コラム:クリニック開業後のお悩み
コラム クリニック開業ポイント

クリニックのボーナスの相場は?支給基準や必要性について解説

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1. ボーナスの支給義務はない

クリニックのボーナス(以下、本文では賞与併用)の支給については、特に規定はありません。労働基準法上は、医療機関に限らず事業主(会社やクリニック)にはボーナスの支給義務がないためです。

とはいえ、ボーナスの有無や支給基準は求人応募に影響があります。また、支給義務はなくても、支給する場合は法律上の規定も押さえておかなければなりません。今回は、クリニックのボーナス支給の注意点をご紹介します。

2. ボーナスの支給基準

ボーナスを支給する場合は、支給条件・支給時期・対象者などの支給ルールを定めます。支給基準については特に定めなくても構いません。

(1)スタッフの勤続年数

ボーナスの支給条件・支給時期・対象者については、あらかじめ就業規則や給与規定に決めておきます。
対象者は「勤続1年以上のスタッフとする」「勤続1年未満のスタッフは対象外」「勤続半年以上で規定の1/2」などと明確に決めておきます。
例えば「年間基本給3カ月分、勤続半年以上で規定の1/2」のルールだと、4月入職者の場合は6月ボーナス対象外、12月は1/2、翌年6月以降は満額支給となります。

(2)クリニックの業績

労働基準法では、賞与は「定期または臨時に、原則として従業員の勤務成績に応じて支給され、その額があらかじめ定められていないもの」とされています。
就業規則に「年間基本給3カ月分」などと規定する必要はありません。規定すると、業績が悪くても支払い義務が生じます。
開業直後や小規模クリニックでは患者数により業績が左右されます。「業績により支給しない事もある」と定めておくとよいでしょう。

3. クリニックのボーナスの相場

2019年度「第22回医療経済実態調査」によると、診療所勤務の看護職員、事務職員に対して2018年に支給された給与・賞与の統計は、下記の通りです。

給与・賞与統計

統計上は、賞与支給率は月給の2カ月分から3カ月分が一般的なようです。
ただし、注意しなければならないのは、診療所によって給与金額の内訳や賞与の算定基準が異なることです。
上記の統計は、給与と賞与それぞれ支払われた総額を示していますが、実際の月給は、診療所によって支払いの内訳が異なり、賞与の算定基準も違います。単純に賞与は基本給の3カ月分と言っても、給与=基本給の場合もあれば、給与より基本給が大きく下回ることがあるので、注意が必要です。

イメージ

例を示します。
<例 事務職員の場合>
1)月給総額:21.6万円
(内訳:基本給 21.6万円)
 賞与 46.2万円(基本給の2.1カ月分)
2)月給総額:21.6万円
(内訳:基本給 15万円、資格手当3万円、役職手当3.6万円)
 賞与 46.2万円(基本給の3.1カ月分)

1)の場合は、諸手当なしで基本給がそのまま月給額です。
2)は、1)と月給額が同じですが、内訳は、基本給と資格手当、役職手当と分かれています。
同じ月給でも、賞与を基本給の○カ月分と記載すると、1)では2.1カ月、2)では3カ月になります。

月給の内訳の決め方は、その後の昇給や退職金(指定する場合)の算定にも影響するので、税理士や社会保険労務士と相談して適正な額と記載方法を選び、スタッフ雇用時に明確に説明することが大事です。

医療事務

上記統計資料によると、事務職員は、平均給与21.6万円でボーナスは年間46.2万円、給与の2.1カ月分です。事務職員全体の平均値なので、クリニックによっては医療事務の資格者に資格手当を支払い、事務職員の平均より多少支給額が多い場合もあります。また、ベテランの年配者が多いクリニックでは比較的給与が高く、ボーナス支給額も平均より多くなりがちです。

看護師

同じく上記統計資料によると、常勤勤務の看護職員は、平均給与27.0万円でボーナスは年間66.8万円、月給の2.5カ月分です。看護師の給与やボーナスについては、看護協会や厚生労働省などの統計資料でも公開されています。クリニックに比べ、病院勤務や経験年数の長い看護師のボーナス支給額の平均値は高いことが多いです。

パート

パートスタッフは、週あたりの勤務時間が一定ではないので、一律に賞与を支給する必要はありません。規定にはないけれど、院長の感謝の気持ちとして数万円の金一封をお渡しすることもあります。
パートスタッフを含めて、評価基準を決めてボーナスを支給しているクリニックもあれば、パートには金一封としているところもあります。何らかのボーナス支給があると働く意欲が上がりますね。

4. ボーナスの支給方法

支払方法は給与と同じく銀行振込とします。まれに、ボーナスのないクリニックでは、金一封として現金の入った封筒を手渡しすることもありますが、これはおすすめできません。
クリニックに現金を用意し、一人一人間違いなく支給する準備だけでも大きな負担になります。残念ながら、現金の紛失や盗難のリスクも発生します。
形は金一封でも現金でなく振込にして、中に院長が一人一人に名宛てのお手紙を入れているクリニックもあります。スタッフにとって、院長が自分を見ていてくれたことがとても嬉しく、お金以上の大きなサプライズになります。

5. ボーナスの支給時期

ボーナスの支給時期は、一般的に6月・12月の年2回支給が一般的です。ボーナスを定めず、年俸制にしているところや年俸を15月で除して3カ月分をボーナスとして支払う場合もあります。
毎年6月と12月ではなく、7月と1月でも構いません。期末決算ボーナスとして業績のよい年に、特別に新年度に決算ボーナスを支給する場合もあります。
ポイントは、支給すると決めたら決めた時期に支払うことです。

6. ボーナスに関する注意点

ボーナスに関する注意点としては、前述のように、年俸制で年俸額の3/15をボーナスとして支給すると就業規則などに規定している場合です。この場合は、業績にかかわらずボーナスを支払う義務があります。

(1)支給条件を明確にする

入職前に、ボーナスは給与の説明と一緒に支給条件を明確に示すことが大事です。固定額で支給するのか、クリニック全体の業績もしくは部署もしくは個人の評価によって異なるのかを明確に定め、スタッフに説明しておきます。
支給条件が曖昧だったり、人によって説明内容が異なったりすると、「あの人は多いのになぜ私は?」と不満が出ます。院内の不和の原因にならないように支給条件は明確にしましょう。

(2)「支給日在籍要件」を定めておく

「支給日在籍要件」は、ボーナス支給対象者を明確にする取り決めの一つです。
対象者を「勤続1年以上のスタッフとする」と決めた場合、例えば4月時点で1年経過後、5月に退職したスタッフに対して6月のボーナスは支給する必要があるでしょうか?
「支給日在籍要件」は、勤続○年の支給条件に加えて、「支給日に在籍している者に対してボーナスを支給する」取り決めを就業規則に定めておくものです。
この場合は、指定の日前に退職したスタッフは支給対象外になります。
もしくは、ボーナス支払いの対象とする勤務期間を査定期間として定める場合があります。
例えば、「1月~6月を査定期間とする夏季ボーナスを7月に、7月~12月を査定期間とする冬季ボーナスを翌年1月に支給する」という例です。

筆者プロフィール

株式会社アイリスプランナー

https://www.irispl.jp/

中小企業診断士/医業経営コンサルタント

奥野 美代子(おくの みよこ)

外資系ブランド27年の実績をもとにした「魅力発信ブランディング」コーチングで院長のビジョン実現とスタッフ育成を行い、採用・集患に悩むことなく地域から選ばれる開業医の魅力発信・ブランディングを支援します。