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クリニック開業 医師 事務長 2026.10.19 公開

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医師の開業成功率の状況をデータで解説|診療科別の実態と5つのポイント

医療機関の倒産や休廃業は件数こそ増えているものの、全国の診療所数と照らしあわせると1%に満たない水準にとどまります。倒産・休廃業せずに診療を続けている状況を1つの成功指標と仮定した場合、そのパーセンテージは高い状況といえるでしょう。一方で、開業後の経営を安定させるには、医師としての技術に加えて経営者としての準備が欠かせません。本記事では、最新データで見る開業成功率の実態をはじめ、診療科別の開業しやすさ、開業の進め方まで解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業直後の悩み #開業検討

目次

なぜ医師は開業を選択するのか

厚生労働省調査「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、令和6年(2024年)時点で、70,046人の医師が診療所開設者として自らの医療を実践しています。

なぜ医師は開業を選択するのか
出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|統計表6医師数、構成割合及び人口10万対医師数の年次推移、施設・業務の種別各年12月31日現在P34より著者がグラフを作成」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/24/dl/R06_toukeihyo.pdf)

ここでは、開業医になるメリットと、実際に開業した医師がどのような動機で決断したのかを見ていきます。

開業医になるメリット

開業医の主なメリットは、下記の4つです。

  • 収入アップが期待できる
  • 理想とする医療を形にできる
  • 診療時間や休診日を自分で決められる
  • 地域医療に長く貢献できる

収入面のメリットは、次章でデータとともに解説します。診療方針や医療機器の導入も自身の判断で決められるため、患者さん一人ひとりにあわせた医療を実践しやすくなります。

また、働き方の面でも、地域の特性にあわせた診療時間の設定が可能です。たとえばオフィス街なら平日夜間、住宅街なら土曜や祝日の診療にニーズが集まりやすい、などが考えられます。当直やオンコールから離れ、育児や介護と両立しやすくなる点も魅力です。

開業医のメリット・デメリットを詳しく解説した記事も用意しているため、あわせて参考になさってください。

医師が開業する主な動機

開業医を選択する動機は、医師それぞれの価値観や目指す医療の形によって異なります。日本医師会が実施した「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート」では、「自らの理想の医療を追求するため」が42.4%と最多、「将来に限界を感じた」(35.1%)「経営も含めたやりがい」(26.3%)と続く結果でした。

医師が開業する主な動機

また、同調査では、開業年数が短い開業医ほど勤務医の過重労働を負担に感じているとの結果も出ています。開業を目指す医師は、やりがいとストレス軽減を求める傾向にあると整理できるでしょう。

出典:日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査定例記者会見2009年9月30日」(https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20090930_21.pdf)

開業医の平均年収と収入の実態

厚生労働省「第25回医療経済実態調査」(2025年11月公表)によると、医療法人立の一般診療所における院長先生の平均給与(賞与を含む)は、令和6年度で約2,898万円でした。一方、一般病院に勤務する医師の平均給与は約1,485万円です。院長先生の給与は勤務医のおよそ2倍にあたり、開業による収入面のメリットは数字からも読み取れます。

ただし、診療所の経営環境は厳しさを増しています。同調査では、医療法人立の一般診療所の損益率(収益に占める利益の割合、平均値)が令和5年度の8.3%から令和6年度は4.8%へ低下しました。

なお、個人立の診療所では、院長先生の報酬にあたる部分が費用に含まれないため、損益差額が院長の手取りと一致するわけではありません。医療法人立の院長先生の給与とは、単純に比較できない点にご注意ください。

出典:厚生労働省「第25回医療経済実態調査の概要(令和7年11月26日版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001599547.pdf)

出典:厚生労働省「【参考】前回ご指摘いただいた資料について(第25回医療経済実態調査)一般診療所の経営状況P8」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001603460.pdf)

医師の開業成功率は実際どのくらい?

医師の開業成功率は、データで見ても高い水準といえます。その理由は、下記のとおりです。

  • 倒産・休廃業は診療所全体の1%未満
    689(2025年倒産・休廃業・解散件数 )÷105,521(2025年10月1日時点一般診療所施設数)
  • 倒産に限ると0.03%
    28(2025年倒産件数)÷105,521(2025年10月1日時点一般診療所施設数)

※ここでは、倒産・休廃業せずに診療を続けている割合を成功率の目安として提示

出典:厚生労働省「令和7(2025)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況Ⅰ医療施設調査P1」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/25/dl/02sisetu07.pdf)

出典:帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)(2026年1月23日発表)」(https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260123-iryoukikan2025/)

「開業医は失敗しにくい」「最近は廃業が増えている」など、開業の成功率については、さまざまな情報が飛び交っています。ここでは、公的統計と民間調査のデータをもとに、開業医の現実と成功を妨げる要因を順に整理します。

なお、数字だけでなく、背景にある要因まで押さえておくと、開業判断の精度を高められるでしょう。ご自身の開業計画と照らしあわせながら、読み進めてみてください。

①データで見る開業医の現実

帝国データバンクの調査によると、2025年に倒産した医療機関は66件、休廃業・解散は823件で、いずれも過去最多を記録しました。診療所に絞ると、倒産は28件、休廃業・解散は661件です。医療機関全体の休廃業・解散は、10年前(2015年の359件)と比べて2.3倍に増えています。

区分 倒産 休廃業・解散
病院 13件 15件
診療所 28件 661件
歯科医院 25件 147件
合計 66件 823件

同調査では、70歳以上の経営者が56.7%を占めていました。つまり、休廃業・解散が増え続ける最大の要因には、経営者の高齢化と後継者不足が大きく影響しています。件数の増加だけを見て「開業は危ない」と判断するのは早計といえるでしょう。

出典:帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)(2026年1月23日発表)」(https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260123-iryoukikan2025/)

②成功を妨げる要因

前述の帝国データバンクの調査では、診療所を経営する法人の約4割が赤字という実態も報告されました。増加するコストと、収益源となる診療報酬のバランスが難しい状況といえるでしょう。また、倒産以外にも、開業医の経営を揺るがす要因は複数挙げられます。

【1. 倒産以外の撤退リスク】
院長先生自身の体調悪化や後継者不在により、経営が順調でも閉院せざるを得ないケースがあります。院長先生一人に診療を依存する診療所ほど影響を受けやすいため、万一に備えた体制づくりを早めに考えておきましょう。

【2. 収益性と理想の医療の両立】
一人ひとりに時間をかけた丁寧な診療は、患者満足度を高めます。一方で、1日に診療できる患者数は限られます。理想の医療を追求しながら経営を成り立たせるには、診療スタイルに見合う収支計画が必要です。

【3. 地域による競争環境の違い】
同じ診療科でも、人口構成や競合医療機関の数によって集患のしやすさは大きく変わります。開業地の選定は、成否を左右する大きな岐路です。調査の進め方は「②立地選定と市場調査」で解説します。

いずれも、開業前の準備である程度コントロールできる要因です。

出典:帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)(2026年1月23日発表)」(https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260123-iryoukikan2025/)

診療科によって開業のしやすさは変わる?

大型の医療機器を必要としない診療科ほど、開業資金を抑えやすい傾向にあります。在宅診療や精神科・心療内科は初期投資が小さく、借入の返済負担も軽くなるため、比較的始めやすい診療科といえるでしょう。

一方、画像診断機器や手術設備が必要な診療科は、資金がかさむ分、収益化までの計画をより綿密に立てる必要があります。

具体例として、開業支援ページにまとまっている「診療科別コラム」の記載内容をもとに、開業資金の傾向は下記のとおりです。

【開業資金が比較的少ない診療科】

  • 在宅診療(約1,700万円)
  • 精神科・心療内科(約3,700万円)
  • 糖尿病内科(約4,400万円)
  • 小児科(約4,500万円)
  • 皮膚科(約4,800万円)

【開業資金が高額になりやすい診療科】

  • 脳神経外科(MRI導入で約1億5,000万円)
  • 人工透析内科(テナントで1億円程度)
  • 肛門科(約9,000万〜1億2,000万円)
  • 美容外科(約9,800万円)
  • 耳鼻咽喉科(CT導入で約9,000万円)

※物件の広さや医療機器の有無など、試算の前提は記事ごとに異なります。

開業後の収入規模

開業資金とあわせて確認したいのが、開業後の収入規模です。厚生労働省「令和6年度医科診療所の主たる診療科別の医療費等の状況」から、1施設あたりの医療費を開業資金と並べると、次のとおりです。

診療科 開業資金の目安 1施設あたり医療費(令和6年度)
心療内科 約3,700万円 7,115万円
皮膚科 約4,800万円 7,791万円
小児科 約4,500万円 7,861万円
眼科 約6,500万円 1億2,964万円
整形外科 約8,500万円 1億4,175万円
脳神経外科 約1億5,000万円 1億5,171万円
出典:厚生労働省「令和6年度医科診療所の主たる診療科別の医療費等の状況」(2026年1月)(https://www.mhlw.go.jp/content/001641356.pdf)

※1施設あたり医療費は、保険診療の医療費総額を施設数で割った値です。人件費や家賃などの費用を差し引く前の金額のため、院長先生の収入とは異なります。

心療内科や皮膚科は開業資金を抑えやすく、少ない投資で始めたい医師に向いているといえるでしょう。一方、整形外科や脳神経外科は開業資金が高額になりやすいものの、1施設あたりの医療費も1億4,000万円を超え、投資に見合う収入規模が見込める診療科です。

医師の開業に必要な準備とは

診療所の開設に、年齢や勤務年数による制限はありません。しかし、2026年4月から開業規制が施行され、どこで・どのように開業するのかは、これまで以上に見ておくべきポイントとなりました。

また、開業では医師としての技術に加え、スタッフをまとめる力や経営者としての判断力も欠かせません。開業準備は多岐にわたるため、全体像を早めにつかんでおくと計画的に進めやすくなります。開業規制を踏まえた開業の全体像を解説した記事も用意しているため、あわせて参考になさってください。

医師の開業成功率を高める5つのポイント

開業医として継続できるかどうかは、綿密な準備と実行可能な計画にかかっています。多くの医師が経験する開業の決断から実現まで、5つのポイントについて内容を見ていきましょう。

①開業コンセプト・提供したい医療を熟考する

最初に取り組みたいのが、開業コンセプトの明確化です。「どのような患者さんに、どのような医療を届けたいのか」を言語化しておくと、立地選定からスタッフ採用まで、あらゆる判断の軸になります。

たとえば「働く世代が通いやすい内科」と決めれば、駅近の立地や夜間診療、Web予約の導入など、選ぶべき方向性が自然と定まります。

コンセプトを考える際は、次の問いが手がかりになるでしょう。

  • 勤務医時代の専門性をどう生かすか
  • 主な患者層はどのような人か
  • 地域にどのような医療ニーズがあるか
  • 10年後にどのような診療所でありたいか

②立地選定と市場調査

立地は、開業後に簡単には変えられない要素のひとつです。次の3つの視点で調査を進めましょう。

立地選定の視点 詳細内容
競合分析
  • 半径1〜2km圏内を目安に医療機関をリストアップする
  • 同じ診療科の診療所の場所や診療時間、待合室の混雑状況などを確認する
  • 近隣の大型病院との連携の可能性や、地域で不足している医療サービスも把握する
患者層の把握
  • 年齢構成や世帯構成、昼間人口と夜間人口の違いを調べる
  • ファミリー層が多い地域と高齢者が多い地域では、求められる診療時間や診療内容も変わる
  • 学校や商業施設の利用者も、潜在的な患者層として確認しておく
物件選定
  • 駅からの距離や駐車場の有無、看板の視認性を確認する
  • 居抜き物件は工事費を抑えられる一方、設備の老朽化に注意が必要
  • 新築や新規テナントは設計の自由度が高いものの、工期と初期費用が増える傾向にある

③資金計画と収支シミュレーション

開業資金は、診療科や設備によって数千万円から1億円を超えるケースまで幅があります。自己資金は総額の2〜3割程度を確保し、残りを融資で賄うケースが一般的とされています。

資金調達の主な方法は、下記のとおりです。

  • 民間金融機関からの融資
  • 日本政策金融公庫の融資制度
  • 医師会や自治体の開業支援制度
  • 福祉医療機構の融資

収支計画では、1日あたりの想定患者数から月間の売上を算出し、人件費や家賃などの固定費、薬剤費などの変動費を差し引いて資金繰り表を作成します。開業直後は患者数が伸びにくいため、数か月から1年分程度の運転資金を確保しておくと、経営が軌道に乗るまでの不安が和らぐでしょう。

開業資金運用について解説した、お役立ち資料を用意しています。以下よりダウンロードできるため、ご活用ください。

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④差別化戦略の構築

同じ地域に同じ診療科の診療所がある場合、患者さんから選んでもらえる理由をつくる必要があります。差別化の方向性として、次のような取り組みが挙げられます。

  • 専門分野を診療の柱に据える
  • 専門医資格をWebサイトで発信する
  • 季節変動を補う診療内容を組み合わせる
  • Web予約や待ち時間対策を導入する

たとえば同じ内科でも、糖尿病や睡眠時無呼吸症候群など特定の分野に強みを打ち出せば、近隣の一般内科との役割分担が可能です。

また、患者さん目線での利便性向上も、差別化の一つです。待ち時間の短さや予約のしやすさは、通院先を選ぶ際の判断材料になりやすく、口コミを通じて集患にもつながる施策といえるでしょう。

自院に適した予約システムの選定ポイントを解説した記事も用意しているため、参考になさってください。

⑤医療DXへの対応

開業後の経営を左右する要素として見落とせないのが、外部環境の変化への対応力です。国は医療DXを推進しており、オンライン資格確認や電子処方箋、マイナ保険証が事例として挙げられます。また、電子カルテについても、政府目標として「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関での導入」が示されています。

⑤医療DXへの対応
出典:厚生労働省「医療情報化推進方針案等についてP3」(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001742891.pdf)

開業時からDX対応を見据えた体制を構築しておけば、後から入れ替える手間やコストを抑えられ、制度改正にも落ち着いて対応できます。電子カルテをはじめシステムを選定する際は、国の医療DX施策の状況をご確認ください。

医療DXの具体例をまとめた記事も用意しているため、あわせて参考になさってください。

  • メディコムがご提案する失敗しない電子カルテの選び方メディコムがご提案する失敗しない電子カルテの選び方

まとめ|開業検討は適切な情報収集から

医師が開業医として継続できる割合は、倒産や休廃業の数値から見ても高いといえます。一方で、近年の物価高によるコスト増や、開業規制など厳しい側面への対策も必要です。開業後の経営を安定させられるかどうかは、コンセプト設計や立地選定、資金計画などの事前準備が明暗を分けるといっても過言ではないでしょう。

開業を考え始めたら、次の3つのステップから動き出してみてください。

  • 開業に関する情報を集める
  • 自己資金と収支を試算する
  • 開業支援の専門家に相談する

ウィーメックスでは、医師の開業を支援する豊富な資料やセミナー動画、コラムなどをまとめた「クリニック開業ガイド」をご用意しています。開業への一歩を踏み出すきっかけとして、開業後のお悩み解決の一助としてご活用ください。

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著者情報

武田 直也 様

フリーランスWebライター。18年間、医療事務として合計3つの医療機関に従事。診療報酬をはじめ、診療情報管理士の資格を活かしたカルテ監査やDPCデータ分析、クリニカルパスなどの医療情報利活用に精通している。

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