コラム:診療科別のクリニック開業ポイント
コラム クリニック開業ポイント

脳神経外科で失敗しない開業ポイント・年収や開業資金も解説

  • 診療科別のクリニック開業ポイント

1. 序文

脳神経外科は、2017年医療施設調査によると、診療所総数101,471施設に対し、1,811施設(1.8%)と少ない診療科です。開業初期投資額の規模が他の診療科目と比較すると、約2-3倍になるため立地の選定なども念入りに準備を進めなければなりません。本稿では脳神経外科専門クリニックの開業資金、開業ポイントなどをお伝えします。

2.脳神経外科の開業資金・平均年収に関して

脳神経外科の開業の場合、MRIなどの検査機器を導入し本格的なリハビリテーションも行う脳神経外科専門クリニックとしての開業と、そこまでの重装備を必要としない神経内科としての開業に分かれます。ここでは重装備となる脳神経外科専門クリニックの開業初期投資額についてお伝えします。脳神経外科専門クリニックの合計は1億円~3億円です。

最近の開業支援事例では開業初期投資額は1億5,000万円で、その内訳は下記のとおりです。
関西のベットタウン、幹線道路に沿ったリースバックの賃貸物件で約70坪の脳神経外科クリニックです。

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  • 内装工事:3,100万円
  • 医療機器(MRI導入):8,000万円
  • 敷金:300万円
  • 医師会入会金:400万円
  • 開業費(開業コンサルタント含む):200万円
  • 運転資金:3,000万円

そして資金調達は下記のとおりです。

  • 地方銀行より借入:1億2,000万円
  • リース:1,500万円
  • 自己資金:1,500万円

脳神経外科専門クリニックは所得にも大きな差が出ます。脳神経外科の損益構造として医薬品比率などの診療材料等原価(売上原価)が売上比でみると2%~5%程度で、他の診療科と比較して極めて低くなります。人件費および一般管理費をさし引いた利益率が40-50%となります。
安定すれば、3,000万円から8,000万円以上の所得(収入から経費を差し引いた額)となるでしょう。開業医の平均所得より大きく上回る所得となりますが、銀行の借入額も他の診療科より大きな金額となりますので、資金計画をしっかり行う必要のある診療科目です。
銀行からの借入額が3億円を超過する事業計画になると、資金援助をしてくれるスポンサーがいない限り事業計画そのものに無理があり、見直しが必要となる可能性が高くなるので注意しましょう。

3. 脳神経外科の開業ポイント

・運転資金は最低3,000万円以上

脳神経外科専門クリニックはMRIなど医療機器を導入した場合、重装備の開業初期投資額の大きな開業となります。利益から返済ができるようになるまで時間を要することを想定して運転資金は最低3,000万円以上を確保しておきましょう。

・診診連携を促進

脳神経外科は開業初期投資額が他の診療科より2倍以上の規模となります。そのため、脳神経外科専門クリニックを開業するのであれば、開業前から集患対策を検討しておく必要があります。
脳神経外科のような専門特化した診療科の診療所は「診診連携」で診療機能を強化することが集患には有効です。ポイントは自院の診療機能を活用してもらう連携にあります。脳神経外科であれば「整形外科」「内科」「婦人科」との連携を行い、MRIなど脳疾患に係る専門医の診断機能を活用してもらいます。この際の注意点は、紹介患者は紹介元へ患者をかえすとともに検査結果を紹介元に丁寧に報告することを徹底することです。さらに、最近では連携先を招待して定期的な実績報告会や合同症例検討会を開催することで、診療機能を認知してもらう活動を継続している脳神経外科専門クリニックもあります。
また、地域の基幹病院と連携して自ら手術を実施して診療機能を強化する診療所もあります。基幹病院としては診療点数に結びつき、診療所としては手術室とスタッフを無償で借りて自院の患者を手術できます。患者さんにとっても病院の手術室で行うという安心感をもってもらえます。このように診療所主導でwin-winの病診連携を構築することが集患には有効なのです。

4. 実際にうまくいった医師の成功事例

開業2年目のA脳神経外科クリニックの事例をお伝えします。
勤務医として勤務していた地域の基幹病院と自宅から車で10分以内、かつ駐車場も10台前後を確保できる閑静な場所を探していたところ、適地が見つかり賃貸契約をしました。
当初よりMRIを導入しA院長の専門分野である脳疾患について、病診や診診連携を重視した診療方針で集患対策を立てました。
病診連携では、開業前に勤務していた基幹病院に週1回、診療と手術で勤務を継続しています。自院で診察して手術が必要な患者さんはその基幹病院へ紹介して自ら手術を実施できるため、設備は病院でも執刀医は診断をしてくれたA院長にやってもらえるということで患者さんからは非常に安心感をもってもらえています。
基幹病院からは、紹介なしの初診の脳疾患に係る患者はA脳神経外科クリニックへ診察するよう啓蒙してもらえたり、手術後のフォロー・リハビリの必要な患者はA脳神経外科クリニックを紹介してもらえたりしています。この基幹病院からの紹介患者数の割合は65%前後です。
診診連携では近隣の「整形外科」「内科」「婦人科」「小児科」へ、電話かFAXでMRI検査の紹介・即時撮影が可能なシステムを構築しています。紹介患者は紹介元の診療所へ患者を必ずかえすとともに、検査結果や今後の診療などの情報を紹介元の医師に丁寧に報告することを徹底しています。その結果、近隣の診療所からMRI検査の紹介は増加しています。さらに、最近では連携先を招待して定期的な実績報告会や合同症例検討会も開催し、A脳神経外科クリニックの診療機能を認知してもらっています。
このような活動の結果、開業2年目で年間売上9,500万円を達成して利益4,000万円を超えてきています。

開業投資予算サンプル (C)合同会社MASパートナーズ調べ ※金額は実際の近似値です

5.まとめ

他の診療科より開業規模が大きくなる脳神経外科の開業においては、開業初期投資額の資金調達が3億円を超える借入金になるような事業計画になった場合は必ず見直しを行ってください。また、開業後の運転資金は3,000万円以上の金額を確保しましょう。
脳神経外科の診診連携・病診連携で診療機能を強化していく際は、診療所が地域医療の状況を捉えた方策を練ることがポイントとなります。さらには、1歩踏む込み診療所発(自らが主導になる)の「診病連携」という視点を持って情報発信をすることで、継続的な紹介患者のルートを構築できます。ぜひ、自らの主導で医療連携に取り組みましょう。

筆者プロフィール

合同会社 MASパートナーズ

http://www.maspartners.co.jp/

公益社団日本医業経営コンサルタント協会認定コンサルタント

原 聡彦

医療機関に特化したコンサルティングを行う合同会社MASパートナーズ代表。これまでクリニックの開業コンサルティング150件以上、クリニックの院外事務長などの経営サポートを250件以上など現場主義のサポートで活動するかたわら、コンサルティングの現場で経験した教訓を執筆活動、講演を通して発信している。