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withコロナ時代の資金調達のイロハ

withコロナ時代の資金調達のイロハ

 クリニックや薬局の開業や経営にあたって、大きな課題となるのが資金調達です。特に開業には多額の資金が必要となり、自己資金のみで対応できることはごくまれであるのが実際です。さらに昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、融資をめぐる状況にも変化が生じています。いま開業などで融資を考えている方は、特にどのようなポイントに注意しながら資金調達を進めていくべきなのでしょうか。
 弊社は先日、群馬銀行の五十嵐 真一氏を講師にお迎えし、クリニック・薬局への開業融資を中心に、銀行が着目するポイントやコロナ禍での注意点などをテーマとするセミナーを開催しました。本稿では、その内容をご紹介します。
[セミナー日時:2021年1月16日(土)※Web会議ツール(Zoom)での配信]

クリニック・薬局の開業で銀行が着目するポイントとは

 クリニックや薬局から開業融資の相談を受けた際、銀行がまず注目するのはどのようなポイントでしょうか。五十嵐氏によれば、それはクリニック・薬局の開業地であると言います。開業する場所は、駅や商業施設に近い、あるいは住宅密集地にあるなど、患者さんを呼び込む動線を確保できる立地となっているでしょうか。また、診療圏内の競合クリニック・薬局の状況も重視すると言います。近隣に大きな収益をあげるクリニック・薬局がある場合などは特に、どのようにして自院の優位性を確立するかというシナリオがしっかりと練られていることが大切です。
 続いてポイントとなるのがクリニック・薬局の保有形態です。一般的に、戸建てはテナントと比べて、土地代が収支を圧迫するリスクが高まります。テナントの場合も、収益予測に見合わないほどに高額な賃料の物件を選択していないかチェックされます。
 この2つから、まず銀行はクリニック・薬局のおおまかな収支の見立てやクリニック・薬局の戦略、コンセプトなどを見ているというわけです。いかに集患して収益をあげるつもりか、土地代・賃料などはその収益とバランスが取れたものか、しっかりと検討したうえで、開業地や保有形態を決定することが大切です。

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融資審査で最重要視される事業計画

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 こうしたポイントの確認に続いて、事業計画の検証が進められることになります。融資審査においては、やはり事業計画が最重要であると五十嵐氏は語ります。事業計画の2本柱は、資金計画と収支計画です。はじめに、資金計画のポイントから確認していきましょう。

 資金計画ではまず、必要となる運転資金(人件費、賃料など)を検討します。一般的には半年~1年程度の支払いの合計額を開業時に調達しておくことが望ましいとされ、開業地や診療科目等によって目安額は異なりますが、内科の場合は一般的に2000万円~3000万円程度とされています。これに、物件の内装費、機器代金、工事費等を足して、調達すべき金額を算出します。開業後に想定よりも運転資金がかかったため再度借り入れたい、というケースも見られますが、このような要望に対して銀行は非常に慎重に対応することがほとんどです。借入額は、十分な検証に基づき算出しましょう。
 次に、この金額をどのように調達すべきか、資金調達計画を策定します。金融機関からの借入を検討する前に、まず用意できる自己資金を明らかにします。自己資金をほとんど持たないままの開業は不安視され、融資の審査も厳しくなることがあるため、開業までに計画的に自己資金を用意することが大切です。また、親族等からの贈与、出資、借入といった手段も選択肢となります。それでも不足する金額について、金融機関からの借入(ローン)を検討しましょう。ただし借入額が多すぎる場合には、金融機関が融資に慎重な姿勢を示すことがあります。借入額の妥当性を改めて確認するとともに、自己資金や親族からの借入の増額について再度検討が必要となるかもしれません。なお、金融機関からの借入は、銀行や信用金庫等からの信用貸付のほかにも選択肢があります。開業時に広く利用されているのが、日本政策金融公庫の公的融資制度です。また、信用保証協会や市区町村の助成金といった制度融資のほか、ノンバンク融資という選択肢もあります。それぞれ、借入期間や金利、担保や保証人といった条件が異なりますので、よく確認のうえ借入を行うことが大切です。また、借入額が大きい場合などには、これらの複数の選択肢を組み合わせた協調融資を提案されることもあります。

 必要資金とその調達方法が決まったら、次は収支計画を立てていきます。収支計画では、収入と支出の目標数値を算出します。収入の見積もりにあたり重要な根拠となるのが、「1か月あたりの営業日数」、「1日あたりの患者数」、「患者あたりの診療単価」の3点です。特に患者数については、どのように集患を行うのか、しっかりと戦略を立てておくことが必要です。銀行等も重視するポイントですので、説得力のあるプランを立案しましょう。一方、支出のうちで大きな割合を占めるのが人件費です。人件費を適正化するためには、配置する職員数が過剰にならないよう注意する必要があります。融資審査にあたっても、職員数の妥当性はチェックされることの多い項目です。事業運営にあたり必要最低限の職員配置となっているか、しっかりと確認しましょう。収支計画のもう1つのポイントは、医療事業だけではなく、開業する医師・薬剤師(経営者)とその家族を含む生活費をまかなえる内容となっていることです。経営者の生活基盤を守ることができて初めて、その事業計画の安定性・信頼性が確かなものになります。「収入から支出を引いて、残った金額で生活する」という考えで事業計画を立ててしまうケースもまま見られますが、こうした不安定な事業計画では銀行などの金融機関が融資に慎重になってしまう可能性もあるのです。

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