタッフと十分に話し合う
業務オペレーションの変更が難しい
  • 引き継ぎ期間中に現場を観察し、変更の優先順位を決める
  • 電子カルテなどの新システムは、丁寧な説明と段階的な移行を心がける
引き継ぎ期間の確保が必要 期間や役割分担を、前院長先生と取り決めておく
建物の老朽化リスクがある
  • 内見時に、設備の導入時期や修理履歴を確認する
  • 修繕費を資金計画に含めておく

デメリットの具体的な実務対応は、医院継承の全体像を解説した記事で詳しく解説しています。

承継開業の手続き

承継開業では、前院長先生のクリニックが個人か法人かによって、必要な手続きが異なります。なお、以下は一般的な流れであり、運用は自治体や所管の機関によって異なる場合があります。実際に進める際は、所管の窓口でご確認ください。

個人クリニックを承継する場合

個人が開設しているクリニックの事業を承継する場合は、新たに開設の手続きが必要です。

手続きの基本の流れは、契約前に管轄窓口で必要書類を確認し、開設届を提出したうえで、保険医療機関の指定申請を進める形です。また、前院長先生側でも、診療所の廃止届が必要になります(10日以内)。

主な手続きは、下記のとおりです。

提出先 手続き 主な内容
保健所 診療所開設届
  • 開設後10日以内に提出する(医療法第8条)
  • 管理者の臨床研修修了登録証・免許証の写し、履歴書などを添付する
地方厚生局 保険医療機関指定申請
  • 指定日は原則、申請の翌月1日
  • 開設者の変更時に患者さんが引き続き診療を受けている場合は、遡って指定日を認める取り扱いがある
都道府県労働局 労災保険指定医療機関の指定申請 診療所の所在地を管轄する労働局へ、開設許可証の写しなどを提出する

出典:東京都保健医療局「診療所(医科・歯科)を開設した皆様へ(個人開設)~医療法等届出手続きについて~」(https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/annai_kojin_202604-pdf)

出典:東京都保健医療局「診療所・歯科診療所の開設等」(https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/minamitama/youshiki/shinryoujotou/shinryoujo-shika)

出典:厚生労働省関東信越厚生局「保険医療機関・保険薬局の指定申請手続きの流れ及び添付書類等」(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/shitei_shinsei.html)

出典:厚生労働省「労災保険指定医療機関になるための手続きについて」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000060772.html)

保険医療機関の指定日は状況によって取り扱いが異なります。契約前から管轄の厚生局へ手続きの時期を確認しておくと安心です。

法人クリニックを承継する場合

法人が運営するクリニックを承継する場合は、承継の方法によって手続きが異なります(本記事は医療法人の例を参考)。

なお、分配を受ける権利を意味する出資持分は定款に反しない限り譲渡でき、理事長は原則、医師または歯科医師の理事から選びます(医師・歯科医師以外は都道府県知事の認可が必要)。

場面ごとの主な手続きは、下記のとおりです(法人の手続きは東京都の資料にもとづく例です)。

場面 主な手続き
契約の締結 経営引継契約書、出資持分譲渡契約書、資産譲渡契約書などの締結(契約内容は専門家に確認する)
理事長の変更
  • 役員変更届(医師・歯科医師の免許証の写しなどを添付)
  • 理事長変更の登記と、登記後の登記事項の届出
診療所を増やす・廃止する
  • 定款(法人の基本ルールを定めた書類)の変更について、都道府県知事の認可が必要
  • 3か月程度かかる場合がある(事務所の所在地のみの変更は届出)
開設者の変更 開設者が変わる場合は、開設の許可や廃止の届出が別途必要になる場合がある(事前に窓口で確認する)

出典:東京都保健医療局「医療法人運営の手引(令和8年4月版)第3章各種届出」(https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/03-9)

出典:東京都保健医療局「医療法人運営の手引(令和8年4月版)第4章定款(寄付行為)変更手続き」(https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/04-8)

出典:厚生労働省「医療法人の基礎知識」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/houkokusho_shusshi_09.pdf)

法人の承継は契約や登記、行政手続きが重なるため、弁護士や税理士、行政書士などの専門家と進めるのが一般的です。

まとめ

承継開業は、設備や患者基盤を引き継げる分、準備の時間や初期費用をおさえやすい開業方法です。一方で、患者層の偏りや人件費、引き継ぎ期間など、事前に確認したい点もあります。本記事の比較表とチェックリストで、ご自身の優先順位を整理してみてください。

手続きは、個人か医療法人かで異なるため、所管の窓口にも早めに確認しておきましょう。

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著者情報

武田 直也 様

フリーランスWebライター。18年間、医療事務として合計3つの医療機関に従事。診療報酬をはじめ、診療情報管理士の資格を活かしたカルテ監査やDPCデータ分析、クリニカルパスなどの医療情報利活用に精通している。

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