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クリニック開業 医師 事務長 2025.12.08 公開

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開業前に知るべき開業医のメリット・リスクを解説

勤務医として働く中で「このまま病院勤務を続けるべきか、それとも開業すべきか」と、ライフステージの変化に直面している先生は多いのではないでしょうか。開業医にはメリットもあれば、乗り越えなければならないリスクもあります。そこで本記事では、開業医のメリットと3つのリスク、そしてリスクを最小限におさえる具体的な方法を解説します。現実的な情報をもとに、開業という選択肢がご自身に合っているか判断できるようになるでしょう。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討

目次

開業医のメリット

開業医になるメリットは多岐にわたります。勤務医として経験を積んだ医師が開業を検討する際、具体的なメリットの中身を把握できれば、開業がご自身のキャリアにもたらす影響をイメージしやすくなります。

開業医のメリット

自分が理想とする医療を追求できる

開業医へ移行する最大のメリットは、自分の理想に向けた医療を提供できる点です。勤務医として働く場合、病院の方針や診療科の慣習、上級医や教授からの指示などに従った診療が通例です。その点、開業医は自分でルールを作る立場となるため、診療スタイルを自由に選択できます。

診療時間の設定・診療科目の選択・検査機器の導入・スタッフの採用基準など、クリニック運営に関わるすべての決定は院長先生ご自身の判断です。

また、患者さんとの関係性においても、勤務医時代とは異なるつながりを築けます。継続的な診療を通じて患者さんの生活背景や価値観を理解し、それぞれに合わせた医療を提供できる点は、医師としてのやりがいにもつながるでしょう。

ワークライフバランスを実現できる

開業医は診療時間や休診日を自分で決められるため、やり方を工夫すればプライベートの時間を確保しやすくなります。勤務医は当直や緊急対応、病院の都合による勤務シフトなどで、家族との時間や趣味の時間を確保しにくいケースもあるでしょう。

開業医として独立すれば、午前診療のみや週の中日に休診日を設定する、完全予約制にして診療時間を管理するなど、ライフスタイルに合わせた運営が可能です。

ワークライフバランスが整えばプライベートが充実するだけでなく仕事への意欲も高まり、好循環が生まれます。心身の健康な状態を保てば、患者さんに対してより質の高い医療を提供できるでしょう。

収入アップが見込める

開業医になれば、勤務医の時よりも高収入を望めます。厚生労働省「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)」によると、個人開業医の平均年収は約2,636万円です。一方、一般病院の勤務医の平均年収は約1,461万円であり、開業医は勤務医の約1.8倍の年収を得ています。

出典:厚生労働省「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/dl/24_houkoku_iryoukikan.pdf)

ただし、数字は開業医としての「収入」であり、実際に手元に残る「所得」とは異なる点には注意が必要です。

開業医にまつわる3つのリスク

開業医を志すにあたり、メリットだけでなくリスクについても理解しておく必要があります。ここからは資金面・人材面・運営面の3つの観点から、開業医が直面する可能性のあるリスクについて解説します。

資金に関するリスク

1つ目のリスクは、資金に関するものです。資金マネジメントが適切にできなければ、資金繰りが悪化し、経営継続が困難になる可能性があります。

近年の物価高騰に伴い、開業資金は増加傾向です。テナント契約費用や建物・内部造作、医療機器・備品など、開業資金全体で1億円程度かかるケースも多くあります。

このうち、自己資金として2,000万円程度を準備できると理想的です。残りは金融機関からの融資で賄いますが、現実的な返済計画を立てておかないと、後々の経営を圧迫する要因となります。

とくにクリニック開業では、最初の2年間をどう乗り越えるかがカギとなります。開業直後は患者数が安定せず、収入が見込みを下回るケースもあるためです。一方で、スタッフの給与や賃料、医療機器のリース料などの固定費は毎月発生します。この期間を乗り切るための運転資金を十分に確保しておけば、リスクを回避できるでしょう。

人材採用・育成に関するリスク

クリニック経営において、スタッフマネジメントは極めて大切です。スタッフマネジメントが十分でないと日々の診療がまわらなくなり、最悪の場合、クリニックの運営継続が困難になってしまいます。

クリニック運営が始まると看護師や医療事務など、さまざまな職種のスタッフが協力して業務を遂行します。スタッフ間のコミュニケーション不足が生じたり、役割分担が不明確だったりすると、業務効率の低下から患者サービスの質も下がってしまうでしょう。

また、労務管理が適切でない場合、以下のようなトラブルに発展する恐れがあります。

  • 未払残業代請求
  • ハラスメント問題
  • 不当解雇による訴訟
  • 採用時のトラブル
  • 退職に関するトラブル

昨今の賃上げ傾向により、多くのクリニックではスタッフ1人あたりの人件費は増加しており、従来のマネジメントを見直し、改善する必要性が増しています。適正な人件費比率を保ちながら必要な人員を確保し、スタッフの満足度を高めるマネジメント能力は開業医に求められるスキルです。

運営管理に関するリスク

医療業界を取り巻く環境は常に変化しており、人口減少や医療機関の増加により競争が激化する中で、適切な経営戦略がなければ運営が難しくなります。

とくに近年は、医療DX令和ビジョン2030に代表されるように、医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)による業務効率化が必須ともいえる状況です。オンライン診療の導入・電子カルテの活用・データ分析による経営改善など、ITを活用した運営が求められています。

従来の正攻法が通じにくくなっている現状では、地域における強みの明確化や柔軟な経営戦略が欠かせません。

これからのクリニック開業戦略について、詳しく解説したセミナー動画をご用意しています。いつでも視聴いただけるため、隙間時間にご活用ください。

セミナーの視聴はこちらから:令和8年度診療報酬改定から読む!クリニックの開業・運営戦略

開業医のリスクを減らすためのポイント

開業医として成功するには、リスクを最小限におさえる戦略が必要です。ここでは、リスクを軽減するための具体的な3つのポイントについて解説します。

最小限のスケールで開業する(ミニマム開業)

近年、注目を集めているのが「ミニマム開業」です。初期投資を最小限におさえ、小規模からスタートする開業スタイルを指します。

ミニマム開業のメリットは、費用をおさえて開業できる心理的ハードルの低さです。開業資金が少なければ、金融機関からの融資額も少なくて済み、毎月の返済負担が軽減されます。また、金融機関は返済能力を重視するため、借入額が少ない方が審査に通りやすい利点もあります。

ミニマム開業のポイントは、以下の3点です。

  • 徹底したコスト管理:必要最小限の医療機器からはじめ、患者数の増加に応じて段階的に設備を拡充
  • 効果的な集患施策:初期投資をおさえた分、Webマーケティングや地域へのPR活動に予算を配分し、確実に患者さんを集める工夫が必要
  • DX化の推進:電子カルテやオンライン予約システムなど、ITツールを活用すれば、少ないスタッフでも効率的に業務を回せる体制を構築できる

ミニマム開業についてより詳しく解説した資料をご用意しています。無料でダウンロードできるため、手元資料としてご活用ください。

ダウンロードはこちらから:ミニマム開業を成功に導く3つのポイント

専門性を訴求する

開業を1日でも早く軌道に乗せるには、来院された患者さんが安心して通院できるように、専門性をわかりやすく伝える工夫が必要です。

具体例は以下のとおりです。

  • 専門性を活用したスポーツ外来の提供
  • 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠外来の提供

なお、ホームページやSNSを活用した情報発信も欠かせません。専門分野に関する有益な情報を定期的に発信すれば、地域における専門家としての認知度を高められます。ただし、医療広告ガイドラインに違反しないよう、適切な表現を心がける必要があります。

専門性訴求の土台となる集患対策については、以下のページも参考になさってください。

【軌道に乗せる近道】クリニックの集患に効果的な施策7選を解説

診療内容の構成を工夫する

保険診療だけでは、患者数や受診する患者さんの特性に依存する可能性が高くなります。自費診療を組み入れて資金マネジメントを容易にする工夫により、開業初期のリスクを軽減できます。

たとえば、予防接種や健康診断などの自費診療メニューを設ければ、収入源の多様化が可能です。

ただし、自費診療を導入する際は、患者さんへの丁寧な説明が不可欠です。保険診療と自費診療の違い、それぞれのメリット・デメリット、費用について明確に説明し、患者さんが納得したうえで選択できる環境を整える必要があります。

専門性と地域のニーズを考慮しながら、最適な診療構成を検討しましょう。

開業医の年収は勤務医と考え方が異なる

一般的に開業医の年収は勤務医より高い傾向にありますが、税金や社会保険料の負担、実質的な労働時間を考慮する必要があります。

開業医・勤務医ともに年収から税金が引かれますが、年収が上がるほど税率も高くなるため、開業医の方が所得税・住民税の負担額は大きくなります。また、社会保険料についても年収が高いほど国民健康保険が上がり、勤務先で加入している保険(協会けんぽなど)との差は大きくなるでしょう。

さらに、開業医には税理士への申告依頼費用など、勤務医にはない追加費用がかかる場合もあります。

経営や日々の運営、マーケティング戦略も含めると、時給換算では開業医の方が低くなる可能性は十分考えられます。年収の数字だけでなく、税負担や実質的な労働時間、ワークライフバランスなどから判断するとよいでしょう。

まとめ

開業医になるのは、医師としてのキャリアにおいて大きな転機となる決断です。理想とする医療を追求できるほか、ワークライフバランスの実現や収入アップが見込める点は、開業医ならではのメリットです。

一方で、資金面・人材面・運営面でのリスクに向き合う必要があります。とくに開業初期は、患者数が安定しない厳しい時期を乗り越えなければなりません。

開業を検討されている先生方には、メリットとリスクの両面を十分に理解したうえで、計画的に進行することをおすすめします。もし、不安な点や疑問点があれば、お気軽にご相談ください。開業支援の専門スタッフが全面的にサポートいたします。

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著者情報

武田 直也 様

フリーランスWebライター。18年間、医療事務として合計3つの医療機関に従事。診療報酬をはじめ、診療情報管理士の資格を活かしたカルテ監査やDPCデータ分析、クリニカルパスなどの医療情報利活用に精通している。

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