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CASE STUDIES 導入事例

Vol.05 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング (愛知)

患者さんのQOL・製品のGMPを追求すると再生医療に必要な自家培養物の製造工程では自動化が欠かせない
株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 
代表取締役社長 小澤 洋介 
株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 代表取締役社長 小澤 洋介 氏

バイオベンチャー企業として、日本最初のヒト細胞を用いた再生医療用の自家培養皮膚と自家培養軟骨の製品化をめざしているのが、愛知県蒲郡市にある(株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(略称:JーTEC)です。同社では、製品化の前段階として、培養皮膚では2002年3月に国内初のヒト組織細胞利用製品の治験の許可を受け、治験実施後に製造承認申請を行ない、培養軟骨も現在治験を実施中です。いずれも培養物の品質が、人の生命に直結することから、GMP(医薬品・医療用具の製造所における品質保証に関する基準)に基づくのはもちろん、独自のシステムやノウハウの確立にも努めておられます。今回の自動搬送インキュベータMHTSー20MCOの導入は、将来の製造開始へ向けた布石であり、ラボオートメーションへの挑戦でもあります。その経緯を、小澤洋介社長、森由紀夫製造部長に、お話を伺いました。

“人手”という危険因子を取り除くほど安全性と効率性は向上できる

細胞を接着制御できる高分子マイクロパターン表面の開発には、光反応性試料へフォトマスク越しに光を照射してパターンを焼き付けるフォトリソグラフィーという半導体微細加工技術が利用される。しかし、ガラス板に金属膜のパターンがコーティングされたフォトマスクの作製には、数十万円以上のコストと数週間以上の時間が必要で新技術開発のネックとなっていた。そこで三洋電機バイオメディカと共同開発で、液晶プロジェクタを用いてパソコン画面上に作製したパターンを縮小投影して、フォトマスクなしでパターンニングができる装置を開発した。
パソコン上に描いた世界地図どおりに、培養細胞をパターン化することに成功している。
この技術によって、組織再生、臓器再生に無くてはならない異種細胞の配置培養や、細胞シートの中に血管を配置再生するなどということが可能になりつつある。
「うちの研究室には、医師のほか、工学、理学、薬学分野の人がいます。それぞれが得意な領域を、ひとつの研究テーマに結集できた時、大きな成果が得られます。日本の将来を考えた場合、バイオテクノロジーの分野でも、つねに新しい技術を開発していかなければ、世界をリードしていくことはできません。我々の研究は、その最先端をいっていると思います」と岡野所長。

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搬入口に培養容器をセットすると、バーコードリーダが
読み取って自動インキュベータの器内に搬入される。
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器内に入った培養容器は、自動倉庫方式のスタッカーにセットされる。
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外扉を開いた器内。器内のメンテナンス以外は、
外扉・内扉を開く必要がない。
インキュベータMHTSー20MCOイメージ
培養軟骨の製造へ向けて導入された自動搬送インキュベータ
MHTSー20MCO。クリーンルームに設置されている。

培養物の製造工程では人手を介さないほど品質管理は大幅に
向上できる

ここでJーTECが取り組まれている自家培養軟骨の製造に関して、森由紀夫取締役製造部長に、説明していだきました。

●自家培養軟骨
高齢社会による変形性関節症の増加、スポーツの普及による若年者の軟骨損傷など、軟骨の疾患が増加している。軟骨組織は、一旦、損傷すると自然治癒できないといわれている。J-TECでは、軟骨損傷を自己の軟骨細胞で修復することを目的として、広島大学の越智光夫教授が確立し、臨床実績のある自家軟骨細胞の培養技術を導入して、治験を開始している。培養手順は、次のとおり。①患者さんの軟骨を採取。②軟骨組織をバラバラにして、軟骨細胞をコラーゲンの中で培養する。③一定期間、CO2インキュベータで培養する。週に数回は培養液の交換と培養状態の観察のために、インキュベータから取り出す必要がある。④培養軟骨を患者さんに移植する。この週数回の培養容器の取り出しが、人手に頼る限り、ヒューマンエラーやコンタミネーションを発生させる危険因子となる。培養作業で避けられないインキュベータからの培養容器の取り出しが、人手に頼る限り、取り違えやコンタミネーションの発生リスクが存在する。また、多くの患者さんに対応する製造段階になるとインキュベータ内には複数の患者さんの培養容器が並ぶことになる。その際、培養容器の出し入れが頻繁になり、取り違えというヒューマンエラーに加えて、頻繁な扉の開閉による器内環境環境の変動やコンタミネーションのリスクが増し、培養物の品質に大きな影響を及ぼす。長期間の培養中にバーコード管理による自動化と、最小限のシャッタ開閉による自動搬送により、試料の取り違えを防止し、器内培養環境の変化を最小限にし、汚染も防ぎ、ヒューマンエラーを無くすことができる。

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三洋との共同開発で軟骨培養にマッチした検体管理用ソフトやハードウェア
開発が可能に

「2002年頃に、培養作業の自動化を試みました。当時は外国製品を選定しましたが、サービスやメンテナンス面の対応、あるいは培養管理用のソフトウェア開発が充分ではなかったのも事実でした。その後、国内メーカーの数社から引合いがありましたが、細胞培養用インキュベータとして定評のある三洋電機バイオメディカとの共同開発によって『自動搬送インキュベータ』を製作することにしました。三洋製のインキュベータは、UV+銅合金ステンレスによる、培養しながらコンタミネーションを防止するというコンセプトが決め手でした。自動搬送インキュベータの運用上、患者さんの細胞が絶え間なく入出庫するため、コンタミネーションを防止するために培養を中止することはできないわけです」

自動搬送インキュベータのメリットについて、次のようにまとめていただきました。

●自ヒューマンエラーを完全に防止できる
培養軟骨は、患者さんから託された大切な細胞組織である。手作業では、取り違え、誤操作、管理ミスなどを完全に防止できない。搬入出から培養までバーコード管理ができる自動搬送インキュベータは、パソコンによる自動培養・管理が可能で人的エラーを最大限に低減できる。

●培養環境の安定化とコンタミネーション防止
外扉・内扉を開閉することなく、わずかな開口部で培養容器が搬入出できるので、器内環境はほとんど変化しない。また、開閉による器外からのコンタミネーションも防止できる。

●高集積化により設置面積が大幅に減少できてローコスト
自動搬送インキュベータには、標準プレートの場合は109収納できる。従来のインキュベータでは、このように大量かつ識別が必要な場合、個々の容器ごとにインキュベータを専用化するか、最低でも培養棚ごとに分けて管理する必要があった。バーコードを利用した自動搬送により高集積化が可能となり、設置面積は大幅に小さくすることが可能になった。その結果、数十台のインキュベータを購入するより、コストやスペースの面で大幅なメリットがあった。「いまは開発の段階ですが、製造を開始した際には、自動インキュベータの増設を予定しています。高品質の培養製品を製造するために、患者さんの信頼を得るためにも、つねに新しい製造ラインづくりをしていかなければならないと思います」一日も早い本格稼動が待たれています。

納入先

株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
開設 1999年2月
所在地 愛知県蒲郡市三谷北通6丁目209番地ー1
URL http://www.jpte.co.jp
株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングイメージ

納入機器

自動搬送インキュベータ:MHTSー20MCO/CO2インキュベータ:MCOー18AIC/5AC/超低温フリーザ:MDFー1155ATNバイオメディカルフリーザ:MDFーU333/薬用保冷庫:MPRー414F/214FS ほか多数

微生物実験室イメージ
同社で活躍するCO2インキュベータMCOー18AIC

掲載内容は2005年5月現在のものです。