統合報告書 2026

Businessヘルスケアソリューションドメイン

ヘルスケアソリューションドメインでは、臨床検査事業、医療ITソリューションの開発・販売、創薬支援事業を通じて、ヘルスケア分野を幅広く支えています。医療機関向けに臨床検査サービスやレセプトコンピュータ、電子カルテなどの医療ITソリューションを提供するとともに、製薬企業向けに非臨床試験や治験支援などの研究開発サービスを展開。医療従事者や患者さんを支援し、日本の医療・創薬の発展に貢献します。

売上収益全社比率35.2%

FY25 実績

売上収益

売上収益は、臨床検査事業の遺伝子検査の成長やヘルスケアITソリューション事業の電子カルテ・レセプト関連売上の増加が、電子処方箋売上の減少やCRO事業の減収を補い増収

売上収益
営業利益
営業利益

営業利益は、増収影響やコスト削減効果はあるも、販売構成差、仕入価格や償却費の増加、CRO事業の減収影響及び構造改革費用の計上により減益

  • 増収影響
  • コスト削減効果
  • 利益率の高い電子処方箋売上の減少
  • 仕入価格上昇/償却費増加
  • CRO事業の減収
  • 構造改革費用の計上
  • 本社機能見直しによる影響額0.8億円
営業利益率4.9%

ドメイン戦略

佐藤 浩一郎

佐藤 浩一郎

PHCホールディングス株式会社
代表取締役副社長/COO/CSO
ヘルスケアソリューション ドメイン長

収益性維持、改善

WEMEX:買収統合効果の創出、
クラウドベースのソリューション展開

LSIM、Mediford:事業再構築

営業利益率改善幅:2.0%(FY24~FY27)

課題が顕在化する日本の医療を支えるソリューションを提供

日本の医療は、高齢化に伴う医療費の増大とそれを支える現役世代の負担の増大、医療従事者の不足・偏在、医療機関の経営環境の悪化、地域間の医療アクセス格差など、さまざまな課題に直面しています。

ヘルスケアソリューションドメインは、日本の医療現場を支える多様なサービスを展開し、医療機関や医療従事者の業務をサポートしています。

2025年度はドメイン全体として、売上収益は若干の増収、営業利益は減益となりました。臨床検査事業では、市場が安定的に推移、注力している遺伝子検査も成長し、コスト削減も奏功しました。また、中央総合ラボラトリーにおいてISO15189を再取得し、中期経営計画2027に沿って着実に業績改善が進んでいます。ヘルスケアITソリューション事業では、政府が推進する医療DX政策の一環である電子処方箋の需要が2024年度に比べ停滞しましたが、電子カルテやレセプトコンピュータなどの主力製品が補いました。加えて、WHSとの完全統合やクリニック用クラウド型・レセコン一体型電子カルテ「Medicom クラウドカルテ」の上市など、今後も増加が見込まれる医療DX関連需要を着実に獲得すべく事業基盤の一層の強化を進めています。CRO事業では、臨床検査事業におけるISO認定取消の影響により、治験を中心に受注が減少し、厳しい業績となりましたが、業績回復に向け受注拡大に向けた営業活動の強化、収益改善の取り組みを継続しています。

2026年度において、臨床検査事業は引き続き多種多様な検査項目を展開するとともに、がん検査や遺伝子検査などにも力を入れ、病気の予防、迅速かつ的確な診断、効果的な治療の実現に貢献していきます。ヘルスケアITソリューション事業では、「Medicom クラウドカルテ」の拡販を中心に、2030年に電子カルテ普及率100%を目指す医療DX関連需要の獲得を進めます。CRO事業は経営体制を刷新いたしました。また、感染症関連施設(BSL3施設)を新設し、ネクストパンデミックを見据えたワクチン等の開発をサポートするなど、多様化する新たな治療法(モダリティ)の発展を引き続き支えてまいります。

当ドメインは、日本の医療現場に欠かせない存在として、これからも医療機関や医療従事者の業務を支え、日本の医療課題の解決に貢献してまいります。

臨床検査事業※

LSIメディエンス

市場環境・見通し

国内受託臨床検査市場の推移
国内受託臨床検査市場の推移

出所:自社調べ

市場環境
  • 一般的な受託検査は回復基調にあり、特に遺伝子分野は高い水準で伸長
  • 経費の圧縮や固定費の変動費化の観点から、FMS※1/ブランチ※2導入ニーズは継続
  • ※1FMS(FMS方式):病院検査部に対して検査機器・システム及び試薬・消耗品等を供給し、検査室運営ノウハウを提供するサービス
  • ※2ブランチ(ブランチラボ方式):医療機関内で検体検査業務を実施する形態。検査技師・検査機器・検査システムなど必要な設備を導入し、検査室を運営するサービス
今後の見通し
  • 受託検査は、診療報酬改定に伴う価格下落の影響はある一方で、遺伝子分野の成長が見込まれる
  • FMS/ブランチ導入にはより戦略的な対応が求められる

主要な製品・サービス

臨床検査サービス
臨床検査サービスは、生化学、血液学、免疫学、微生物学、遺伝子学を含む多種多様な検査項目を展開。ラボオートメーション・システムを通じて、“より正確に、より迅速に”という高度な臨床検査ニーズに対応します。また、全国に営業拠点網を有し、長年にわたる実績により大学病院からクリニックまで医療機関全般、そして行政機関等のお客さまとお取引いただいています。
臨床検査サービス
日本シェア3

出所:自社調べ

戦略・目標

戦略
  • 価格適正化活動の推進
  • 遺伝子・未保険分野の事業領域拡大
  • 拠点の最適化
  • 検査業務の運用改善、ITシステムを活用した品質管理体制の強化
目標(FY24-FY27)
売上CAGR:2.1%

事業戦略

内野 健一

内野 健一

PHCホールディングス株式会社
執行役員
株式会社LSIメディエンス
代表取締役社長

一般的な受託検査の需要は回復基調にある一方で、国際情勢による燃料費や資材費の高騰、少子高齢化などを背景とした人材確保の競争激化に伴う影響は軽視できないものと認識しています。

品質に係る不適切事案を受け、2025年度は顧客・社会からの信頼回復を第一に掲げ、品質マネジメントシステムの改善に取り組むとともに、収益性・効率性の改善を喫緊の課題として取り組んでまいりました。

引き続き、さらなる信頼回復に努めるとともに、中期経営計画2027の達成に向けては、地域の拠点医療機関及びパートナー検査センターとの連携や協業を含めた地域戦略に基づいた拠点の再配置、戦略的なリソース再配分、業務フローの見直しを通じた中央総合ラボラトリーの稼働効率向上を推進してまいります。

成長領域である遺伝子・未保険分野においては、がん遺伝子分野の研究検査市場への展開強化や、市場ニーズを踏まえた企業連携によるサービス拡大を図り、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。

私たちの「精緻な技術」

デジタルPCR法を用いた新規検査項目の開発
PCR技術を基本とした多種多様な検査が実施されるようになり、遺伝子検査が高度化するなかで、複数のターゲット遺伝子を効率的かつ定量的に解析できる「デジタルPCR」に着目し、新規検査項目開発を進めています。

デジタルPCRはサンプルを微小区画に分けてPCRを行い、各区画の結果をデジタルにカウントすることで絶対定量を実現します。標準曲線が不要なため、複数のターゲット遺伝子を定量する場合でも、高い作業性で効率的に測定できます。この特性を生かし、「日和見感染症ウイルスマルチ定量解析」を立ち上げました。日和見感染症は免疫力低下をきっかけに発症し、特に移植後の免疫抑制状態では重篤化リスクが高く、早期治療介入が求められます。原因ウイルスは複数存在し、臨床症状からの特定が困難なケースも多い中、本検査は複数ウイルスを短期間で同時に確認できるため、臨床医からも「実臨床で本当に役立つ検査」と高い評価をいただいています。

今後も医療現場の声に寄り添い、必要とされる検査項目を市場に提供してまいります。

デジタルPCR法を用いた新規検査項目の開発

ヘルスケアITソリューション事業

ウィーメックス

市場環境・見通し

医療情報システム市場の推移
医療情報システム市場の推移

出所:自社調べ

市場環境
  • 医療DXの推進に伴い、オンライン資格確認・電子処方箋に加え、電子カルテ情報共有サービスの普及が加速の見通し。標準仕様に準拠した電子カルテの認証制度が開始
  • 新規導入の医療機関では低廉なクラウド型の電子カルテが拡大
今後の見通し
  • 電子カルテは、2030年に普及率100%を目指す政策の推進。現状電子カルテ未導入の医療機関が全国4万件超存在することから、今後も成長する見込み
  • 健康経営分野は政策・制度の後押しもあり、中小企業への導入が進み今後も継続して大きく成長する見込み

主要な製品・サービス

クリニック向けシステム
クラウド・オンプレミス・ハイブリッド型の提供により、顧客ニーズに合わせたレセコン一体型電子カルテを提供。入力負荷を軽減すると共に、強みのレセプトチェックで算定漏れ・誤りを防止
診療所向けシステム

出所:自社調べ

薬局向けシステム
チェック機能を標準搭載。ミスを防ぎ薬局経営をサポートする電子薬歴
薬局向けシステム
  • ※診療所向け電子カルテ 診療所シェアNO.1 [出典]株式会社富士経済「2025年版 医療・ヘルスケア・製薬DX関連市場の現状と将来展望」より2024年実績 金額ベース 診療所向け電子カルテ(オンプレミス型/クラウド型)
    レセプトコンピュータ 診療所・病院シェアNO.1 [出典]株式会社富士経済「2022年 医療連携・医療プラットフォーム関連市場の現状と将来展望」より2020年企業シェア・数量ベース レセプトコンピュータ(PHC実績)

戦略・目標

戦略
  • 医療政策推進及び先導性や独創性の高いソリューションを提供し、医療DXをベースにした事業展開
  • FY25に事業統合したWHS(ウィーメックス ヘルスケアシステムズ)とのシナジー創出と競争力強化
  • クラウド製品の強化による顧客基盤、シェア拡大
  • 健康経営関連の製品、ソリューション強化
目標(FY24-FY27)
売上CAGR:5.4%

事業戦略

高橋 秀明

高橋 秀明

PHCホールディングス株式会社
執行役員
ウィーメックス株式会社
代表取締役社長

ウィーメックスは2025年10月1日、ウィーメックス ヘルスケアシステムズと事業統合し、一社化しました。顧客基盤は5万軒を超え、全国各地のサポート体制を基盤に、外部環境が急速に変化する中、両社の事業・技術・顧客基盤を融合し、経営意思決定の迅速化と業務効率化を通じてシナジー創出と競争力強化を進めています。

政府が推進する医療DXによる需要拡大の機会を的確に捉え、政策動向と顧客ニーズの双方に応える製品・サービスへの最新テクノロジー活用を推進しております。

診療所向けにはクラウド型・レセコン一体型電子カルテ「Medicom クラウドカルテ」(2025年4月上市)を含むクラウド・オンプレミス・ハイブリッドのフルラインアップを展開。薬局向けには、薬局業務支援システム「生成AI薬歴入力支援サービス」や総合経営支援システム「Wemex 薬局経営支援」等を展開し、大手薬局チェーンやドラッグストアの業務効率化を通じて、薬剤師が患者さんと向き合う時間を増やします。

予防・未病領域においても、企業や健康保険組合などに対し、予防医療の観点から業務効率化を実現するソリューションを提供しています。また、遠隔医療領域では、へき地医療や臓器提供の支援体制を整備するなど、医療従事者の負担軽減と患者さんの医療アクセスの向上に貢献しています。

私たちの「精緻な技術」

開発責任者が語る、Medicom クラウドカルテの精緻な技術 ~医療現場の課題を解く~

ウィーメックスは1972年に日本初のレセプトコンピュータを開発し、50年以上にわたり医療業務のデジタル化を推進してきました。

医療現場と向き合い、さまざまな課題解決に尽力するなかで培ってきた知見が、2025年4月上市のクラウド型・レセコン一体型電子カルテ「Medicom クラウドカルテ(以下、MCK)」の精緻な技術設計の基盤となっていると自負しています。

MCKにおける課題解決の象徴の一つが、外注検査センター連携機能の革新です。従来のオンプレミス型電子カルテでは、約80社の各外注検査センターの検査マスターを医療機関ごとに管理・保有し、検査センター設定、検査マスター取込、検査コード作成、検査コードリンク設定、オーダー画面構築といった設定作業を医療機関ごとに実施する必要があり、導入担当者に大きな負担となっていました。MCKでは、クラウド上で検査センターのマスターを一元管理することで、医療機関での設定作業を行うことなく、検査オーダーと結果取込の運用が可能となりました。この革新は現場での導入負荷を劇的に軽減し、MCKの迅速な普及の実現に貢献します。同機能は特許出願済みで、この開発に対する取り組みやプロセスが、開発チームのスキルアップにも貢献しました。

今後も医療現場の課題と向き合い、生成AI等の最新技術を活用し、医療DXの最前線で進化を続けてまいります。

大畑 敦司

大畑 敦司
ウィーメックス株式会社
開発本部 医科開発部 部長

CRO事業

メディフォード

市場環境・見通し

国内CRO市場の推移
国内CRO市場の推移

出所:自社調べ

市場環境
  • 国内・グローバルの製薬会社の研究開発費用の増加傾向、ドラッグロス/ラグ解消に向けた取り組みによる国内治験市場の広がり、政府による国内アカデミア・バイオベンチャーを中心とした市場強化策などにより非臨床・治験市場ともに拡大傾向
今後の見通し
  • 製薬企業の対象領域の絞り込み・深化、新モダリティでの製薬開発件数の増加傾向などによりCROの検査技術・対応力要求は高まる見込み

主要な製品・サービス

非臨床試験受託サービス
GLP基準に適合した施設及び最先端の設備機器を活かし、製薬・食品などの民間企業をはじめ、官公庁やアカデミア向けに、薬事承認申請用の各種試験から研究開発初期の探索的検討試験、コンサルティングまで幅広く展開
非臨床試験受託サービス
バイオアナリシスサービス
生体試料中の薬物やその代謝物、バイオマーカー等の分析法開発から分析法バリデーション、実検体の測定を実施。多様な手法を取り入れ、新規モダリティの研究・開発における各フェーズに合わせた分析サービスを提供
バイオアナリシスサービス

戦略・目標

戦略
  • 検査技術力・ラインアップを活かした競争力強化・事業拡大
  • AMED・他企業とのネットワークを活かしてアカデミア・ベンチャー領域へのアプローチ強化
目標(FY24-FY27)
売上CAGR:4.5%

事業戦略

上田 哲也

上田 哲也

メディフォード株式会社
代表取締役社長

メディフォードは、非臨床から臨床、市販後までを一貫して支援する国内有数の医薬品開発業務受託機関(CRO)です。

医薬品開発を取り巻く環境が大きく変化する中、当社はこれまで培ってきた技術力と最新鋭の機器を強みとして、低分子医薬品に加え、核酸医薬や細胞治療製品などの新規モダリティにも対応し、分析法開発から安全性・薬効評価まで幅広い領域で医薬品開発を支えています。

また、国内ではドラッグラグ・ドラッグロスが深刻な課題となっており、当社は革新的な医薬品を一日も早く患者さんへ届けることを使命として、課題解決に向けた取り組みを推進しています。

加えて、欧米ではFDAやEMAによる新しいアプローチの方法論(NAMs)の活用が進んでおり、当社はこうしたグローバルな潮流も踏まえ、多様化するモダリティや拡大が見込まれる治験市場に対応できる体制を整えています。

今後もアカデミアやバイオベンチャーとの連携を強化し、技術導入と対応領域の拡大を進めることで、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。私たちは、変化を機会と捉え、医薬品開発のパートナーとして社会に貢献し続けます。

私たちの「精緻な技術」

新規モダリティ開発を加速させるPAC-LC分析受託サービスの展開

当社は2025年1月、PAC-LC(Peptide Adsorption-Controlled Liquid Chromatography)技術の発明者である合田竜弥氏が代表を務めるFuture Peak株式会社とのコンサルティング契約を通じて、同技術を用いた最先端の受託分析サービスを開始しました。PAC-LCは、独自の吸着制御機構を備えた革新的な技術です。従来の液体クロマトグラフィー(LC)システムと比べ、高精度・高感度な分析を可能にするだけでなく、煩雑な前処理工程を大幅に簡略化できるため、創薬研究のスピードと効率を飛躍的に向上させます。本技術は、特に近年の創薬において主流となりつつあるペプチド医薬品や核酸医薬品などの中分子医薬品、抗体医薬品や抗体薬物複合体(ADC:Antibody-drug conjugate)といった、極めて分析難易度の高い「新規モダリティ」の薬物動態や、薬効を把握するうえで不可欠な生体内バイオマーカーの測定においてその真価を発揮します。

第一三共株式会社で28年間にわたり分析業務や定量法開発を牽引してきた、バイオアナリシス業界の第一人者である合田氏の卓越した知見と、当社の盤石な創薬支援基盤を高度に融合させることで、複雑化する分析ニーズへの対応力を抜本的に強化しました。

創薬の探索フェーズから臨床試験まで、確かな裏付けに基づく高品質なデータ提供を通じて新薬の早期市場投入を支援します。革新的な治療選択肢をいち早く患者さんへ届けるとともに、持続的な企業価値の向上に邁進してまいります。