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目次
医師国保とは
医師国保とは、医師会に所属する医師が加入できる健康保険「医師国民健康保険組合」の略称です。ここでは、組合ごとに規定されている主要項目について解説します。

運営組織
医師国保は国民健康保険法に基づき、各都道府県の医師会が運営しています。加入要件や保険料は都道府県ごとさまざまです。参考にする情報とご自身のエリアを管轄している医師会の情報が一致しているか、ホームページ等で目を通して確認しましょう。
加入要件
医師国保は世帯単位での加入が原則です。加入者の種別は以下のように分かれています。
- 第1種組合員:医師会会員の医師本人
- 第2種組合員:雇用されている従業員
- 第3種組合員:75歳以上の医師
- 第4種組合員:第3種組合員の従業員
なお、75歳以降に新規加入はできませんが、75歳未満の時点で加入していた場合は継続が可能です。
保険料
医師国保の保険料は加入する地区によって異なります。ここでは東京都医師国民健康保険組合の保険料(令和6年4月から)を例として提示します。
【医療保険料(月額)】
- 第1種組合員(医師本人):39,500円
- 第2種組合員(従業員):18,500円
- 家族(40歳未満または65歳以上):12,500円
- 家族(40歳未満):9,500円
なお、40歳から64歳の方は医療保険料に加えて介護保険料(月額6,000円)が加算されます。保険料は所得割や日割り計算がなく、種別による均等割で設定されています。
出典:東京都医師国民健康保険組合「保険料について」(https://www.tokyo-ishikokuho.or.jp/kanyu/hokenryou.html)
厚生年金との関係性
医師国保に加入する場合でも、一定の条件を満たすと厚生年金への加入が義務となります。具体的には、従業員数が5名以上の場合や法人化した場合が該当します。
厚生年金の保険料は、標準報酬月額(月々の報酬額を等級で区分した額)に保険料率を乗じて算出した額です。医師国保の保険料とは別に負担する形となるため、事前に具体的な負担額をシミュレーションしておく必要があります。
なお、医療法人を設立した場合の健康保険については、別途詳しく解説した記事がありますので、そちらも参考になさってください。
参考記事:医療法人とは?医療法人を設立するときの健康保険を詳しく解説
国民健康保険や社会保険との違い
医師国保と国民健康保険(国保)、社会保険(健康保険)には、それぞれ異なる特徴があります。
国保は一般的な自営業者が加入する保険であり、健康保険は会社員などの事業所に雇用されている労働者が加入する保険です。
よって、開業医であっても従業員が5人以上の場合や法人化した場合は、協会けんぽなどの健康保険への移行が義務付けられています。一方、従業員が5人未満の開業医であれば必ずしも医師国保に加入する必要はなく、通常の国保も選択肢に含まれます。
医師国保と国保・社会保険での違いをまとめました。
| 項目 | 医師国保 | 国保 | 社会保険 |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 所得によらず定額 | 所得に比例 | 所得に比例 |
| 扶養者の保険料 | 個別に負担が必要 | 個別に負担が必要 | 個別の負担は不要 |
保険料の算出方法や扶養家族の扱い、自家診療の保険請求可否など各保険での違いを踏まえて最適な保険を選択するとよいでしょう。
医師国保加入によるメリット
医師国保に加入することで得られる主なメリット3点を解説します。
収入増加に伴う保険料の変動がない
高い収入が確保できる医師にとって医師国保の保険料は割安と感じられるでしょう。
以下は、年収別の保険料シミュレーション(独身・40歳の場合)です。
| 年収 | 医師国保 | 国保(概算) | 社会保険(概算) |
|---|---|---|---|
| 1,000 万円 | 45,500 円/月 | 約 86,000 円/月 | 約 47,700 円/月 |
| 1,500 万円 | 45,500 円/月 | 約 91,000 円/月 | 約 73,000 円/月 |
| 2,000 万円 | 45,500 円/月 | 約 91,000 円/月 | 約 79,900 円/月 |
※医師国保は東京都の第1種組合員(医療保険料39,500円+介護保険料6,000円)の金額です。国保の金額は令和7年度の東京都新宿区、給与収入のみで算出した概算です。社会保険は令和7年度協会けんぽ(東京都)の本人負担分(折半額)の概算です。詳細は自治体により異なるため、お住いの地域で確認なさってください。
出典:東京都医師国民健康保険組合「保険料について」(https://www.tokyo-ishikokuho.or.jp/kanyu/hokenryou.html)
出典:新宿区「保険料の計算方法について最終更新日:2025年4月1日」(https://www.city.shinjuku.lg.jp/hoken/hoken01_001028.html)
出典:全国健康保険協会「令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r7/ippan/13tokyo.pdf)
医師国保は開業後に診療報酬が増加しても保険料は変わらないため、収支計画を立てやすく、経営の安定性が高まります。とくに年収1,500万円以上になると、国保や社会保険と比較して、定額制のメリットを大きく享受できるでしょう。
事業者側の負担が少ない
健康保険では事業者が従業員の保険料を折半しますが、医師国保では従業員の保険料を事業者が負担する義務はありません。そのため、人件費負担の抑制が期待できます。
従業員の採用面でプラスに働く可能性がある
医師国保の保険料は従業員側にとっても、収入が高い場合は国保や健康保険より割安になる可能性があります。求人募集時のアピールポイントとして、優秀な人材の確保につながるケースもあるでしょう。
加入前に確認しておきたいデメリット
医師国保には以下のようなデメリットもあります。加入を検討する際は、これらの点も十分に考慮する必要があります。
収入が減少しても保険料は変わらない
保険料が収入に関係なく一定であることは、収入が高い場合はメリットとなりますが、クリニックの経営難などによって収入が減った場合は保険料が割高になる可能性があります。
とくに開業初期で患者数が安定しない時期や、診療圏の変化により収入面でリスクがある場合は、シミュレーションしたうえで加入を判断しましょう。
世帯人数が増えると保険料も増える
医師国保は世帯単位での加入が原則で、扶養家族ごとに保険料が発生します。健康保険では扶養家族の保険料が免除されるのに対し、医師国保では扶養家族が増えるほど保険料の負担が大きくなります。
たとえば、配偶者と子供2人を扶養している場合、家族分だけで月額3万円以上の保険料を負担する計算です。家族構成によっては、他の保険を選択した方が経済的に有利な場合もあります。
優秀な人材を採用できる機会損失の可能性がある
医師国保は従業員の保険料を事業者が折半しないため、見かけ上は事業者の負担が少なくなります。また、収入が高い方であれば保険料が割安になるメリットもあります。しかし、スタッフ側からすると、保険料の全額を自己負担する必要があるため、健康保険に加入できる職場と比較して待遇面で不利になる可能性はゼロではありません。よって、給与水準や福利厚生の部分で魅力的に感じてもらえる工夫が必要です。
自家診療分の保険請求ができない
医師国保では、自身が勤務する医療機関での診療(自家診療)について保険請求ができません。国保や健康保険では自家診療も保険適用となりますが、医師国保では自費扱いです。
よって、スタッフや家族が体調を崩した際は、他の医療機関を受診する必要があります。
保険内容確認後の手続き
医師国保への加入を決めた場合、加入者の種別によって必要な書類が異なります。ここでは、東京都医師国民健康保険組合の例を参考に、加入手続きの流れを紹介します。なお、開業に関する全体像を確認したい場合は、以下の記事で詳しく解説していますので参考になさってください。
参考記事:クリニック開業の全体像を解説!失敗と成功を分ける5つのポイント
医師本人が加入する場合(第1種)
医師本人が第1種組合員として加入する場合、以下の書類を用意し、組合へ提出します。
- 加入申込書
- マイナンバー記載の住民票
- 預金口座振替依頼書
- 医師国保に加入しない家族がいる場合は保険証のコピー
- マイナンバーが確認できる書類のコピー
- 身元確認証のコピー
- 医療業務に従事していることがわかる証明書
従業員が加入する場合(第2種)
従業員が第2種組合員として加入する場合、以下の書類を用意し組合へ提出します。
- 加入申込書
- マイナンバー記載の住民票
- 医師国保に加入しない家族がいる場合は保険証のコピー
- マイナンバーが確認できる書類のコピー
- 雇用証明書
世帯家族が加入する場合
世帯家族が加入する場合、以下の書類を用意し、組合へ提出します。
- 加入申込書
- マイナンバー記載の住民票
- 資格喪失証明書
医師国保が向いているケース・向いていないケース
医師国保への加入を検討する際は、ご自分の状況と以下の基準を参考になさってください。
医師国保が向いているケース
以下の条件に当てはまる場合、医師国保への加入でメリットを得られる可能性が高くなります。
- 年収1,500万円以上の見込みがある
- 独身または扶養家族が1人以下
- 開業初期から安定収入が見込める
- 従業員数が5人未満の個人開業
- 地域の医師会に加入する予定がある
慎重な検討が必要なケース
以下の条件に当てはまる場合、医師国保と他の保険を詳細に比較する必要があります。
- 年収1,000~1,500万円程度
- 扶養家族が2~3人いる
- 開業後の収入変動が予測しにくい
- 将来的に法人化を検討している
医師国保が向いていないケース
以下の条件に当てはまる場合、国民健康保険や健康保険の方が有利になる可能性が高くなります。
- 扶養家族が4人以上いる
- 年収1,000万円未満の見込み
- 従業員数が5人以上
- 医療法人での開業を予定している
- 医師会に加入する予定がない
まとめ
医師国保は、医師会に所属する医師が加入できる健康保険制度です。保険料が収入に関わらず一定であるため、高収入な医師にとっては経済的なメリットが大きい一方、扶養家族が多い場合や収入が不安定な時期には負担が重くなるかもしれません。
まずは、年収と将来的な家族構成を踏まえて、管轄医師会のホームページで、最新の保険料や加入条件を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
なお、保険選択を含む開業準備全般について、専門家への相談をお考えの方は、ウィーメックスまでお気軽にご相談ください。開業計画の立案から資金調達、医療機器の選定まで、トータルでサポートいたします。
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