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クリニック経営 医師 事務長 2026.04.16 公開

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【2026年版】医師の働き方改革の現状と今後の方向性を解説

2024年4月、医師にも時間外労働の上限規制が適用され、医師の働き方改革が本格的に始まりました。施行から約2年が経過した現在、制度は医療現場にどのような変化をもたらしているのでしょうか。本記事では、2026年現在の最新状況を踏まえ、制度の基本的な内容から令和8年度診療報酬改定との関連など、病院勤務医や医療機関の管理者が把握すべき情報をまとめています。自院の状況と照らし合わせながら、具体的な対策の参考になさってください。

※本内容は公開日時点の情報です

#医療政策 #労務管理

目次

医師の働き方改革の現状

2024年4月の施行から約2年が経過しましたが、全体的な影響は当初の懸念よりも抑えられている状況です。日本医師会が実施した「令和7年度 医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査」では、全体的に想定したほどの影響は出ていないとの総括が公表されました。

医師の働き方改革の現状
出典:公益社団法人日本医師会「令和7年度医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査結果P7」(https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20251126_3.pdf

また、厚生労働省が実施した「医療機関における勤務環境に関する実態調査」では、施行後の働き方・勤務状況について、下記6つの区分で実態がまとめられました。

医師の働き方改革の現状
医師の働き方改革の現状
出典:公益社団法人日本医師会「令和7年度医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査結果P7」(https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/files/Attachment/592/%E5%8C%BB%E7%99%82%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%8B%A4%E5%8B%99%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%AE%9F%E6%85%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB.pdf

働き方改革に関連する診療報酬改定項目

令和8年度(2026年度)診療報酬改定では、医師の働き方改革・診療科偏在対策が重点課題の1つとして位置づけられています。

主な改定内容として、以下2つの点数が新設されました。

加算名 内容・評価のポイント
地域医療体制確保加算2(720点)
  • 若手医師が減少し体制確保が必要な診療科の医師を対象に、勤務環境・処遇の改善に取り組む医療機関を評価
  • 従来の地域医療体制確保加算(620点)と並立して新設
外科医療確保特別加算(当該手術の所定点数の100分の15 に相当する点数を加算) 長時間・高難度手術の実施体制を整備し、外科医の勤務環境・処遇を改善しつつ手術を行う場合の評価として新設

そのほか、入院診療計画書等で求められていた署名または記名・押印の廃止(記名のみで可)など、業務効率化・負担軽減も図られました。生成AIを組織的に活用した場合の医師事務作業補助体制加算の柔軟化も盛り込まれており、医療DXと働き方改革が一体的に推進される方向性が打ち出されていると整理できます。

出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について 医科全体版P51・52・140・208」(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686050.pdf

時間外労働時間の上限(水準別)

医師の時間外労働には、AからCまでの4区分(水準)が設けられています。各水準の対象と上限時間は以下のとおりです。各水準は、現在勤務している医療機関の労働条件に基づいて適用されます。医療機関ごとに労働条件は異なるため、詳細はご自身で確認が必要です。

なお、患者さんの治療が目的とならない産業医や検診センターの医師は、一般労働者と同様の時間外・休日労働の上限規制(年間720時間)が適用されます。

時間外労働時間の上限(水準別)
出典:厚生労働省「医師の時間外労働の上限規制の解説P2」(https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/files/Attachment/533/%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%AE%E4%B8%8A%E9%99%90%E8%A6%8F%E5%88%B6%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC.pdf

A水準

すべての勤務医に原則として適用される基本の水準です。年間960時間・月100時間未満の時間外・休日労働が上限と定められています。

なお、2035年度末までには、すべての医師がA水準の年間960時間以下が「医師の労働時間短縮に関する指針」に明記されています。3年ごとの段階的な見直し含め、動向については定期的に確認しておくとよいでしょう。

出典:厚生労働省「医師の労働時間短縮に関する指針」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001256572.pdf

B水準

連携B水準・B水準ともに、都道府県の指定を受けることで年1,860時間を上限として適用されます。

連携B水準は、勤務先以外の副業・兼業として地域医療を支える派遣先での勤務に適用されます。一方のB水準は、自院内での長時間労働が地域医療の確保のために必要な場合に適用されるものです。

どちらもA水準同様、暫定的な措置のため各勤務先では、労働時間短縮に向けた計画的な取り組みが求められています。

出典:厚生労働省「医師の働き方改革」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001129457.pdf

C水準

C水準が適用される医師の年間上限も1,860時間となり、追加的健康確保措置として面接指導と勤務間インターバルの確保が義務づけられます。

C-1水準は初期・後期臨床研修医が対象です。C-2水準は、高度技能の修得・向上のために集中的な修練が必要な医師に適用されます。

出典:厚生労働省「医師の働き方改革」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001129457.pdf

あらためて確認しておきたい宿日直・アルバイトの取扱い

宿日直やアルバイト(副業・兼業)の取扱いは、勤務スタイルに直接影響するため、正しい理解と対応が求められます。現行制度での取扱いを整理してお伝えします。

宿日直の取扱い

労働基準監督署の許可を受けた宿日直は「労働時間」ではなく「宿日直」として扱われます。許可を受けた宿日直の時間は時間外労働の上限規制の対象外となるため、日本医師会の調査からも多くの医療機関で宿日直許可の取得が進んでいる状況が読み取れます。

宿日直の取扱い
出典:公益社団法人日本医師会「令和7年度医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査結果P26」(https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20251126_3.pdf

宿日直の対応にあたり、勤務間インターバル(休息時間)のルールに従う必要があります。あらためて以下2つの内容を確認しておきましょう。

宿日直の取扱い
出典:厚生労働省「医師の勤務間インターバルの仕組みについてP6」(https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/files/Attachment/535/%E5%8B%A4%E5%8B%99%E9%96%93%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB.pdf

なお、宿日直中に通常の勤務と同態様の業務(救急対応・処置等)が発生した場合、発生した時間は「労働時間」扱いです。

アルバイトの取扱い

医師がアルバイト(副業・兼業)として他の医療機関に勤務する場合、本業と副業先の労働時間は通算されます。すべての勤務先での時間外・休日労働の合計が、適用水準の上限(月100時間)を超えないよう管理することが必要です。

また、非常勤医師を活用する診療所側も、アルバイト医師の労働時間を把握し、通算管理に協力する姿勢が求められます。アルバイト先での労働時間も含めた適切な時間管理が、本人と医療機関の双方に求められる点は、あらためて確認しておきましょう。

医師の働き方改革のメリット・デメリット

働き方改革は医師個人と医療機関の双方に影響をもたらします。制度に伴うメリットとデメリットを整理してお伝えします。

医師側のメリット

時間外労働の上限規制により、医師のワークライフバランス向上が期待されます。

(ワークライフバランス向上によるメリットの例)

  • 心身の健康状態が改善する
  • 家族との時間が増加する
  • 育児・介護と仕事の両立が可能になる
  • 趣味や自己啓発の時間を確保できる
  • 燃え尽き症候群のリスクが低減する

また、タスクシフト・シェアの推進により、医師事務作業補助者や看護師等への業務移管が進み、医師が診療業務へ集中できる環境の構築にもつながります。事務作業が時間外労働の理由上位に挙がっている状況に鑑みて、大きなメリットといえるでしょう。

医師側のメリット
出典:厚生労働省「医療機関における勤務環境に関する実態調査P12」(https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/files/Attachment/592/%E5%8C%BB%E7%99%82%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%8B%A4%E5%8B%99%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%AE%9F%E6%85%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB.pdf

医療機関側のメリット

医師の勤務環境改善は、採用競争力と定着率の向上に直結します。求職中の医師が職場選択の際に勤務環境を重視する傾向は高まっており、働き方改革への取り組みが採用面でのアドバンテージとなるでしょう。

また、令和8年度診療報酬改定で新設された「地域医療体制確保加算2」や「外科医療確保特別加算」など、勤務環境改善の取り組みが診療報酬上でも評価されるようになっています。加算取得を見据えた体制整備が、経営面でも有利に働く局面が広がっているといえます。

医師側のデメリット

時間外労働の削減により、収入が減少するリスクがあります。当直や時間外手当が収入の大きな割合を占めていた医師にとっては、生活設計の見直しが必要になる場合があります。

収入減少への対応策として副業・兼業を検討する医師もいますが、その際も、すべての勤務先の労働時間を通算したうえでの時間外労働管理が必要です。

実際に手術件数が減少した医療機関の割合は増加しました。若手医師のキャリア形成の難易度が高くなることが懸念されます。

医師側のデメリット
出典:公益社団法人日本医師会「令和7年度医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査結果P17」(https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20251126_3.pdf

医療提供体制上のデメリット

救急・産科・小児科など夜間・休日対応が不可欠な診療科では、時間外労働の削減が医療提供体制に影響を与えるリスクがあります。

日本病院ほか4団体による合同調査では「地域の医療提供体制に関して生じている影響、もしくは生じる可能性がある影響」として救急医療体制の縮小・撤退が上位に位置する結果が明らかになりました。地域医療格差が拡大する懸念は、今後も注視が求められます。

医師側のデメリット
出典:公益社団法人全日本病院協会「2025年度医師の働き方改革に関する状況調査P12」(https://www.ajha.or.jp/topics/4byou/pdf/250918_2.pdf

働き方改革で活用できる補助金

医師の働き方改革を推進するにあたり、厚生労働省から補助金・支援制度が用意されています。主な制度を下表にまとめました。

制度名 概要
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)
  • 常時使用する労働者数300人以下または資本・出資持分3億円以下の病院・診療所等を対象に、医師の労働時間削減や勤務間インターバル制度の導入、働き方改革の推進に取り組む医療機関を支援
  • 取り組みの実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給
働き方改革支援金
  • 働き方改革への取り組みに際し、一時的な資金を支援する制度
  • 貸付限度額最大5億円、償還期間最長10年
  • 民間金融機関の支援が得られにくい場合に限る
医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度
  • 医療機関が医師・医療従事者等の勤務時間短縮に必要な設備を取得した場合の特別償却制度
  • 器具・備品、ソフトウェアのうち30万円以上のものが対象
  • 特別償却割合は取得価格の15%

最新の受付期間や詳細な申請要件は変更される場合があります。補助金の活用を検討する際は、厚生労働省の公式サイトで最新情報をご確認ください。

出典:厚生労働省「医師の働き方改革」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/ishi-hatarakikata_34355.html

働き方改革で想定される今後の方向性4選

2024年4月の施行後も、制度の見直しや政策の展開は継続しています。医療現場への影響が大きいと考えられる方向性を4点整理します。

時間外上限の見直し

連携B水準やB水準などの地域医療暫定特例水準は、2035年末を目標に終了が予定されています。今後、段階的な労働時間短縮が図られるため、政策の動向は定期的にチェックしておきましょう。

現時点での時間外の適切な把握と、長期的な視点での計画的な見直しの両面を進める必要性が求められるといえます。

タスクシフト・シェアのさらなる推進

令和8年度診療報酬改定でも、勤務環境を評価する点数が新設されました。他職種への業務移管への取り組みが診療報酬上でも有利になる方向性が示されており、今後もタスクシフト・シェアの推進は加速すると考えられます。

医師事務作業補助者の増員や、看護師・薬剤師・技師等への業務移管を組み合わせた体制整備が、医療機関の経営にも直結する時流の把握が欠かせません。

女性医師の就業継続支援と柔軟な勤務形態の整備

厚生労働省・日本医師会ともに、女性医師の就業継続支援を重点施策として位置づけています。短時間勤務制度や複数主治医制の普及、育休取得の促進などが今後の制度整備でも中核的な軸になると想定されます。

また、女性医師の離職防止・復職支援は医師不足対策としても有効であり、柔軟な勤務形態を可能にする環境整備が引き続き求められるでしょう。

出典:厚生労働省「女性医師の離職・復職に関する支援について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kinkyu/rishoku_fukushoku/index.html

AI・医療DXによる業務効率化

AI問診・音声入力・AI画像診断など医療DXの進展が、医師の時間外労働削減に実質的に貢献し始めています。つまり、働き方改革とDXは一体の政策として今後も推進されると想定されます。

令和8年度診療報酬改定でも、生成AIを組織的に活用した場合の医師事務作業補助体制加算の柔軟化が盛り込まれており、DX活用は医療現場でも加速していくでしょう。なお、医療DXに関する詳細な情報はこちらの記事も参考になさってください。

まとめ

医師の働き方改革は、2024年4月の施行から約2年が経過し、メリット・デメリット双方への影響が生じている状況です。

今後は、特例水準の段階的な終了に向けた準備や、タスクシフト・シェアの推進、医療DXの活用など複合的な対応が必要です。最新の政策動向は変化が続いており、継続的な情報収集が欠かせません。

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著者情報

武田 直也 様

フリーランスWebライター。18年間、医療事務として合計3つの医療機関に従事。診療報酬をはじめ、診療情報管理士の資格を活かしたカルテ監査やDPCデータ分析、クリニカルパスなどの医療情報利活用に精通している。

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