1. クリニックのオープニングスタッフが辞めてしまう理由とは?
クリニックのオープニングスタッフはクリニックを一緒に立ち上げる同士でもあり、将来はベテランスタッフとして院長を支えていく特別な存在です。このようなかけがえのないスタッフは少しでも長く勤めていただきたいものですが、中には途中で辞めてしまう方もいることでしょう。では、オープニングスタッフが辞めてしまう原因はなんでしょうか?まずは辞めてしまう理由から見ていきましょう。
(1)院長がクリニックの経営に慣れていない
クリニックを開業する際、院長にとっては病院で雇われていた立場から経営者となる場合がほとんどです。会社で例えると院長は社長になり、トップの立場としてのリーダーシップや部下のマネジメントスキル、人を雇う労務に関する知識が必要とされます。開業には、大学でも教えてもらえなかった知識が求められるのです。それらが欠如したままだと開業後にスタッフから信頼が得られないだけでなく、スタッフとトラブルに発展したり、最終的にはスタッフが辞めてしまったりすることになります。開業前に経営の練習を積むことは難しいので、どうしても開業後に試行錯誤することになりますが、苦手だからと避けて通ることのないように心がける必要があります。
(2)院長とスタッフの間に温度差が生まれる
院長やスタッフ間の診療に対する熱意の温度差は多かれ少なかれ必ず生まれます。温度差は個別性が高いものですが、事務スタッフと医師や看護師等の医療スタッフとの職種の違いや、正職員やパートタイマ―でも違いが出るものです。これが問題となるのは温度差による意見の対立や不満が積もり積もって増幅して職場内の人間関係を崩し、ときには我慢しきれず退職を選択する動機になってしまいます。
このような対立は、院長の考えを日頃からスタッフに伝える場が少なかったり、院長も含めてスタッフ間のコミュニケーションが不足したりすると起こりやすくなります。コミュニケーションに気を配った、風通しのよい職場の雰囲気作りが常に求められます。
(3)労働条件を経営側が守っていない
開業してしばらくはスタッフの人数も少ないため、就業規則もなく院長の裁量でものごとが決められる状態だと思います。そのような状態では労働関連の法律が順守されていない場合もあるため要注意です。最近では雇われるスタッフ側の労務知識が向上しており、少しでも疑問に思うことはインターネットを使って簡単に調べることができます。診療で忙しい院長よりもスタッフの方が正しいことを詳しく知っていると思っておいたほうが良いでしょう。
労働条件の食い違いは、院長には悪気がなくても、スタッフからすると院長に対して不満や不信感につながり、退職の原因にもなりかねません。このような食い違いを防ぐには、社会保険労務士やコンサルタントのような専門家に相談することも対策の一つです。
(4)採用方法やスタッフの見極め方を誤ってしまう
採用したスタッフが経営側の期待と食い違えば退職の原因にもなります。採用選考で見極めを誤る問題は選考を担当する経営側の経験不足によることが多いです。どんな人材をスタッフとして採用したいかというイメージすら持っていなかったり、開業前のため期待する役割についてもイメージが持てないまま選考したりすることで起こります。
例えば、経営側は臨機応変に残業してもらいたいと思っていても、それが可能か確認しないまま採用してしまうなどです。それを避けるには、採用面接を院長一人で対応するのではなく、採用経験がある方や院長とは異性の方、コンサルタントを加えるなど複数人で選考するようにすることで経営側の期待により近い方を選ぶことができます。
(5)適切な教育や指導不足
教育や指導不足が退職の原因にもなります。教育については、学びに対する欲求に個人差があり個々の業務遂行レベルも違うため一様に行うと不満の原因になります。長く勤めてもらうにはスタッフ一人ひとりと面談し、その主体性を尊重して成長をサポートするかかわり方が求められます。
一方、指導は適時・適切、かつ慎重に行う必要があり、問題を見過ごして放置すると通常はエスカレートして取り返しがつかない事態になるため注意が必要です。その結果で起こるトラブルで離職につながることもあれば、患者さんに迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。指導の際は、人前で指導するのが良いのか否かを慎重に判断し、指導される側の立場にも気を配る必要があります。