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CASE STUDIES 導入事例

Vol.03 岡山大学医学部付属病院 遺伝子・細胞治療センター (岡山)

「改変ウイルスによる新しいがん治療法」に高まる期待
岡山大学医学部付属病院 遺伝子・細胞治療センター 
助教授 医学博士 藤原 俊義 
岡山大学医学部附属病院 遺伝子・細胞治療センター 助教授 医学博士 藤原 俊義 氏

遺伝子治療研究のキャリアが新しいがん治療法を生む

岡山大学医学部附属病院は、1996年に肺がんに対するp53遺伝子治療の実施計画を文部省に申請するなど、遺伝子治療に関してはわが国でも特筆されるキャリアを有しています。
今、高い関心を呼んでいる「改変ウイルスによる新しいがん治療法」も、そうした実績のなかから開発され、p53遺伝子治療で用いるヒトアデノウイルスがその母体となっています。
腫瘍融解ウイルス《Telomelysin=テロメライジン》と呼ばれるこの改変ウイルスは、同医学部・藤原俊義医学博士が中心となって開発したもので、“がん細胞で特異的に増えて正常細胞では増えない”をコンセプトにしています。
藤原博士は「がん細胞に選択的に作用するので抗がん剤として有用であり、今後の臨床試験により、がん治療用薬品として期待されます」と話されます。さらに、腫瘍溶解ウイルスTelomelysinは①投与量を低く設定してもがん局所で自律増殖し、副作用の可能性が低い②全身循環して遠隔部位の腫瘍内でも増殖することが確認されており、肉眼的に認知できない微小がんも対象とすることができる——などの特徴を有しています。

腫瘍融解ウイルス《Telomelysin》世界へデビュー

このようなウイルスがどのようにして創り出されたのでしょうか。
前述のようにTelomelysinの母体は遺伝子治療に用いられるヒトアデノウイルスです。このウイルスに、がん細胞でよく働く酵素のテロメラーゼのプロモータhTERTおよびE1遺伝子などを使って、遺伝子操作して作成されたものがTelomelysinです。hTERTプロモータによる制御で、Telomelysinは、正常細胞では増殖せず、テロメラーゼ活性が認められるがん細胞で選択的に増殖し、がん細胞に特異的に細胞死を誘導します。
世界的にも例をみない新しいコンセプトのTelomelysinは、現在、国際特許・国内特許が出願されており、開発に携わった藤原博士らは、Telomelysinの研究・開発・製造・販売を目的とする岡山大学発ベンチャービジネス「オンコリスバイオファーマ株式会社(本社・東京)」を立ち上げています。ここ遺伝子・細胞治療センターは、このベンチャー企業のいわば研究開発セクションの役割も果たしています。
患者さんにとって、より高いQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を保ちながら、治療ができるということは切実な望みです。その面でも、Telomelysinに寄せられる期待は、計り知れないものがあります。

ペプチド療法や樹状細胞療法なども進展

この「腫瘍溶解ウイルスTelomelysinによる新しいがん治療法の開発」のほか、同センターでは、「進行胃がんに対するテーラーメード・ペプチド療法」「切除可能胃がんに対するp53蛋白質パルス樹状細胞療法」などのプロジェクトが鋭意進められています。

●進行胃がんに対するテーラーメード・ペプチド療法
この療法は、胃がんや大腸がんに対して、抗がん剤による化学療法とがんワクチンによる免疫療法を併用するもので、「TS-1」などの抗がん剤が耐性のため効かなくなった患者さんや手術ができない患者さんが対象。ワクチンとなるペプチドは60数種類からその患者さんに適したペプチドが選ばれます。
複数のアミノ酸が結合した化合物であるペプチドは、がん細胞を集中的に攻撃する免疫細胞を増殖する働きがあります。患者さんに適したペプチドを用いることで、より効果的に免疫力を回復させ、抗がん剤の効きめを復活させることが期待でき、“テーラーメード療法”といわれる所以もここにあります。

がん細胞での選択的なウイルス増殖と細胞死誘導イメージ

●切除可能胃がんに対するp53蛋白質パルス樹状細胞療法
この療法は、患者さんから樹状細胞を採り出し、細胞障害性T細胞を誘導できるp53蛋白質を抗原として樹状細胞にパルスして、その樹状細胞を患者さんの腫瘍の中に入れるというものです。これまでの基礎研究の積み重ねのなかで効果が確認されており、樹状細胞を使ったワクチン療法として、実際に患者さんに適用すべく、今プロトコールが作成されつつあります。
こうした先端医療の臨床開発の文字通り“拠点”である同センターは、ウイルス調製・精製用P2ルーム2室、細胞調製用クリーンルーム2室、品質管理室、保存室などを有しています。
当社は同センターの設計・施工をはじめ、CO2インキュベータ、バイオハザード対策用キャビネット、超低温フリーザなど、関連機器をあわせて納入、臨床実践へ向けて積み重ねられるさまざまな実験活動を底辺で支えています。

ウイルス治療やペプチド療法など先端医療の臨床実践へ

 

岡山大学医学部附属病院 遺伝子・細胞治療センター
開設 2003年4月
所在地 岡山市鹿田町2丁目5番1号
岡山大学医学部附属病院 遺伝子・細胞治療センターイメージ

納入機器

CPC(セルプロセッシングセンター)200m2/CO2インキュベータ:MCO-18AIC×10台/バイオハザード対策用キャビネット:MHE-130AB3×5台/理化学用高圧蒸気滅菌器:MLS-3750×5台/超低温フリーザ:MDF-U50V×2台/フリーザ付薬用保冷庫:MPR-414F×6台……他

早くから肺がん、前立腺がんの遺伝子治療に取り組んできた岡山大学医学部附属病院では、先端医療の臨床開発拠点の必要性から、2003年4月、「遺伝子・細胞治療センター」を設置し、翌2004年に稼働を開始しました。従来の研究・医療体制とは異なり、遺伝子治療、再生医療など先端医療の臨床実践に特化した機能をめざします。現在、「改変ウイルスによる新しいがん治療開発」「胃がんに対するペプチド療法」「胃がんに対する樹状細胞療法」などのプロジェクトが進行、がん治療の将来を切り開くものとして内外の注目を集めています。

岡山大学医学部附属病院 遺伝子・細胞治療センター見取り図イメージ
フリーザ付薬用保冷庫MPR-414Fイメージ
ウイルスの取り扱いや、細胞の調製に欠かせない
バイオハザード対策用キャビネットMHE-130AB3
フリーザ付薬用保冷庫MPR-414Fイメージ
試薬関連を保存するフリーザ付薬用保冷庫MPR-414F
細胞培養の必需機器CO2インキュベータMCO-18AICイメージ
細胞培養の必需機器CO2インキュベータMCO-18AIC

掲載内容は2004年9月現在のものです。