目次
在宅医療DX情報活用加算の概要
在宅医療DX情報活用加算は、在宅医療でのICT活用や、オンライン資格確認等の医療DXに関する体制を評価する診療報酬点数です。2024年度の診療報酬改定で新設され、2025年4月には施設基準の見直し、10月には経過措置期間が延長されました。
本加算の目的は、在宅医療の質向上とデジタル技術の活用促進にあります。オンライン資格確認で取得した患者さんの情報を訪問診療の計画作成に活用すれば、より適切な医療提供に役立ちます。
なお、類似する点数に「医療DX推進体制整備加算」がありますが、医療機関全体のDX体制整備に対する加算です。詳細は以下の記事で解説しているため、算定の参考としてご活用ください。

関連記事:【2025年10月~】医療DX推進体制整備加算のポイントを解説!
在宅医療DX情報活用加算の施設基準
在宅医療DX情報活用加算には、加算1と加算2があります。それぞれの施設基準をご確認ください。
加算1
加算1の施設基準の要旨は、以下の7つです。
- オンライン請求を行っている
- オンライン資格確認の体制を有する
- 居宅同意取得型のシステムで診療情報等を取得・活用できる体制がある
- 電子処方箋管理サービスに処方情報を登録できる
- 院外処方では電子処方箋または引換番号印字の処方箋を発行できる
- 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制がある(経過措置:2026年5月31日まで)
- 体制や取り組みを院内とウェブサイトに掲示している
出典:厚生労働省「医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについてP3・P6」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001521280.pdf)
加算2
加算2の施設基準は、加算1の要件から電子処方箋に係る事項を除いたものです。要旨は以下のとおりです。
- オンライン請求を行っている
- オンライン資格確認の体制を有する
- 居宅同意取得型のシステムで診療情報等を取得・活用できる体制がある
- 院外処方では電子処方箋または引換番号印字の処方箋を発行できる
- 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制がある(経過措置:2026年5月31日まで)
- 体制や取り組みを院内とウェブサイトに掲示している
出典:厚生労働省「医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについてP3・P6」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001521280.pdf)
電子処方箋への対応が難しい医療機関でも、加算2であれば算定できる可能性があります。
在宅医療DX情報活用加算の算定要件
在宅医療DX情報活用加算は、以下の診療料を算定する患者さんに対して、月に1回を限度に算定できます。なお、初回訪問の場合は、あらかじめオンライン資格確認で取得した診療情報を活用した、訪問診療計画の作成が必要です。
【算定対象となる診療料】
- 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の1・2
- 在宅患者訪問診療料(Ⅱ)
- 在宅がん医療総合診療料
【加算点数】
- 加算1:11点(月1回)
- 加算2:9点(月1回)
ただし、以下の加算を同月に算定している場合は、在宅医療DX情報活用加算は算定が認められません。
【併算定できない加算】
- 医療情報取得加算
- 医療DX推進体制整備加算
- 訪問看護医療DX情報活用加算
出典:厚生労働省「医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについてP3・P6」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001521280.pdf)
算定するために必要な5つの準備
在宅医療DX情報活用加算を算定するには、合計5つの準備が必要です。とくに、システムに関連する内容は時間を要するため、早めの対応が欠かせません。
1.オンライン資格確認への対応
オンライン資格確認は、患者情報が集約・管理される仕組みです。マイナンバーカードを用いて、患者さんの診療情報や薬剤情報を取得できます。
導入には、顔認証付きカードリーダーの提供や、システムベンダー(現在利用しているレセプトコンピュータ等の業者)の現地作業が含まれます。手配には期間を要するため、計画的に動きましょう。
具体的な導入方法や対応機器については、以下のページも参考になさってください。
オンライン資格確認 医療機関・薬局向け顔認証付きカードリーダー
2.電子処方箋への対応
電子処方箋は、従来の紙の処方箋を電子化し、医療機関から院外の保険薬局へ処方情報を送信するシステムです。加算1を算定する場合は、電子処方箋管理サービスへの対応が必須です。
電子処方箋の詳細な導入手順については、「電子処方箋導入マニュアル」を用意しているため、手元資料としてご活用ください。
資料の無料ダウンロードはこちらから:【クリニック向け】電子処方箋導入マニュアル
3.電子カルテ情報共有サービスへの対応
電子カルテ情報共有サービスは、患者さんの診療情報を医療機関間で安全に共有できるシステムです。当初は2025年9月30日まで経過措置期間とされていましたが、2025年10月の見直しにより、経過措置期間が2026年5月31日まで延長されました。
経過措置期間中は、体制整備を進めている段階でも算定が認められます。経過措置期間の終了が迫ると同じ状況の医療機関が一斉に動き、対応が遅れてしまうかもしれません。後手に回らないためにも計画的に準備を進めましょう。
電子カルテ情報共有サービスに関してより詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考になさってください。
電子カルテ情報共有サービスによるクリニックへのメリットを解説
4.院内・ホームページへの掲載(掲載例あり)
施設基準を満たすためには、院内とホームページへの掲示が求められます。院内掲示は、厚生労働省が公表しているポスターを活用すると手軽です。
出典:厚生労働省「とっても簡単!マイナンバーカード在宅医療版」(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001262528.pdf)
一方ホームページには、以下のように施設基準を満たした内容を掲載しましょう。
【掲載例】
当院では、オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を活用し、質の高い在宅医療を提供しています。
■ オンライン資格確認の活用
・居宅同意取得型のシステムを導入
・訪問診療の計画作成時に患者様の情報を確認
・適切な医療提供に努める
■ 電子処方箋への対応
・電子処方箋管理サービスに処方情報を登録
・院外処方では電子処方箋または引換番号印字の処方箋を発行
■ 電子カルテ情報共有サービスの活用
・医療機関間での診療情報共有に対応
・患者様の同意のもと適切な情報連携を実施
5.届出様式の提出
準備が整ったら、様式11の6を漏れなく記載し、管轄の厚生局へ届出を行います。医療機関の状況によっては、届出の直しが求められる場合があります。厚生局の資料を確認し、正確に記載してください。

出典:厚生労働省「<周知資料>医療DX推進体制整備加算等の見直しについてP4」(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/070312_001.pdf)周知資料>
在宅医療DX情報活用加算に関してよくある質問
在宅医療DX情報活用加算について、よくある質問をまとめました。
「資格確認書」を用いた資格確認でも算定できる?
算定は認められません。在宅医療DX情報活用加算は、診療情報の取得が条件となっているため、マイナンバーカードを用いた資格確認が求められます。
資格確認書では診療情報や薬剤情報を取得できず、加算の要件を満たせないためです。患者さんにマイナンバーカードの持参を依頼する運用を検討するとよいでしょう。
訪問診療の都度、資格確認は必要?
必要です。算定要件には「電子資格確認等により得られる情報を踏まえて計画的な医学管理の下、訪問診療を行う」との記載があります。
保険証と同様の考え方で、訪問診療を行う際には毎回資格確認を行うと整理しやすくなるでしょう。
まとめ
在宅医療DX情報活用加算は、在宅医療における医療DXの推進を評価する加算です。算定には、オンライン資格確認や電子処方箋への対応、電子カルテ情報共有サービスの活用など、複数の準備が求められます。
とくに、システム導入には時間がかかるため、早めの準備開始が欠かせません。在宅医療の質向上と医療DXの推進に向けて、本記事を参考に準備を進めてください。
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