コラム:クリニック開業後のお悩み
コラム クリニック開業ポイント

クリニックのスタッフが辞める理由は?スタッフの不満と対処法も解説!

  • クリニック開業後のお悩み

1. クリニックのスタッフが辞めてしまう理由とは?

開業時のスタッフは開業して5年後には全員辞めてしまうという話はよく聞くのではないでしょうか?筆者はこれまでクリニックを退職するスタッフの面談を100人以上経験し、辞める理由や職場の改善点をヒアリングしてまいりました。転居や病気などやむを得ない事情を除きスタッフが辞めてしまう理由は職場の雰囲気と人間関係の悪さ、給料が低い、やりがいがない、休みたいときに休めない、拘束時間が長く業務量が多いと理由があげられます。
それでは以下で退職理由について解説します。

(1)職場の雰囲気と人間関係が悪い

この理由がもっとも多いのではないかと思います。特に入職して1カ月目は自分がこの職場に合うかどうか見極めるために、新人スタッフは院長と先輩スタッフをよく観察しています。退職するスタッフの面談で「先輩スタッフが怖くて怖くて・・・怒る時は、失敗したことだけを怒ってほしい。他のこともたくさん言われると、どんどん萎縮してこのクリニックに私は必要ないと思ってしまいました・・」と“先輩の○○さんが怖い” “院長が怖い”という話はよく耳にします。

(2)給料が低い

給料が低いというのは1年後、2年後の昇給や賞与、退職金を含めての経済的な待遇が病院や一般の企業より劣る点が多いため不満を起こしてしまうことです。
特に開業期のクリニックは、キャリアに応じた昇給や賞与などの給与体系が出来上がっていないため、給料や賞与など待遇で誤解を生むケースもあります。

(3)やりがいがない

国家資格をもたない医療従事者の業務については入職から3年もたてば業務を一通りこなせるようになります。診療報酬改定など最新の情報を知っておく必要はありますが、日々の業務やレセプト業務は決まったやり方でこなしていけるので仕事がマンネリ化してしまい、やりがいを見出せなくなって退職してしまうケースが多くあります。

(4)休みたいときに休めない

有給休暇をとれるクリニックは増えましたが、スタッフの人数は余裕をもって多く雇用していないため、休みたいときに休む事や1週間ほどの有給休暇を使用することはできません。一般企業との格差を感じるスタッフは退職の原因と考えているようです。

(5)拘束時間が長く業務量が多い

クリニックの1日の就業時間は8時間だが拘束時間となると10時間を超えてしまうケースも多いです。最近、面談をした既婚者の理学療法士の男性スタッフは、子育て、家族との時間を増やしたいという理由で今より拘束時間の短い職場へ転職したいと申し出がありました。ワーク・ライフ・バランスを重んじる20代~30代のスタッフは拘束時間の長さを敬遠して、より拘束時間の短い勤務先へ変更を考えるケースも増えてきています。また、コロナ禍において拘束時間を気にするスタッフは増えてきています。

●適切な労務管理についてはこちらも参照ください。
適切な労務管理で明るいクリニックへ

2. クリニックを辞めたいスタッフへの対処法とは?

クリニックを辞めたいと表明したスタッフへの対処法は、個別で話を聞くぐらいしかありません。また、個別で話を聞き、クリニックとしてできることを提示しても退職を撤回するケースはほとんどありません。
したがって、クリニックを辞めたいと表明したスタッフへの対処ではなく、辞めたいことを表明するか迷っている段階のスタッフを把握することが重要なのです。そのために職場の雰囲気を高めスタッフとのコミュニケーションの機会を仕組み化することをおすすめします。

(1)職場の雰囲気を高める事を意識する

職場の人間関係の改善は日々の仕事の中で信頼関係を築いていくことですから、一朝一夕では改善できません。だからこそ、クリニックの経営者である院長は日々、職場の雰囲気を高めることを意識してコミュニケーションをしやすい環境を整えなければなりません。雰囲気を高めるコツは、「何をするか?」より「何を止めるか」です。
経営者は結果を求め変化したい場合、つい不足しているところを補うために「追加する行動」に目が行きがちです。しかし、どんなに素晴らしいノウハウでも、実施するタイミングが悪ければ無駄に終わるどころか、やればやるほど状況が悪化することさえあります。例えば、いくら週3回ジムに通って体を動かしても、炭水化物や糖分過多の食事のままでは体は変化しません。職場の雰囲気を高めるのも同じです。むしろ、後ろ向きなスタッフが多く職場の雰囲気が良くないと感じるなら「何をやるか?」より「何を止めるか?」、つまりマイナスを生じさせている原因を知り、それを排除するほうが早く結果に辿り着けるのです。

では一体、どんな行動を止めればいいのでしょうか?
筆者はこれまでクリニックに在職中スタッフ300人以上の面談を経験しました。
面談の際には、面談前に「スタッフ面談シート」をスタッフに記載してもらっています。シートの中の項目でクリニックの経営陣にやめてもらいたい行動言動を書いてもらっているのです。その一例をご紹介します。

①怖い雰囲気を出す
「怒る時は、その時失敗した事だけを怒ってください。他のこともたくさん言われると、何であんなこと今になって、と不満を言っている人が多いです」「院長が何も言わず怒っている態度を見て、今までのスタッフ全員が“院長が怖い”と言ってました」

②言うことがすぐ変わる
「院長は夢(長期目標)ばかりで目の前の今どうするかは一緒に考えない。また、その目標がすぐ変わる」「実現できないのはスタッフのせいだと、何でもかんでも人のせいにする」

③聞く耳を持たない
「スタッフの意見を取り入れてほしいです。面談などでこちらが意見を言っても結局は先生の意見で通ってしまう事ばかりなので、面談などしてもあまり意味が無いと思います」

上記①~③の言動や立ち居振る舞いを止めたうえで、定期的にスタッフとコミュニケーションをとる機会を仕組み化していくことをおすすめします。

(2)スタッフとコミュニケーションをとる

スタッフ間のコミュニケーションを改善するには、クリニックのトップである院長がスタッフ一人ひとりといかに向き合うかがポイントとなります。
地域性や規模など、それぞれのクリニックによっても異なりますが、クリニックの実状に合ったやり方で実践しましょう。

【取り組み事例を紹介いたします。】
開業5年目の整形外科クリニックA院長は、スタッフ間のコミュニケーションを円滑に改善するために部門長、中心となっているスタッフとの個人面談を実践しています。
個人面談では、①承認する(何を言っても受け入れる)、②傾聴する(話を最後までじっくり聞く)、③フィードバックする(次の行動へつなげる)ことを重視しています。
特にフィードバックに重点を置いています。フィードバックの目的はスタッフの弱点を強調するのではなく、強みと改善点を洗い出し、さらに向上させることです。

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特に次の3つの事項をフィードバックすると効果的です。

  1. Keep to do:どの取り組みに効果があり、継続すべきか
  2. Start doing:さらに良くするために新たに取り入れることは何か
  3. Stop to do:避けるべきことは何か

A院長は、スタッフの目に映る自分が変わることで、スタッフも必ず変わると信じて実践しています。上述した個人面談を3年間続けた結果、個々のスタッフとの関係性が良い方向に変わり、スタッフ間のコミュニケーションも良くなっているという手ごたえを感じているようです。

3. クリニックを急に辞めたいスタッフがでないようにする対策方法とは?

急に辞めたいと表明するスタッフが一人でも少なくするためには書面の整備とコミュニケーションを仕組み化することが必要です。最近の傾向として入職から1カ月以内で辞めたいと表明するスタッフが非常に多くなっています。入職前にしっかりとした労働条件を含む退職のルールを定めた書面の整備と入職時のオリエンテーション、入職後、1週間前後で個別面談にて状況を確認するといった入職前と入職後にコミュニケーションをスケジュール化しておくことをお勧めします。

(1)契約書に数カ月前退職の予告をする

クリニックでは入職時の書面、退職時の書面を整えておられるクリニックが増えてきました。自己都合退職については次の採用活動の事も考えて2~3カ月前には伝えてもらうようにしておきましょう。退職時のことは必ず余裕を持った期間を設定しましょう。

(2)入職時の個別面談、定期的な個別面談をスケジュール化する

入職時のオリエンテーションで、雇用契約などの書面の説明とともに先輩スタッフの性格や特性など「先輩スタッフのトリセツ(取り扱い説明)」を実施することで新人スタッフは、入職前に対処などの準備をしやすくなりますのでおすすめしております。「先輩スタッフのトリセツ」を導入したクリニックでは3カ月以内での退職が導入前より90%減少した事例もあります。また、入職時のオリエンテーションで「先輩スタッフのトリセツ」をすることで、入職後の1週間目の面談では通常、上司には言いにくい職場の雰囲気の事や先輩スタッフのことも話してくれるでしょう。

筆者プロフィール

合同会社 MASパートナーズ

http://www.maspartners.co.jp/

公益社団日本医業経営コンサルタント協会認定コンサルタント

原 聡彦

医療機関に特化したコンサルティングを行う合同会社MASパートナーズ代表。これまでクリニックの開業コンサルティング150件以上、クリニックの院外事務長などの経営サポートを250件以上など現場主義のサポートで活動するかたわら、コンサルティングの現場で経験した教訓を執筆活動、講演を通して発信している。