電子カルテとは
電子カルテとは、インターネットに接続することにより、患者さんの診療記録などの情報をサーバーに保存したり閲覧したりするシステムのことです。
電子カルテに記録されている情報は、電子保存の3原則として真正性・見解性・保存性をもとに運用されています。これは、電子カルテに保存されている文書は、訴訟などで利用されることがあるため、正確性の担保が重要とされているからです。
また電子カルテの情報は、会計システム・オーダリングシステム・臨床検査システム・薬剤システムなどをオンラインで連携させることにより記録しています。最近では、電子カルテのクラウド化が進み、分院、ほかの医療機関などとの連携にも活用されています。
電子カルテ導入のメリットとデメリット
情報管理・活用の即時性が最大のメリット
IT化の波は当然ながら医療界にも押し寄せ、電子カルテの普及率も着実に伸びてきています。ですが限られた開業資金においては、導入にかかる費用は少なくない額に上る場合もあり、本当にコストを上回るメリットがあるのか、逆にデメリットはないのか、といった点について把握しておく必要があります。そこで今回のコラムは、電子カルテのメリットとデメリットを従来の紙カルテとの比較で、より具体的にご紹介していきます。
電子カルテ最大のメリットといえば、情報のデジタル化による管理・活用の即時性です。データの閲覧や検索などが迅速かつ簡単な点のみならず、医療情報の共有が瞬時にできる点においても、電子カルテは紙カルテには比べ圧倒的な優位性を誇っています。例えば外来の際、新規患者さんの名前や住所、問診票に基づく症状や既往歴などの基本情報を受付スタッフが電子カルテに入力してしまえば、医師は診察室にいながらにして確認できますし、別室で行った検査の結果を取り込むことで即座に把握できます。さらには、診察を終えカルテが記入されれば、事務で再入力なく医療費が自動計算され、会計ですぐに精算できる状態にすることも可能なのです。

業務効率化により患者満足度もアップ

これに対し患者ごとに原則1つしかない紙カルテは、どうしても「記入して移動させる」必要があるため無駄な時間が発生してしまいます。また、手書きによる弊害で、先生の字が判別し辛いことがあった場合は、その度にカルテはクリニック内を行き交うこととなり、より一層のロスが生まれることとなるのです。
電子カルテ導入でクリニックの業務効率化を実現できれば、待ち時間の短縮にも直結するでしょうし、検査結果や医用画像などをモニターに表示しながら分かりやすい説明を行うことで、インフォームドコンセントの充実も図れるでしょう。つまり電子カルテは、患者満足度向上に繋がる可能性をも秘めているのです。
また、カルテを保管しておくスペースを節約できるのも、電子カルテの大きなメリットです。年を経るごとに紙カルテの量は増大していくため、狭いクリニックほどにその恩恵を享受できます。紙カルテにつきものの紛失リスクが極めて小さいことも、無視できないメリットと言えるでしょう。
デメリットを把握することで事前にリスク回避を
いい事ずくめのような電子カルテにも、もちろんデメリットがあります。まずあげられるのが、スムーズな運用ができるまでには少々時間がかかる、という点。デジタルツールが得意な先生もいらっしゃるでしょうが、スタッフ全員がそうだとは限りませんし、電子カルテは機種ごとに操作感が大きく異なるため経験者でも手間取ることも。そのため開業前に充分な習得期間を設けることが重要になってきます。また、文字でも絵でも思いついたものを即座に記入できる自由度は、やはりまだ紙カルテに軍配が上がります。シェーマ(絵図)をよく描く整形外科の先生などは、機種選定の際はご自身の使い方に合った作画機能を備えているかどうかをチェックしておきましょう。
なお、ITシステムにつきもののデメリットもあります。停電やシステムダウン等により、業務がストップしてしまう可能性はゼロではないのです。こういった危機に対するメーカーや納入業者の具体的取り組みは、導入前にきっちりと確認しておきたいところです。
先生が開業される近い将来には、電子カルテの普及率はより一層高まっていることでしょう。それにともない、その進化のスピードも加速していくことが予想されます。導入する時になって慌てず済むよう、電子カルテ関連ニュースについては今後習慣的にチェックされていくことをお薦めします。
