コラム:診療科別のクリニック開業ポイント
コラム クリニック開業ポイント

耳鼻咽喉科で失敗しない開業ポイント・年収や開業資金も解説

  • 診療科別のクリニック開業ポイント

1. 序文

医療機関の開業と一口に言っても、診療科目によって必要な投資予算や収益モデルも変わってきます。本稿では「耳鼻咽喉科」について、開業資金・年収・開業のポイント・事例の記載をします。

2. 耳鼻咽喉科の開業資金・平均年収に関して

(1)開業資金に関して

以下は、耳鼻咽喉科クリニックの投資予算のサンプルです。
耳鼻咽喉科 開業投資予算 サンプル

開業投資予算サンプル (C)株式会社G.C FACTORY調べ ※ 医師会入会費に関しては地域差があるのと、入らない先生もいるので外しています。 ※各医療機器の価格はあくまでも参考価格となり、実際は購入のタイミングやメーカーの選定によって変動します。 ※機器のくくりに関しては特別な意図はありません。

前提条件を「テナント開業」「40坪(坪単価12,000円)」「医師1名」「耳鼻科CT設備あり」「軽手術あり」と仮置きして作成をしています。
耳鼻咽喉科は低単価(1日あたり514点、診療所全体は677点※1)で多くの患者さんを診るクリニックが多く、以前は待合室で多くの患者さんが待っている耳鼻咽喉科クリニックも多かったです。その意味では少し広めの物件を借りる必要があり、投資予算が高くなります。また耳鼻咽喉科は医療機器も多く、他の科と比較すると投資予算が高くなる傾向にある診療科と言えます。(モデルは広く機器を盛り込んでおり、実際はこのようなリストから取捨選択していきます)

※1…出典:支払基金「2020年6月度 統計月報

(2)平均年収に関して

次に平均年収に関してです。まず、統計データでは、耳鼻咽喉科の平均年収は約1,891万円(※2)となっており全体の約2,374万円を下回っています。もちろんこちらは統計値にすぎないという点と、こちらの統計は令和元年実施のものであり新型コロナウイルスの流行が起きた2020年3月以降において同じ結果になるのは難しいと考えられます。耳鼻咽喉科は新型コロナウイルスの影響により売上が下がった傾向にある診療科目の一つと言えます。今後は単に開業をして低単価で多くの患者さんを回すというだけではない戦略が求められてきます。

3. 耳鼻咽喉科の開業ポイント

次に、各開業工程におけるポイントを記載します。

(1)立地の選定

  • 高齢者から子どもまで幅広い人が来院します。また受診する姿を見られて困るという診療科目ではないので、視認性が良く、できれば低層階であることが望ましいです。
  • 医療モールなどの際には「内科」の先生と競合にならないか、診療内容のすり合わせは必要です。(競合として開業するというのももちろん可ですが、開業後に予防接種などで制約がでると困ります)

(2)内装

  • 患者数が多い診療科目となるので、待合室は広めにしたほうがよいです。この点に関しては完全予約制にするなどシステムで解決する方法もあります。
  • ユニットの数やネブライザーの数、CTの設置の有無などは知り合いのクリニックなどを見学したりアルバイト先で動線を見たりするなどしておくと良いです。(ネブライザーコーナーの場所などは医師によって変わっています。)
  • 診察室などの部屋を壁で区切らずコーナーとして区切るケースもあります。(ネブライザーコーナー、聴力検査コーナーなど)この場合は、事前に保健所に図面の確認をする必要があります。

(3)採用

  • 一般的には看護師・医療事務の採用となります。
  • 採用に関して人気の診療科目とは言えないため、早めの採用活動の開始や応募数によっては紹介会社の検討も必要です。
  • 手術を行う場合、可能であればこれまでの知り合いなど勝手がわかった人を採用できるのが一番です。
  • 未経験者の面接の際には、どのような業務をやるのか明確に伝えて理解いただいてから入職をいただいたほうが良いです。(「汚くてやりたくない」というようなトラブルも起こり得るため)

(4)マーケティング

  • 幅広い年代層が受診をするため、アナログ広告(看板やチラシ)とWEB広告のどちらも有効です。

4. 実際にうまくいった医師の成功事例

以下に、耳鼻咽喉科として成功されている先生の事例を記載します。

イメージ

(1)耳鼻咽喉科と一緒に内科も標ぼうした例

  • 都内(23区内 住宅地)に所在する耳鼻咽喉科・内科クリニック
  • 院長は耳鼻咽喉科の専門医であるが、内科の医師も雇用
  • インフルエンザ予防接種が始まる10月から花粉症が終わる5月くらいまで長期的に繁忙期を維持して高収益を継続
  • 閑散期が短いことからスタッフの無駄がない配置が可能となっており、スタッフには夏休みを他院よりも多い5日間を支給している

(2)完全予約制、WEB問診制を実施した耳鼻咽喉科クリニック

  • 近畿地方の都市部に所在する耳鼻咽喉科クリニック
  • 患者数が多く、元々は朝から入り口前に人が並び、昼休みも取れないくらいの混雑をする日もあった
  • 2020年の新型コロナウイルスの流行を受けて完全予約制へ移行。朝の混雑や待合室の混雑は無くなりスタッフは休憩を取れるように。完全予約制を導入することで空いている時間が一目瞭然になり、混雑がばらけて患者数のムラも無くなった。売上も予約制にすることが原因での減収はなかった。

5.まとめ

耳鼻咽喉科は、開業にかかる投資が大きい診療科目と言えます。そして手術を行わない限りどうしても単価が低くなり、その分多くの患者さんを診る必要があります。新型コロナウイルスの影響も加味すると、多くの患者さんを診るために感染対策をしっかりと整えながら集患を行っていく必要があります。

筆者プロフィール

株式会社G.C FACTORY

https://ma.gcf.co.jp/

代表取締役 金子 隆一

コンサルタントとして、医療機関のM&A、開業、運営支援において累計100件以上の実績を有する。クライアントの問題解決に励むと同時に、都内の大規模在宅支援診療所のバックオフィス業務の設計及び実行責任者を兼任している。