コラム:クリニック開業後のお悩み
コラム クリニック開業ポイント

開業の成功率ってどのくらい?失敗しない経営のポイント

  • クリニック開業後のお悩み

1. 開業医の成功確率ってどのくらい?

開業医の成功確率はどのくらいなのでしょうか。
クリニックの開業には、内装工事や医療機器の設備投資で多額の開業資金が必要です。失敗はしたくないですね。何をもって成功とするかは医師によって異なりますが、開業して地域の患者が集まり、クリニックの経営を続けられることが成功の目安の一つと言えるでしょう。実際に患者の増加とともに医療収益が増え、勤務医時代の収入を超えると、開業してよかったと成功を実感できますね。

厚生労働省の調査(2019年実施)によると、勤務医の平均年収はおおよそ1,000万円から1,500万円です。それに対して、個人医院の院長収入は約2,400万円、医療法人の院長収入は約2,800万円です。勤務医の平均年収との単純比較はできませんが、ほとんどの開業医は勤務医の年収を大幅に超えていると言っていいでしょう。

参照: 厚生労働省「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(2019年11月)

2. 開業医の成功率が高い理由

企業の信用調査機関である帝国データバンクの調査によると、診療所の年間倒産数は2000年から2019年の平均で15.3件/年です。2019年時点の診療所の数は約10.2万なので、倒産したのは全診療所のわずか0.015%です。同年の一般企業の倒産発生率0.25%と比べると開業医の倒産は極めて低いと言えます。裏を返せば、それだけ開業医の成功率は高いことになります。
しかし、クリニックを開業すれば患者が集まる時代は終わりました。少子高齢化で人口が減り高齢化が進んでいるので、今後は医療ニーズより介護ニーズが高くなります。地域や診療科によっては、医師が多いところと不足するところが生じる「医師偏在」も問題となっています。
本記事では、開業を成功させるためのポイントについて解説します。まずは、なぜ開業医の成功率が高いのか、代表的な2つの理由を紹介します。

(1)顧客が獲得しやすいから

開業医の成功率が高い理由の1つは、顧客である患者獲得の可能性が予測しやすいことです。地域の人口変化や年齢構成、傷病別の受療率などの公開データから特定の傷病を持つ患者想定数がわかります。その診療科を標榜する医療機関の数や分布もわかるので、医療の需要と供給のバランスが把握でき、医療ニーズの高い地域を予測できます。
また、開業医の経営状況はガラス張りです。医療法人の決算書は公開されていて、個人医院が流行っているかどうかも患者の出入りや口コミでわかります。
地域に人がいる限り、風邪をひいたりケガをしたりすれば診てもらう医療機関が必要です。地域の医療ニーズや競合する既存の診療科の存在を無視して開業しない限り、顧客を獲得するのは難しくありません。

(2)融資のハードルが低いから

開業の成功率が高いもう1つの理由は、有利な条件で開業に必要な融資を受けやすいことです。クリニックの開業時には、一般の金融機関に加えて、日本政策金融公庫の「新規開業資金」や医師会・地方自治体の開業支援ローン、政府系の独立行政法人福祉医療機構の融資を使うことができます。医師不足の地域では、行政や金融機関もクリニックの開業を歓迎していて、金利の優遇措置などもあります。
地域の医療ニーズに合わせて作られた事業計画があれば、医師は地域からの信用も厚く、開業後は簡単に廃業や移転することもありません。金融機関からすると安心して融資できる“お得意様”なので、有利な条件で融資を受けることができます。

3. 開業で失敗しないためのポイント

ここまで述べたように、地域の医療ニーズに合わせた開業をすれば、失敗することはありません。しかし、開業すればどこでも誰でも成功するわけではありません。十分な医療圏調査もせずに、イメージだけで競合の多い都内中心地や高級住宅街で開業してしまうと失敗するリスクはかなり高くなります。
ほかの業種の起業と同様、地域のお客様(患者)ニーズに合わせた事業計画を立て、どんな診療を提供するのか、地域へ情報発信していくことが大事です。しっかりコンセプトを決め、戦略を立てることが成功への近道です。
開業そのものは難しくありません。ここでは、失敗しないためのポイントについて説明します。

(1)開業場所は慎重に選ぶ

立地条件は開業を検討する際の最重要事項の1つです。開業立地の選択を誤った失敗事例を紹介します。

開業立地にまつわる失敗事例

  • 地域のイメージにこだわって、競合の既存医院や想定患者数を調べずに開業したため、ライバルが多く新規患者を獲得できない。
  • 専門性にこだわって開業したが、その地域には専門性を生かせる患者が少なく、遠方からの集患目的のWeb発信もしていなかったので、患者が来ない。
  • 想定患者が得られる地域と診療科を選んだが、道路や河川で地域住民の生活動線から外れた場所だったので人通りが少なく患者が来ない。

立地は賃料やスタッフの通勤にかかる交通費などの経費にも影響します。集患上は大通りの路面での開業が有利ですが、診療科によって例外があります。例えば、心療内科や泌尿器科はプライバシーに配慮して駅近の裏通りがよく、紹介と予約が中心の診療科は路面店である必要はありません。
立地は開業費用への影響も大きく、あとで変更できません。戦略をもとに総合的に検討し、慎重に選びましょう。

(2)経営スキルを身に付ける

イメージ

開業医には次の3つの役割があります。
①医師としての役割:適切な医療技術の導入と提供
②経営者としての役割:経営面の戦略策定と決断
③管理者としての役割:働くスタッフの育成と組織運営

勤務医時代には、医師の役割と管理業務の一部を担うだけで良かったのですが、院長である開業医はクリニック経営の全責任者です。
理想の医療を提供すればお金はあとでついてくると思っていても、給与や家賃の支払いは待ってはくれません。一般企業の経営者と同様、ヒト・モノ・カネの経営資源の最適化・有効活用を行うことを常に考えて経営しなければなりません。
税理士さんに聞かなければ来月の収益の予定もわからない、経費の支払いで毎月四苦八苦している…ということになっては、開業して成功したとは言えません。
経営スキルは自然と身につくわけではありません。開業医の場合は、最新医療技術だけでなく、管理スキルや経営スキルも継続的に学び、実践することが大事です。

(3)人間関係のトラブルを防ぐ

人間関係のトラブルは、開業医の大きな悩みの1つです。勤務医時代には、スタッフ間のトラブルに関与する必要もありませんでしたが、それが原因で退職したり、院内の雰囲気が不穏になったりしては大変です。
スタッフ間の問題だからそのうち解決するだろうと思っていたら、そもそもの原因は、院長が適切な指示を出していなかったり、方針を決めていなかったりと、経営者の問題であることも少なくありません。
スタッフの教育や組織づくりは集患以上に重要な院長の仕事です。いい人が来ないと嘆く前に、経営者の想いを伝え、育成していくことで自立した組織をつくることができます。院長自身が院内のコミュニケーションの活性化に努め、一人ひとりへ気配りすることで人間関係のトラブルを減らせます。

(4)プロの開業支援を受ける

集患と採用、これは多くの開業医の二大悩みです。患者とスタッフから選ばれるためには、選びたくなる仕組みが必要です。それがクリニックのブランディングです。ブランディングができれば、ぜひあの先生に診てほしい、先生のところで働きたいというスタッフが集まります。
そのためには、院長の開業の想いを言語化し、クリニックの診療方針や経営理念として、スタッフそして患者に伝えることが大事です。その想いをスタッフと共有できれば、「こんな患者のために、こんな医療を提供しています」とスタッフ自身が伝えられるようになります。これが自立した組織づくりにもつながります。最近では、スタッフと一緒にSNSを活用して情報発信するクリニックも増えています。
Web広告で患者を集めることはできても、信頼獲得まではできません。

4. まとめ

クリニックの成功に必要なポイントは基本的なことばかりですが、診療コンセプトを明確にし、医療ニーズのあるところで求められる医療を提供することが何よりも成功の近道です。
そしてもう1つ大事なことが、地域・患者から選ばれる仕組みづくりです。そのためには情報発信が重要です。最近では、誰もがネットで調べてから行動することが当たり前になっています。クリニックも自ら情報発信を続けることでブランドイメージが明確になり、自院の提供価値を求める患者が集まる仕組みができます。

筆者プロフィール

株式会社アイリスプランナー

https://www.irispl.jp/

中小企業診断士/医業経営コンサルタント

奥野 美代子(おくの みよこ)

外資系ブランド27年の実績をもとにした「魅力発信ブランディング」コーチングで院長のビジョン実現とスタッフ育成を行い、採用・集患に悩むことなく地域から選ばれる開業医の魅力発信・ブランディングを支援します。