コラム:クリニック開業基礎
コラム クリニック開業ポイント

開業時に必要な資金はいくら?診療科目別に目安などを分かりやすく記載

  • クリニック開業基礎

1. 開業資金は一般的にいくらくらいか?

クリニックの開業を検討している方や決意した方が、まず気になることは開業資金ではないでしょうか?クリニックの開業資金の目安は一概には言えず、開業の形態や診療科によって大きく変わります。
一番影響が大きいのは、戸建てで開業するか、ビルのテナントとして開業するかです。戸建ての場合も土地を取得し建物を建てるのか、戸建て物件を定期借地もしくは賃貸契約で借りるのかで必要な資金は大きく変わります。
二番目に影響が大きいのは、どこで開業するかです。開業する地域によって土地や賃貸物件の取得価格は大きく変わります。また、地域の人口の変化の状況により、必要な医療ニーズも異なります。
そして、三番目に影響があるのは、診療科と診療内容です。診療科と提供する診療内容によって、必要な医療機器やスタッフ配置が変わります。
本記事では、開業するにあたって必要な開業資金について、具体的に解説します。

2. 開業医に必要な自己資金は?

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開業するためには、どのくらいの自己資金を用意すればいいのでしょうか?
開業形態により必要な開業資金がさまざまであるのと同様、必要な自己資金も一般的な決まりはありません。もちろん多く用意できればできるほど、金融機関からの借入額が少なくなるので、返済や利息支払いの負担が少なくなり、その後のクリニック経営は安定します。
一般的に開業にあたっては、開業資金の大部分を金融機関からの融資で賄うことになります。金融機関にとって大事なことは、「融資した金額を遅延なく返済してくれるか」です。融資担当者が重視するのは、自己資金の金額より事業計画の内容と経営者としての人格です。患者が集まるこの地域に必要な医療を提供するのか、経営者として信頼できる人物なのかということが重要になります。
どのくらいの自己資金があれば、融資が受けられるかについては、金融機関により異なります。クリニックに限らず一般的な開業融資では、開業資金の1割から2割の自己資金があることを融資の条件とする金融機関もあります。
クリニック開業の自己資金としては、できれば事業計画で出した開業資金の2割、最低でも1割を準備するとよいでしょう。
クリニックの開業時には比較的低金利で借りられる開業支援ローンを出している金融機関もありますので、都市銀行に限らず開業融資をする金融機関を探すことが大事です。

3. 一般的にかかる費用の項目

開業に必要となる費用にはさまざまな項目があります。例えば、金額が高めな項目としては内装費や医療機器費、低めな項目としては広告宣伝費や消耗品費などが挙げられます。
ここでは、一般的な内科クリニック(テナント開業)の場合に想定される開業費用について解説します。
ビルのテナントで開業する場合は、戸建てや医療モールよりも比較的物件取得費を抑えることができますが、地域によって敷金・保証金の条件はさまざまです。また、金融機関の融資は契約後でなければ申し込みできないので、賃貸借契約後、内装工事を始めるまでに時間がかかります。最近では契約後、家賃を払わなくてもいい1、2カ月のフリーレントの条件を受け入れてくれる場合もあるので、交渉してみると良いでしょう。
また、忘れてはいけないのは運転資金です。開業当初は十分な数の患者を獲得できないことが想定されますし、診察しても診療報酬の7割は診療後2カ月後の入金になります。しかし、それまでにかかった人件費や賃料などの固定費、医薬品などは先に払う必要があります。順調に患者が増え、医療収益が増加しても診療報酬の入金までの時差があるので、クリニック経営では開業初期だけでなく、常に必要な運転資金を手元資金として持っておく必要があります。

一般的な内科クリニック(テナント開業)の開業資金とその内訳を表にまとめました。もちろん条件等によって金額は変動しますが、このケースでの開業資金の合計額は、8,660万円となっています。

開業資金内訳 単位:万円
開業資金内訳 物件取得費
(賃貸費用)
560 1,敷金(保証金) 336 賃貸借契約に際し、賃料等の契約上の債務を担保するために預ける費用
月額賃料の6~12ヶ月
2.礼金・仲介手数料 112 礼金:賃貸借契約の謝礼として賃貸人に支払う(賃料の1~2ヶ月)
仲介手数料:不動産会社に支払う手数料(賃料の1ヶ月分)
3.前家賃 112 賃貸借契約から開業(内装工事等の準備期間)までの家賃
3ヶ月分程度(フリーレントで2ヶ月分無料もあり)
設備費 4,800 1.内装工事 2,400 内装工事・照明・空調・院内サイン工事など
坪単価60万円~ スケルトンの場合は+5万円程度
2.診療設備 2,000 超音波診断装置、内視鏡、心電図計など
3.什器備品 400 診察机、椅子、待合室ソファー、TV、BGM、休憩室家具、家電品、カーテンなど
開業準備費 900 1.OA機器/システム 200 パソコン、ソフト、通信機器のハードウェア
Web問診、予約、電子カルテなどの導入経費
2.医療消耗品 100 診療に必要な医薬品、消耗品など
3.採用費/研修費 100 スタッフの採用の募集広告作成、採用LP作成、人材紹介費用、接遇研修など
4.集患/広報費 200 開業時に制作する会員チラシ、リーフレット、ホームページ、看板などの費用
5.医師会他諸会費 200 医師会や地域団体の加入費用。金額は医師会や団体により異なる
6.その他備品費用 100 開業時の診察券等印刷物、筆記用具等の事務用品および予備費
運転資金 固定費6ヶ月 2,400 1.固定費:人件費 約6ヶ月分 運転資金:開業当初の売上が少ない時期でも人件費や固定費を支払う必要があり、その資金を準備しておく資金
2.固定費:賃料・共益費 賃料・共益費・駐車場
3.固定費:その他経費 リース料、借入返済
変動費6ヶ月 4.変動費 検査外注費、薬剤費、衛生材料費
合計 8,660

4.診療科目別に必要となる費用と、自己資金の目安

診療科目によっても開業時に必要となる費用は変わってきます。さまざまな条件によって金額は変動しますが、診療科目別に一般的な開業費・自己資金をまとめました。

診療科 開業費・自己資金 内訳 概算 備考
内科 開業費 5,000万~8,000万 テナント/工事 3,000万 消化器内科は、下部内視鏡検査をする場合、回復室やトイレが複数必要なため、50坪程度の広さが必要。上部・下部内視鏡の同日検査や土日検査など利便性に配慮すると差別化になる。
糖尿病内科はレントゲンなどの医療機器はなくてもよいが、管理栄養士の採用とカウンセリング室があるとよい。
設備 2,000万
その他 1,000万
運転資金 2,000万
自己資金 800~1,600万
皮膚科 開業費 4,000万~6,000万 テナント/工事 2,000万 保険診療がメインの場合、2診察室+1処置室で30坪程度でも開業可能。
自由診療のレーザー機器、美容系機器を導入する場合は、施術室・エステ室を設け、施術者も必要なため、開業費用は増える。
設備 500万
その他 800万
運転資金 1,500万
自己資金 600~1,200万
眼科 開業費 6,000万~7,500万 テナント/工事 3,000万 治療の範囲や対象患者の年齢によって、白内障手術やレーザー機器の導入など、立地条件、手術対応、設備機器の構成が大きく変わる。
眼科開業が増えているので、差別化のポイントを明確にする。
主な設備は、高精度モニター、眼圧計、視野計、眼底検査機器、視力検査機器など。
設備 1,500万
その他 1,000万
運転資金 2,000万
自己資金 900~1,800万
耳鼻咽喉科 開業費 6,000万~8,000万 テナント/工事 3,000万 待合室や検査コーナーが必要なので面積は広めが望ましい。
診療内容・手術により必要な医療機器は異なる。
防音室の代わりに、組み立て式の防音室の購入も可能。
主な設備は、X線撮影機器、ネブライザー、電子内視鏡システム、オージオメータ/聴力検査室など。
設備 2,000万
その他 1,000万
運転資金 2,000万
自己資金 800~1,600万
整形外科 開業費 6,000万~8,000万 テナント/工事 3,000万 リハビリ機器や運動機器の設備により、理学療法士の数や広さを考える必要がある。患者数が多いので待合室を広くとる、今後は、蜜を避け、予約システム、自動精算機など効率化が必要。
主な設置は、X線撮影装置、高精度モニター、施術台、リハビリ機器など。
設備 2,000万
その他 1,000万
運転資金 2,000万
自己資金 800~1,600万
精神科・
心療内科
開業費 1,500万~2,500万 テナント/工事 1,000万 広さも高額な医療機器も不要で開業資金が少なく開業可能。自己資金なしでも可。
立地も駅近でわかりやすければ裏通りやテナントの上階層でもいいので、賃料が抑えられる。
Web発信で集客するため、遠方からの通院も多くアクセスの良さを重視
設備 400万
その他 600万
運転資金 500万
自己資金 0~500万

診療科によって開業時に必要な金額に差が出るのは、主に診察室や設備機器を入れるための広さと診療に必要な医療設備によります。また、同じ皮膚科や眼科でも、保険診療を中心とするか、自由診療で高額な治療を提供するかによって設備も内装工事のグレードも変わります。
クリニックの開業準備を進める際は、基本的に、どこで誰を対象にどんな診療を提供するかという診療方針を最初に決めてから、必要なスペースに必要な医療機器と人材を配する事業計画を立てて実行します。将来の拡張を予定した広さの賃貸物件を契約することもありますが、広い物件は賃料だけでなく内装工事費も高くなります。光熱費や外部に清掃委託する清掃費も上がります。

どの診療科にも共通ですが、開業時の医療機器の導入では、次の2つの点で注意が必要です。
1つは、本当に必要かどうかを冷静に考えること。
大病院から独立開業する場合、それまで診療に使っていた医療機器を独立後のクリニックでも使いたいと思いがちです。しかし、本当に必要なのか、医師が自分で使うのか、それとも専任の医療従事者が必要なのか、よく考えましょう。最近では民間の画像センターが高度な画像検査機器を揃え、速やかに画像診断するサービスを提供しています。高額な医療機器を入れるために広いスペースを準備し、高い賃料、リース料と技師の人件費で経営が悪化してしまう例もあります。
もう1つは、競合との差別化として先進の医療機器を入れ、自院のウリとすること。
この場合は、積極的に自社の医療サービスとして外部に情報発信して、自院の診療以外の検査を受け、医療機器と技師の稼働率を上げ、収入の柱の1つとしましょう。

5. まとめ

クリニックの開業資金について解説しました。独立開業に向けて、人気の地域で最新の医療機器を備えた立派なクリニックを開きたいという考えは、多くの医師が持っていることです。しかし、開業することがゴールではありません。開業後に地域や患者から信頼を得ていくには、無理なく安定した経営を続けていくことが大事です。
医師不足の時代が長く続きましたが、1982年に16万人だった医師数が2018年には32万人と倍増しています。クリニックの数も10万院を超えています。今後、日本の総人口が減り医師が増え続けると、地域や診療科によってはクリニックの経営も厳しくなることは避けられません。今後地域で必要とされ続けるクリニックであるためにはどのような開業ができるのか、考えるきっかけとしていただければ幸いです。

筆者プロフィール

株式会社アイリスプランナー

https://www.irispl.jp/

中小企業診断士/医業経営コンサルタント

奥野 美代子(おくの みよこ)

外資系ブランド27年の実績をもとにした「魅力発信ブランディング」コーチングで院長のビジョン実現とスタッフ育成を行い、採用・集患に悩むことなく地域から選ばれる開業医の魅力発信・ブランディングを支援します。