無菌調剤・調整で在宅医療を支え、豊かな経験を活かし患者さんと病院を結ぶ調剤併設型ドラッグストア。
株式会社 スギ薬局 地域医療連携室長
堀田 耕次良 氏
在宅医療で必要となる栄養輸液の調製・製剤を手がけられておられる薬局がまだまだ少ない中で、愛知県安城市に本社を置き、関東、中部、関西地方を中心にチェーン店を展開されているスギ薬局様は、すでに2003年からクリーンルームを設置され無菌調剤に取り組んでこられました。今回は名古屋市内のスギ薬局谷口店様の無菌調剤室で実際の作業を見せていただくとともに、同社地域医療連携室長の堀田耕次良氏にお話を伺いました。
スギ薬局様のプロフィールを簡単にご紹介いただけますか
創業は1976年です。主に医薬品・健康食品・化粧品・日用品の販売と処方箋サービスを目的とした薬局としてスタートしました。2000年から2003年までジャスダック・ジャパンに上場し、2001年からは東証一部と名証一部に上場してます。現在、関東から関西に渡る地域に379店舗のスギ薬局店舗ネットワークを展開しています。当社は創業時より、物販のみのドラッグストアではなく調剤併設型の薬局として地域の医療に貢献したいという強い希望があり、治療や医薬品の相談ができる薬局としての存在意義を掲げています。このような理念のもとに無菌調剤にもいち早く取り組んできました。
無菌調剤の対象となる在宅医療の患者さんとはどのような方ですか
栄養輸液であるTPNが主になります。通常は消化器官から栄養を取り込んでいますが病気により障害が出ている患者さん、例えばガンの終末期の患者さんや先天的に腸から栄養がとれない病気の患者さんなどで在宅で治療しておられる方が対象になります。静脈から栄養を補給します。TPNは高カロリー輸液ですので末梢の静脈からではなく、中心静脈から投与します。
調剤された後どのような経路で患者さんに届くのですか
自前のデリバリーシステムで薬剤師がご自宅に配送します。外部に委託しないのは患者さんやお世話されている方にお会いして使用方法を説明したり相談を受けたりというコミュニケーションのためです。地域に深く密着することで、より豊かな在宅医療環境を提供したいと考えています。
具体的に無菌調剤の内容について聞かせてください
無菌調剤室ではTPN、末梢静脈点滴・経腸栄養法などに対応できる薬剤のほか痛み止めの麻薬や抗ガン剤などの調剤・調製が可能です。すべて医師の処方箋の指示に基づいて調剤・調製します。調剤・調製のためにはクリーンルームの設置が必須となります。当社が導入したクリーンルームはクラス10000の性能の無菌室です。さらに内部に設置したバイオクリーンベンチを使い高度な無菌環境の中で作業を行っています。病院・医師からの処方箋を一方通行的に処理するだけではなく、現場の生きた情報をフィードバックすることで医師と話し合いながら、患者さんに合わせた調剤・調製に取り組んでいます。より適切な処方のためにお医者様にアドバイスすることもあります。
名古屋市千種区谷口町 スギ薬局 谷口店
使い勝手などでご不満な点は
現場からは特にはないですね。問題もなく使い勝手はよいということで評価は高いと思います。希望をいえば、新規設置計画時にそれぞれの薬局ごとに敷地面積など立地条件が異なりますので無菌調剤室のレイアウトや広さなどその都度変更して対応するわけですが、物販エリアとの兼ね合いや運用の効率・動線などもふまえた上での施工提案をいただけたら非常に参考になります。
将来展望などをお聞かせください
2010年には全国で1000店舗を目指して展開する予定です。現在、無菌調剤室は7店舗ですが、2012年には1割に当たる100店舗に併設する計画です。これらの店舗は半径10kmを基準とした営業エリアごとに設置し、お客様が10～15分でお店に行けるような体制にしたいと考えています。また、時期は未定ですが、24時間対応ということも構想しています。さらにドラッグストアということを生かして調剤の配送と同時に生活用品などをデリバリーできるようなサービスも実現したいと思います。
スギ薬局 谷口店 無菌調剤室
クラス10,000のクリーンルーム内部と
バイオクリーンベンチMCV-B131S。
薬剤などを患者さんの自宅へ配送する専用車両。
細心の注意を払い、無菌状態の
環境で調製・調剤が行われる。
調剤する薬剤の一例。
クリーンルーム手前のエアシャワー室。
壁面からの強い風で塵を除去する。
準備室とクリーンルームと間には
受パスボックスが装備されている。