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CASE STUDIES 導入事例

株式会社一ノ蔵 (宮城)

いじめて育てると何倍もの力を発揮するのです
株式会社一ノ蔵
取締役 製造部長 熊谷 伸二 
株式会社 一ノ蔵 取締役 製造部長 熊谷 伸二 様

日本酒よもやまばなし

最近、日本酒はのまれましたか?
お正月以来かな、という答えも多いのではないでしょうか。焼酎やワインに押され気味な日本酒再発見に、東北の酒蔵、株式会社一ノ蔵さんを訪ね、日本酒にまつわるお話を伺いました。

株式会社 一ノ蔵イメージ

日本酒に詳しい方ならご存じの「日本名 門酒会」 80 数社の蔵のひとつとして名を 連ねる「一ノ蔵」。手造りにこだわった 姿勢と創りだされる銘酒は知る人ぞ知る蔵元です。宮城県仙台市から北へ約40キロ、景勝の地松島海岸より十数キロほどの山あい、秋には鮭が遡上する清澄な鳴瀬川と、その両岸に広がる県内有数の穀倉地帯、大崎平野を控え、まさに酒造りに適した地に本社蔵があります。「一ノ蔵」の創業は1973年(昭和48年)。50年~300年の伝統を誇る名蔵 4つが企業合同して新たに創業。南部杜 氏の技が生きる手造りの酒造りに強くこ だわりつづける酒蔵です。

●気になる新酒はいつ飲める?
ワインは 11月の新酒解 禁で大いに盛り上がりますが、日本酒の場合はどうでしょう。 新米の収穫を終えその年の酒造りが始まるのが10月初め。造り始めて40~50日近くして搾られた生の新酒は11月初めには味わうことができます。特に寒中に仕込まれた酒は味がよく、2月頃になると寒仕込みの新酒としてお店に出まわります。また、搾られた新酒は大部分、濾過、火入れされ数ヶ月から数年貯蔵熟成させて出荷されます。なかでも、ひと夏じっくりと眠らせ、秋口に出荷されるものを「冷やおろし」と呼びます。近年では冷蔵貯蔵技術が高度になり、より品質の安定した夏越しの酒が造られるようになったそうです。残暑の頃、熟成した「冷やおろし」をキンと冷やして飲むとまた格別なうまさがあるそうです。

●味は時代で変わる
人の嗜好は時とともに変わり、甘辛の度合いも 変化します。では日本酒でよく言われる辛口と は、かつては辛口の酒とは酸味を感じる味のことを指していたといいます。現代の辛口はドライという表現に近いそうです。甘辛を決める日 本酒度という尺度は、糖度を基準としたスケールだけで味の全ては表現できないとのこと。やはり自分で味わって自分に合ううまい酒を見つけるのが一番のようです。

●酒の味は何で決まるか
日本酒づくりに欠かせないものといえば「米」と「水」。日本酒に詳しい人ならこれに「麹」を加えるだろう。熊谷さんの答えはずばり「麹」だった。もっとも他のものはどうでもよいということではない。「水」についていえば 伏見の女酒、灘の男酒と称されるように軟水・ 硬水で味が変わることもある。まず、最高級の酒を造るのに求められるのは、米を洗ったり、仕込みに使う清らかで豊富な水量、つぎに「米」はほぼどこの蔵元でも最高の酒米「山田錦」に決まりでしょうとのこと。(もっとも、県内産の米にこだわる一ノ蔵さんでは、農業試験場と協力しあって酒米開発に取り組み、山田錦を母に、東北140号を父に、ソフトで品のよい香りの酒になるという酒米、「蔵の華」を産みだされている)つまり、同じ「米」を使っても蔵により特色がでるのは麹で、これをどうコントロールするかで酒の味、蔵の味が決まるのだという。

60本の醪(もろみ)のタンクイメージ
60本の醪(もろみ)のタンクが整然と並ぶ
近代的な仕込み室の奥に神棚が祀られている
麹イメージ
麹がゆっくりできあがっていきます
窓の外は奥州の豊かな自然

●麹・酵母のこと
専門外の人間にとっては解りづ らい醸造発酵学の分野ではあるが、大雑把にいえば酒を造ってくれるのは麹や酵母などの微生物。他の有害な雑菌を排除して、麹や酵母を意のままにあやつれば思いどおりの酒ができるのではあるが、文字どおり神業。特によいお酒を造るためには麹や酵母にとって住みやすい環境とは逆の環境で発酵させることが必要で、技術的な問題が多々あるらしい。このあたりが科学技術の見せ所でコンピュータ管理にでもなっているのかと思えば、感覚なんです。

●吟醸酒
高級日本酒といえば大吟醸。さらりとした上品な飲み口と高雅な香りは女性にも人気の高い日本酒です。普通の酒の精米歩合(玄米に対する白米の重量比)が75~60%のところ、大吟醸酒の場合は35%にも及びます。つまり玄米の2/3位を削りとるので、雑味のない清澄な味となるのです(酵母も特別な吟醸酵母を使う)。ではこの大 吟醸酒はいつ頃からあったのでしょう。意外にも、明治時代中頃以前は造れなかったようです。 それまでの水力なり人力なりの臼による精米では現在のような精米歩合まで削ることが不可能だったのです。西洋から輸入した精米機により初めて精米歩合が現在のものに近づきました。江戸時代ではいくら金持ちでも将軍でも飲めなかったお酒なのです。

玄米の量イメージ
後列左の2本の玄米の量が
大吟醸1.8L分に当たる米の量
玄米の量イメージ
左の米が精米歩合35%の大吟醸用
右は65%の通常の酒用
玄米の量イメージ

●ワインと日本酒
同じ醸造酒のライバルであるワインとはどんな違いがあるのだろう。酒造りから見た一番の違い、それは液体と個体の差だという。ワインはブドウの果汁(液体)を発酵させるもの。ブドウの種類の違いや、生育によってワインのできが左右されるので、いわゆる当たり年(ビンテージ)のワインなどが生まれるという。それに対して日本酒は米という固形物を溶かしながら発酵してゆく(しかも生米をかじっても微妙な味の違いしかない)。同じ醸造酒といってもこの発酵メカニズム に非常に大きな違いがあるということです。知れば知るほど、身近な日本酒が奥の深い発酵技術の華にも見えて、思わずエールを送りたくなります。今夜、蘊蓄ばなしを肴に一献いかがですか。

マ-ケティング室 室長 山田 好恵 様イメージ
マ-ケティング室 室長 山田 好恵 様

他の日本酒は飲めないという 女性のファンがおられます

日本酒を取り巻く状況は決して易しいものではないようです。自動車社会が成熟してゆく中で、飲酒文化そのものが変わりつつあります。日本酒が抱える問題もいろいろとあるようです。一時期、価格は安いが質の低い日本酒が飲み放題などで供されていたこともイメージ低下につながったといわれています。日本酒のアルコール臭も毛嫌いされる傾向があり、無理矢理すすめられる慣習もなくなってきたとはいえ若い人たちからの支持は弱いようです。「一ノ蔵」では早くから日本酒ばなれの問題に取り組み、特に女性にターゲットを絞った商品開発で成功されています。低アルコール酒のシリーズがそれで、「ひめぜん」はアルコ-ル分8 ~8.9%と通常の日本酒の15%前後と比べると驚くほどのライト感覚。ほぼビールのアルコール分に匹敵するほどです。日本酒はこれしか飲みませんという女性ファンもおられるとか。

「すず音(ね)」。この涼しげなネーミングの酒は日本酒には珍しい発泡酒。アルコール分4.5~5.5%。シャンパンのように飲める、見た目もおしゃれな一品です。また、米とは切っても切れない縁の醸造元にふさわしく、ライスパワーエキスを原料に加えた「米米酒」などの商品開発にも取り組んでいます。米を原料に醸造発酵技術を駆使してつくられた米のエキスにはさまざまな効能が期待され、酒だけでなく健康食品や化粧品などへの応用へと、今後もいろいろな商品開発が展開されるとのことです。

低アルコール酒ひめぜん・低アルコール酒 発泡清酒 すず音イメージ

納入先

株式会社 一ノ蔵
開設 1973年
所在地 宮城県志田郡松山町千石字大欅14
U R L http://www.ichinokura.co.jp/
株式会社一ノ蔵ロゴ

株式会社 一ノ蔵のロゴマーク
酒升をモチーフにして
4つの蔵がひとつになったことを表現している

株式会社 一ノ蔵イメージ

納入機器

プレハブ低温室:1.5坪 4室/超低温フリーザ:MDF-192AT バイオクリーンベンチ:MCV-B131F/薬用冷蔵ショーケース:MPR-161、311D CO2インキュベータ:MCO-96

一ノ蔵さんの微生物実験室で活躍する 三洋バイオメディカの製品群

微生物実験室イメージ

の微生物実験室では実際の酒造りをスケールダウンして実験室規模での試作酒をつくったりもする。また、クリーンベンチでは製造に使う酵母の培養やその他各種の微生物実験が行われる。まさに商品開発の最前線である。

商品開発室 研究主任 菊池 智子 様
商品開発室 研究主任 菊池 智子 様
バイオクリーンベンチ MCV-B131Fイメージ
微生物実験の必需品、
バイオクリーンベンチ MCV-B131F
超低温フリーザ MDF-192ATイメージ
酵母と乳酸菌の菌株を-80℃で保存。
超低温フリーザ MDF-192AT
遮光扉の薬用冷蔵ショーケース MPR-161イメージ
遮光扉の薬用冷蔵ショーケース
MPR-161には酵母の菌株がぎっしり
保存されている
プレハブ低温室 1.5坪の2室イメージ
プレハブ低温室 1.5坪の2室にも
試料や試薬、試作の酒を保管。10年以上前の酒も残っているという。
薬用冷蔵ショーケースMPR-311Dイメージ
薬用冷蔵ショーケース
MPR-311D
インキュベータ MCO-96イメージ
各種微生物検査に使用
CO2インキュベータ MCO-96

掲載内容は2005年3月現在のものです。

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