3. 具体的な教育の進め方
スタッフ教育というと、外部研修を受けるとか院内で教育カリキュラムを作ることを考えがちですが、前述のスタッフ教育の5つのポイントの多くは、教育というより日々のクリニック運営のなかで実施できることです。
具体的には下記の手順で行うと、効率よく進めることができます。
(1)業務フローの確認
スタッフ教育のスタートは、医療事務・看護・診察の院内の業務フローを書き出し、院内の仕事を理解することから始めます。
業務フローというと難しく感じるかもしれませんが、業務ごとに異なる色の付箋に仕事の内容をステップごとに書き出し、並べるだけです。自分の業務手順の確認だけでなく、院内の他の業務を理解してスムーズな業務オペレーションができるようになります。
日々の診療では、受付、案内、診察、会計の流れの中での患者応対の言葉や書類の受け渡し、PCへの入力、会計までを書き出します。
朝の開院準備、夜の閉院作業、月次、年次の仕事も同様に書き出します。
(2)年間スケジュールの作成
次に、年間スケジュールを書き出します。年次休暇や毎年の行事や医師会や地区の研修などがあれば、書き出します。
「(1)業務フローの確認」と「(2)年間スケジュールの作成」を院長と事務長など経営幹部で行うことで、1年後もしくは数年後のクリニックのあるべき姿をイメージし、設備投資や必要な人材の採用とスタッフの教育計画を具体的に考えることができます。
個人情報保護や接遇研修、リーダー研修などは、外部機関でもよく行っている研修なので、計画的に活用すると良いでしょう。
(3)目的・目標設定
スタッフ教育の5つのポイントについて、目的と目標を明確にします。教育カリキュラムとして行うものと、日々の業務の中で行うことを分けて考えます。
例えば、理念や院内ルールは、採用前後のオリエンテーションで示した後は、毎日の朝礼で確認したり、新年会や年次計画発表会など全スタッフが集まる場で話す機会を設けたりすることもできます。
(4)プリセプターの配置
新人教育では、2年目3年目の先輩をプリセプター(新人教育係)として、直接新人の日常業務の指導を担当させることをお勧めします。看護職の新人教育で一般的ですが、医療事務や医療専門職でも有効です。
先輩スタッフは、新人教育をすることで業務見直しやコミュニケーション能力アップにつながります。来年は教える立場になると思うと、教わる新人も、より積極的に学び、身に付けようと意識が変わります。
(5)教育カリキュラム・スキルマップ作成
新人用のカリキュラムと入職後に必要な技術・スキルを書き出したスキルマップを作ります。スキルマップは、項目ごとに、①できない、②指導を受けながらできる、③一人でできる、④指導できるの4段階でスキルの習熟度を図り、スキル向上を目指します。