目次
1.電子カルテ導入に向けた検討
電子カルテはクリニックの業務効率化のカギとなるもの。開業前はさまざまなタスクをこなす必要があるからこそ、システム選定は余裕をもって着手したいですね。円滑な導入を実現するために、「開業場所が決まったらすぐ」をタイミングの目安として、検討を開始しましょう。

(1)導入の目的
選定に向けた要件定義の前提として、「何を目的として電子カルテを導入するのか・どのような課題を解決したいのか」を改めて考えてみましょう。このとき、目的をできるだけ具体的なレベルにブレークダウンすることで、よりクリニックに適したシステム選定を進めやすくなります。たとえば、「業務を効率化する」という目的であれば、もう一歩踏み込んで、どのようなシーンで効率化を達成したいのかを明らかにしていきます。カルテへの入力を簡素化したいのか、医療事務を効率化したいのか、あるいは他のシステムとの連携を進めたいのか、など、目指す姿を具体化してみましょう。こうした目的を達成できる電子カルテはどれか、という観点で、今後選定を進めていくことになります。
(2)費用
予算も電子カルテ選定にあたっての重要な検討事項です。導入時に必要となる初期費用だけでなく、導入後も維持費用がかかることに注意しましょう。電子カルテの費用は、クリニックの規模、導入の形態、他のシステムとの連携の有無などにより異なります。おおまかな予算を設定したら、各メーカーから見積を取り、自院の導入目的を達成するにはどの程度の費用がかかるかを確認しましょう。予算と照らし合わせて候補を絞り込んでいきます。場合によっては、予算を再度検討する必要が生じるかもしれません。
(3)電子カルテ導入検討時に加味すべき項目
もう一つ、導入前にしっかりと検討しておきたいのがサポートです。特に、電子カルテの操作やパソコン、インターネットなどに不慣れなスタッフが多い場合は、研修時や導入時の立ち会いサポートなど、手厚いサービスを提供するメーカーを選ぶと良いでしょう。連絡方法も、メールやチャットだけでなく、電話やリモートのサポートがあれば、システムに習熟していないスタッフでも安心です。自院の状況に基づき、適切なサポートを明らかにして、選定要件に加えましょう。
2.電子カルテの選定・発注
検討プロセスを経て、自院がどのような電子カルテを求めているかを明らかにしたら、続いて具体的な選定に移ります。選定は開業の3か月前を目安に完了するようにして、発注作業に入りましょう。スムーズに選定を進めるためのポイントを確認していきましょう。

(1)電子カルテの選定フロー①
自院が重視する項目に基づき、候補となるメーカーを絞り込んでいきます。電子カルテの使い勝手は、日常的な業務に大きな影響を及ぼします。1社だけを見て発注を決めるのではなく、少なくとも3社を候補として、比較・評価を行うと良いでしょう。候補企業を決めたら、各社の担当者に連絡を取ります。
(2)電子カルテの選定フロー②
担当者との打ち合わせでは、クリニックの診療科目などの基本情報、電子カルテ導入で実現したい内容、デモで確認したいポイントなどを伝え、要件を具体化していきます。電子カルテ以外にも実現したい内容があれば、あわせて相談しておくと良いでしょう。電子カルテと連携できるシステムは昨今ますます拡大しています。電子カルテとともに導入をすれば、業務効率もさらにアップする可能性が高まります。
(3)電子カルテの選定フロー③
打ち合わせの内容に基づき、デモを行います。実際の機材やソフトを確認できる機会ですので、操作性やレイアウトなどを確認しておきましょう。
デモと並行して、メーカーが提供するサポート内容もしっかりと確認します。導入前には見落としがちですが、スムーズな運用を実現するうえで重要なポイントですので、事前に定義しておいた要件を満たすことができるか、漏れのないようチェックしておきましょう。
3.電子カルテの試験運用
選定プロセスを経て、無事電子カルテを発注したあとは、メーカーの担当者と仕様設定のための打ち合わせを行います。処方、治療、病名などで、入力する頻度が高くなりそうな項目は、この段階で設定しておけば、スムーズに利用を開始できるでしょう。設定作業を終え無事に納品されたら、開業1~2か月前を目途に、実際にシステムを利用するスタッフを対象とした説明会や研修を開催し、さらに開業1週間前には試験運用を行います。スタッフの目線でシステムの操作方法を確認すると、それまでは見えていなかった課題や不明点が出てくることもあります。メディコムのように、研修の実施や試験運用時の立ち会いを提供するメーカーもありますので、活用を検討すると良いでしょう。

4.電子カルテの稼働
検討・選定・発注・試験運用というステップを経て、ようやく電子カルテを本稼働させることができます。クリニックの開業とも重なり、非常に忙しい時期ですが、不慣れなシステムで思わぬトラブルが発生することもしばしばあります。開業後に販売代理店のインストラクターがクリニックに立ち会うサポートを提供しているところもあり、メディコムもそのひとつです。
5.電子カルテの運用時に注意すべきこと
実際に運用を開始すると、導入前には想定していなかった障害やトラブルが起こることもあります。特にどのようなポイントに注意するべきでしょうか。

(1)運用時に注意すべきこと①
電子カルテ運用にあたり、最も回避すべき事態の1つが、データの消失です。これには、サーバーの故障や自然災害、不慮の事故などさまざまな要因がありますが、豊富なデータバックアップのオプションで幅広い要因に対応できるメーカーを選定しておくと安心です。
(2)運用時に注意すべきこと②
電子カルテはネットワークへの接続が必要となりますが、このとき注意したいのがセキュリティです。対策を講じないままでは、不正アクセスやウイルス感染などにより、最悪の場合は患者さんなどの重要な個人情報を漏えいする事態ともなりかねません。ファイアウォール、URLフィルターやウイルス対策ソフトなど、メーカーの提供するセキュリティ機能がどの程度充実しているか事前にしっかりと確認し、自院に必要な対策を講じましょう。
6.電子カルテ稼働後に生じうる課題とその対処 ~新規開業編~
クリニックの開業後、実際に患者さんの対応が始まると、準備期間には見えていなかった課題が明らかになってきます。診療と並行してこれらの課題に対処することとなり、これまで以上に効率的な対応が求められます。今回は、開業後の電子カルテ・レセコン運用をめぐる主な課題とその対処についてご紹介します。
開業直後に見えてくる課題とは

開業当初は、とりわけ忙しくなる時期です。ほとんどが初診の患者さんばかりとなるため、保険証の情報、住所、連絡先、問診内容など、電子カルテやレセコンに多数の項目を入力しなくてはなりません。患者さんを長い時間お待たせしないためには、入力項目やタイミングにも優先順位をつけて対応しましょう。例えば、診療に関わる保険証や問診内容は診察前に入力すべきですが、住所や連絡先の情報は診察後に入力する方がスムーズかもしれません。
実際に患者さんに対応すると、準備の時点では想定していなかった事態が数多く起こります。いざとなると使い方が分からない機能があったり、クリニックの運用に合わない項目が明らかになったりします。メーカーのなかには、開業後に販売代理店のインストラクターがクリニックに立ち会うサポートを提供しているところもあり、メディコムもそのひとつです。忙しい開業当初の時期には、こうしたサポートがあれば電子カルテやレセコンの疑問や不安もその場で解決できて安心です。
運用が落ち着いたら考え始めることとは

開業から1~2年程度経つと、スタッフも電子カルテやレセコンを円滑に利用できるようになってきます。一方、各システムで改善すべき点が見えてくる時期でもあります。
クリニックの魅力をさらに高めるためには、患者さんの診療や接遇に十分な時間を確保することが非常に重要です。そのためには、システム操作に費やす時間をできる限り削減し、業務効率化を進めましょう。日頃電子カルテやレセコンを利用しているスタッフからもヒアリングを行い、改善すべきポイントをピックアップします。
注意しておきたいのは、運用開始後の機能追加に対する柔軟性やサポートの有無については、メーカーごとに差異があるという点です。導入時には、カルテの操作性に加えて、文書作成・画像取り込み・検査結果の参照などの一般的な機能が選定の要件に挙げられることが多いものですが、 実際に運用を開始すると、外注検査のオーダーや機器連携などの機能追加をご依頼いただくケースがよく見られます。運用開始後にもクリニックの個別要望に応えることのできる、柔軟性に優れたメーカーであれば、導入時は必要最低限の機能にとどめて初期費用を抑えつつ、後から業務の実態にあわせて機能追加をするといった対応も可能です。さまざまな要望にも対応できるよう、豊富なオプションが用意されているかという点も、システム選定時から意識しておきたいポイントです。