県下の先端医療のコアとして、細胞治療の拠点活動をめざす最新設備のセルフプロセッシングセンター
信州大学医学部付属病院 先端細胞治療センター
副センター長 輸血部副部長 下平 滋隆 氏
この度開所した、信州大学医学部付属病院 先端細胞治療センターは、現在の最新の施設設計と、最新の機器を導入したCPCセンターです。
この施設の概要と今後どのように活動するのか、副センター長の下平氏にお話しをうかがいました。
先端細胞治療センターは、附属病院でどのような位置づけにあるのでしょう
信州大学医学部附属病院の先端医療推進センターという組織の中の研究開発部門を担う中核センターです。基礎研究や臨床研究を含め他の教育研究機関へのシーズ(研究成果)の開発支援を行います。治療分野で見れば、病院の各診療科に対応する体制をとっています。非常に横断的な組織です。一方、大学外に対しての位置づけとしては、地域医療に根ざした附属病院としての性格があります。長野県は公立の医科大学が信州大学一校のみで、その附属病院としての役割は地域医療に大きな存在意義をもっています。この先端細胞治療センターも県下における先端医療のコアとしての活動が期待されているわけです。
この度先端細胞治療センターを開所されましたが、これが細胞治療のスタートですか。
以前からずっと細胞治療自体は行ってきています。例えば、軟骨細胞の移植などですが、培養の工程を本院と関連のある公的機関に依頼していました。このセンターが完成したことで培養の全てを病院内でできるようになったわけです。無菌管理や移動時間、検体の保存などを考えると非常に有効な施設だといえるでしょう。さらに様々な細胞調剤についても自在に設備を利用することができ、技術も蓄積できますので新たな開発にも役立つことと思います。
細胞治療の種類はどういったものになるのでしょうか。
軟骨細胞の移植の例のようにすでに実績のある細胞治療を始めとして、各診療科から様々なプロジェクトが計画されています。当センターが横断的な存在ですので様々な種類の治療が始まると思います。また、この施設は、どのような目的にも使える先端的な最新設備ですから、要求にも応えていけると思います。
このCPCでは何が特長となっていますか。
まず、最新の施設設計ということですね。CPCは造られるたびに以前の改良を重ねて良くなっていくのですが、現時点で最良のものといっていいと思います。先ほど京大の前川先生に見ていただいたのですが「(いままでのものと比較すると)ずいぶん良くなりましたね」というご感想をいただいてます。
次に、アイソレータです。この装置を設置しているアイソレータ室のクリーン度はグレードC(クラス100,000)で済みます。アイソレータの内部はもちろんグレードAです。人と直接触れあうことがないので理想的な無菌管理が可能ですし、強力な滅菌システムのおかげでドナー間でのコンタミも防げます。ワンドナー・ワンチャンバーな環境を低い経費で実現できるのも魅力です。この装置を活用して、日常診療についても品質保証された細胞療法の支援が実現できます。
また、全国で初の試みとなる自動培養装置を導入しました。プログラム入力された工程を自動制御により一定の品質で多量培養が可能です。
交差汚染の防止に対しては人の動線を一方通行とし、資材・検体の動線は人とは別の経路としています。グレードBのクリーンルームが2室、グレードCのアイソレータ室と自動培養装置室、細胞調製室は陰圧に切り換えることができ遺伝子治療に対応できます。
CPC管理室は、CPCの環境や工程の監視などを集中的にPCでモニタリングすることができ、品質管理記録を保存するなどCPC全体が統括できます。
今回の三洋バイオメディカの仕事についてはどう感じられましたか。
いままでに数多くのCPCを手がけられているのでそのノウハウが豊富で施設設計は安心できます。CPCの場合、施設や装備も大切なファクターですがそれ以上にGMPのドキュメント作成が大変なんです。これも三洋さんのご支援を期待しています。
これからの計画などは
最終的な認可がもうすぐ下りる予定ですのでそれを受けて直ちに稼動に入ります。国の予算ではなく我々自身の予算を大きく費やし充実した設備を造ったのですから、早く成果をあげたいと思っています。
国内屈指といわれるCPC設備。最新のプランニングで構成され、最新鋭の機器が並ぶ。