目 次
1. 医者にキャリアプランは必要?キャリアプランの重要性
医師は医大卒業後も一人前になるのに時間がかかる反面、生涯現役で活躍でき、仕事に困ることはありません。これまでは医師としてのキャリアについて深く考えなくとも、初期臨床研修を受けた医局を中心に医師としての経験を積み、専門性を深め、医局の指示通りにキャリアを積み上げていけば安泰でした。
しかし、今後の医局人事は少子高齢化や人口減とともに医師偏在解決のため、医師不足地域や診療科の課題解決が重要となり、研修医が希望通りの診療科や病院に配属されるとは限りません。
これまで以上に、医師がどのような医師でありたいのか、それに必要な医師として求められる知識・能力の向上に加え、プライベートの生活の充実を図るため、主体的にキャリアプランを計画的に考えることが大事です。
2. 20代後半のキャリアプラン
20代は、医師としての経験を積んで、専門性を確立し基盤を作る時期です。2年間の初期臨床研修で基礎的な臨床能力を身につけた後、専門性を身につける後期研修を受けます。2018年度より一般社団法人日本専門医機構が発足し、専門医の研修制度が統一化・標準化されました。9割の研修医がその後、「専攻医」として登録し、各病院が運営する専門医プログラムに参加しています。
キャリア上は、この専攻医としての3〜5年間のあり方が大きく影響してきます。専門医や博士号の取得、海外留学などの医師としてのキャリアプランに加え、プライベートでは結婚、育児などのライフプランも考える必要があります。
3. 30代のキャリアプラン
30代は、専門医を取得し臨床の経験も積み、勤務先からは指導力も求められる時期です。専門医取得前に考えていたキャリアプランに沿ったままいくのか、それともさらなる専門性の向上や開業を目指して、新たなキャリアにチャレンジするのかを決めて行動する時期でもあります。
転職を考える上でも、専門性が明確でリーダーなど指導的な役割を果たしてきた30代医師は、どの医療機関においても今後の中核人材として求められる人材です。この年代に求められるのは、医療の専門性に加えて臨床でのコミュニケーション力やチームマネジメント能力です。
大学病院でのキャリアアップや市中病院で地域医療の推進もしくは開業など、今後のキャリアプランを考え、不足している能力を習得することが大事です。
4. 40代のキャリアプラン
40代は、医師としてのスキル・経験ともに豊富で、院内でも診療や若手育成を任され頼りにされる働き盛りです。プライベートでもさまざまなライフイベントが発生し、公私ともに充実した日々を送る時期だと言えます。その一方、配偶者や子どもの将来や家族の介護など自分だけで意思決定できないことも増えます。「医局にいても将来性はあるのか」「実家近くで開業しようか」「こどもの教育はどうするか」など、医師のキャリアとプライベートの両面で悩む医師も少なくありません。
開業を決意する医師が多いのも40代です。開業するには多額な開業資金と経営者としての能力が求められます。このまま医局・市中病院での勤務を続けるのか、それとも開業するのか、医師として最終ステージまで考えた上でキャリアプランを見直す必要があります。
5. 50代のキャリアプラン
50代は、医師としてのピークを迎える時期です。大学医局や医療機関でも、組織内で責任のあるポジションを任せられます。定年まで現職を続けるか、定年後はどうするか、定年後を見据えたキャリアプランを再検討する時期になります。
医師の定年といえば、60歳もしくは再雇用で65歳まで、民間病院だと70歳まで現役を続けられるかもしれません。ただし、外科や救急など診療科によっては加齢にともなって自分の力をフルに発揮できない場合もあります。あらためて開業を考える場合もあるでしょう。
50代で働く環境を変えると、精神的な負担も大きくなります。あらためて医師・経営者として必要な能力や経験を考え、計画的に50代のキャリアプランを考えましょう。
6. 勤務医としてのキャリアプラン
勤務医としてのキャリアプランは、初期臨床研修後、専攻医の研修先を決める時点で考えます。勤務医といっても、さまざまな選択肢があります。
①専門領域のスペシャリスト
大学病院医局で基礎研究に打ち込む、最新医療機器を使い数多くの先進症例を診るなど
②地域の臨床医
市中病院で地域医療に貢献する、総合診療医や介護老人保健施設、在宅医療の診療医など
③自由診療のスペシャリスト
美容外科、皮膚科、不妊治療など、保険で対応できない診療を行う
④臨床外の分野
企業の産業医や製薬会社のコンサルタント、医療ITアプリの監修者など
勤務医になるために必要な経験
勤務医になるための経験は、どんなキャリアプランを描くかによって異なります。
「①専門領域のスペシャリスト」のケースでは、専門分野で指導的な立場の大学病院医局を目指し、どのような経験が求められているかを想定した上で、専門医や博士号取得、さらに海外留学も視野に入れて経験を積みます。
「②地域の臨床医」のケースでは、医師一人あたりの診療範囲が広くなり、専門外の診療技術や地域の基幹病院との連携が求められます。地域に求められる役割を理解し、総合診療や地域連携の経験を積みます。
「③自由診療のスペシャリスト」のケースでは、特定分野での専門性が求められるので、その分野の先進的な医療機関で働いて経験を積むことが一番の近道です。
「④臨床外の分野」のケースは、最近増えています。医療系コンサル会社の役員を務めたり、システム開発や商品開発で医療監修として携わったりなど、医療の専門知識が求められる業界で経験を積み、ネットワークを構築することが望ましいです。
7. 開業医としてのキャリアプラン
開業医としてのキャリアプランも、勤務医と同様に専攻医研修の時点で考えておくと良いでしょう。医療の専門性や技術の習得についても、どの地域でどんな治療を提供するかによって、医師自身に求められる医療技術が異なるからです。開業する場合はさらに経営者としてのマネジメント能力を身につけることが必要です。
開業医になるために必要な経験
クリニックの院長は3つの役割をこなさなければなりません。その3つとは、「医師」「経営者」「管理者」です。
「医師」としては、地域でどんなクリニックを経営するかといった診療方針の決定、必要な医療技術の導入、医療従事者の指導などを行います。
「経営者」としては、クリニックのビジョンを示して戦略を決め、ヒト・モノ・カネの経営資源の活用など、経営上の意思決定を行います。
「管理者」としては、決められた戦略を実行するために社員を採用・教育し、組織をまとめて、日々の業務を行います。
「医師」「経営者」に加えて「管理者」の役割を適切に果たすには、病院勤務中にリーダーや中間管理職の業務に積極的に取り組むことや、医療法人の院長としての経験を積むことが効果的です。
開業に必要な費用
クリニックの開業に必要な資金は、主に開業前と開業後に分けて考えます。開業前では、開業準備のための費用や具体的な物件の取得と設備投資などの開業資金が必要になります。
開業準備の費用としては、開業セミナーの受講費用や立地調査、開業コンサルタントの費用などがあります。医療モールや医薬品卸会社が無料の開業コンサルティングを提供していますが、専門コンサルタントに頼む場合は300万円前後が相場です。
開業資金の額は、クリニックのコンセプトと立地、設備投資によって大きく変わります。比較的費用を抑えられるのは、テナント開業で医療機器設備が少ない皮膚科、精神科・心療内科、在宅医療です。最近では、民間の画像診断センターと連携してCTやMRIを利用し、設備投資を抑えたクリニック経営も増えています。
テナントビルでの開業資金の目安としては、物件取得費用が家賃の8〜10カ月分、内装工事が坪60万円から、什器備品・採用・広告費まとめて1,000万円、それに必要な医療機器を加えた金額になります。たとえば、40坪で医療機器が2,000万円だった場合は、4,000万〜6,000万円程度が目安となります。
開業後も経営が軌道に乗るまでは、医療収益が少なくても経営できるように運転資金を準備しておく必要があります。運転資金(家賃、人件費、リース料、そのほかの固定費など)と生活費の合計額の6カ月分くらいを用意しておきましょう。
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