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コラム:診療科別のクリニック開業ポイント
コラム クリニック開業ポイント

人工透析内科の開業を検討している方へ。資金や開業ポイント、事例に関して

  • 診療科別のクリニック開業ポイント

1. 序文

日本透析医学会の患者調査によると、慢性透析患者は増え続けており、全国で33万人以上の患者が透析を受けています。糖尿病患者の増加により新規に透析を始める導入患者数も年4万人を超え、導入平均年齢は約70歳と高齢化が進んでいます。
透析内科の開業については、継続的な通院患者を確保できる安定経営が見込める診療科である一方、患者高齢化による患者数の減少や開業コストが多大であることなど、透析内科特有の留意点を説明します。

2.人工透析内科の開業資金・平均年収に関して

人工透析内科を開業する場合、内科併設か専門医院、入院施設の有無などの診療形態、規模と立地により開業資金は大きく異なります。
千葉県内で透析クリニックを6院経営する医療法人社団明生会では、土地を取得して透析ベッド40床の透析専門クリニックを建設する場合の開業コストを3億円と試算しています。(出典:田畑 陽一郎、2017、『ドクタープレジデント』幻冬舎)
ビルのテナント診療所の場合、一般内科なら30坪程度で間に合いますが、人工透析内科では透析ベッドや人工透析用の機器のスペースとして、20ベッドで+40坪、40ベッドで+60坪程度の広いスペースが必要になります。内装工事費が高くなるだけでなく、透析用『超純水』装置や検査機器、勾配配管等の透析内科特有の工事も必要となるため、総工事費が大きくなります。ビル診療所の場合でも1億円ほどの資金が必要と考えておいたほうがいいでしょう。

人工透析科は、継続通院が必要な慢性疾患患者が対象です。透析クリニックの収益は、「単価」×「患者数」×「透析回数」になります。透析回数は患者の症状により異なりますが、週3回4時間前後が多く、月12回の通院が一般的です。しかし、診療形態により透析ベッド数と稼働率で上限が決まります。
勤務医のリクルート情報によると、透析内科の勤務医の平均年収はだいたい1,500万円から1,600万円程度が提示されています。透析管理ができる透析専門医で、シャント手術(人工血管形成)ができる医師はさらに年収が高いようです。
開業医の場合は勤務医を上回る2,000万円から4,000万円以上と診療形態により幅があります。ただし開業のための借入が多大であり、軌道に乗るまでは上記ほどの収入確保は厳しいでしょう。

3. 人工透析内科の開業ポイント

透析クリニック開業の立地を考える場合、3つのポイントがあります。

1つ目は、周辺地域の透析患者数です。透析受療率と診療圏内の人口から想定患者数を試算します。開業予定地の周辺10km、20km圏内の想定透析患者数と既存の透析クリニック数とその診療サービスから、新患者獲得の可能性を考えます。

2つ目は、地域中核病院や糖尿病・腎臓内科からのアクセスです。糖尿病や腎臓病の通院患者が多い地域では、病状悪化により透析患者の紹介が発生します。

3つ目は、週3回の通院が必要なため、通院に便利な場所です。乗換やターミナル駅から近いことは大事ですが、どうしても賃料が高くなります。新患者獲得は医療機関からの紹介もしくは後述のマーケティングの影響が大きいので、大通りの路面にある必要はありません。駅近でわかりやすい場所であれば、裏通りでも問題ありません。乗降数の多い駅近で広いテナントをより低い賃料で借りることが立地を考える上で必須です。

厚労省の新規導入患者削減方針と患者高齢化により、日本透析医学会では2021年の約34万9,000人をピークに透析患者数は減少すると見込んでいます。
これまでは生命維持だけを目的で数十年同じ透析医院に通院し続ける患者が多かったのですが、より高いQOL(生活の質)を求めて患者ニーズが変化しています。
通院の利便性を考慮し夜間診療と無料送迎を行ったり、在宅血液透析、腹膜透析(ハイブリッド)の診療を加えたり、さらに透析時間をより快適かつ有効に使えるようにリクライニングベッド、無料TVモニター、インターネット環境(Wi-Fi)を完備するクリニックも増えています。
特に若い現役世代の患者にとって、通院時間と透析時間だけでなく、その時間価値を総合的に考えメリットがあれば転院を考えます。一定数の患者があるからと言って安心はできません。

参照:一般社団法人 日本透析医学会「学術集会における統計調査速報値の公表中止について

4. 透析クリニックを成功させるには

人工透析内科は大病院の透析部門から個人の内科併設クリニックまでさまざまです。
開業を考える時は開業コストだけでなく、テナント賃料に加えて水質管理や光熱費などの月々の運営のための固定費も高くなることを考慮しなければなりません。
近い将来の患者数減少を予測し、これから開業し成功するためには、より専門性を生かした診療を提供し、効率良い経営を行うことが大事です。

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透析診療に必要な専用設備と約20ベッドごとに看護師と臨床工学技士をあわせて3~4名の配置を基準とすると、透析ベッド数20もしくは40の透析専門クリニックが望ましいと言えます。
さらに市場に合わせた戦略策定とマーケティングが不可欠です。地域の特性および既存の透析診療の現状分析を行い、退職後の高齢者を対象とするのか、現役世代を対象とするかによって、今後の患者ニーズに合わせた戦略を立てます。
そしてターゲット患者を獲得するために必要なのが戦略に合わせたマーケティングです。地域の患者の紹介を受けるための地域中核病院や糖尿病・腎臓内科との連携と透析専門医としても医療情報の提供、高齢者を対象とするならば、介護施設やケアマネージャーとの協力体制も必須です。
成功クリニックの多くでは、地域のターゲット患者を明確にした戦略を立てた上で、患者の求める付加価値の高いサービスを提供しています。それをHPやSNS、患者向けニュースレターなどで伝える積極的なマーケティングを実施しています。

5.まとめ

新型コロナで日本中が混乱する中、透析患者は通院を続けなければ命の維持ができません。安心・安全で通院するための感染対策や診療内容・通院時間の変更などの情報提供の方法など、透析クリニックの通院先を見直す患者も多いのではないでしょうか?
最近、医療機関のM&Aでも、透析クリニックの案件が出ています。
新しい生命・生活を維持するだけの透析から、電動ベッドやWi-Fi設置で透析時間を有効利用し、学びや趣味を深めるなど患者に新たな価値提供をおこなうクリニックもあります。一定の患者数があるからといって、従来の診療体制のままのM&Aでは既存の患者も流出するかもしれません。
あらためて透析クリニックとしてどうあるべきなのか、地域の特性と透析医としてのあり方を考え、開業戦略を立てることをおすすめします。

筆者プロフィール

中小企業診断士/医業経営コンサルタント

奥野 美代子(おくの みよこ)

外資系ブランド27年の実績をもとにした「魅力発信ブランディング」コーチングで院長のビジョン実現とスタッフ育成を行い、採用・集患に悩むことなく地域から選ばれる開業医の魅力発信・ブランディングを支援します