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電子カルテ 医師 事務長 2023.02.17 公開

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電子カルテの書き方とは?SOAPの概要や記載例を紹介

電子カルテの普及率は年々上がっており、2020年には一般病院の普及率が6割を超えました(厚生労働省「電子カルテシステム等の普及率の推移」より)。病床数が多い医療機関ほど普及率が高く、電子カルテを適切に操作できることは医療従事者の必須スキルとなっています。そこで今回は、電子カルテの書き方の注意点と代表的な記載方法であるSOAP(ソープ:医療機関における看護記録をするための記入形式)について具体例も挙げて詳しく解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#紙カルテの電子化 #機器選定ポイント #業務効率化 #システム入替 #開業検討

目次

電子カルテを記載する目的

「カルテ」は「診療録」のことであり、患者さんを診察した際の情報を記録に残すためのツールです。従来、カルテは医療従事者が紙に必要事項を記載していましたが、電子カルテは診療内容を電子情報として一元的に管理できるシステムとなります。まずは、電子カルテを記載する目的について詳しく説明していきましょう。

医師の義務

カルテの記載は医師法第24条に定められた医師の義務の一つです。具体的には、「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と定められており、これに反すると罰せられる可能性があります。

臨床経過を把握するため

カルテは過去から現在に至るまでの患者さんの病状や治療内容、検査結果などが時系列を追って記載されています。そのため、主治医以外の医師が確認しても臨床経過や治療方針を把握でき、いかなる状況が発生しても適切な医療を提供していくのに役立ちます。

保険請求の根拠になる

診療内容が正しく記載されたカルテは、保険請求をする際の根拠となります。逆に記載漏れがあった場合、「行われていない診療」と見なされ、査定対象となることがありますので注意が必要です。

従来の紙カルテではなく、電子カルテを導入するメリットやデメリットについてはこちらのページを参考にして下さい。

参考:「電子カルテとは 導入のメリットやデメリットを解説」

電子カルテを書く際のポイント

電子カルテは従来の紙カルテよりも保存性が高く、端末があれば多くの医療従事者に情報を共有することが可能です。一方で誰が見てもわかりやすく記載するように心がける必要があります。電子カルテを書く際のポイントを詳しく解説します。

診療の情報や判断を網羅する

患者さんの訴え、身体所見、検査所見、判断、今後の方針など診療に関する情報を全て網羅して記載することが大切です。自分以外の医師や看護師といったコメディカルが電子カルテを見ることを想定して、次回以降も患者さんに適切な医療が継続できるよう心がけましょう。
また前述したように、電子カルテは保険請求の根拠になります。診断名や検査の必要性などを抜け漏れなく記載することも大切です。

「SOAP」に沿って記載する

電子カルテの記載方法は特別な取り決めがないことも多いですが、一般的には「SOAP」にのっとった流れで記載します。「SOAP」とは、「Subject(主観的情報)」、「Object(客観的情報)」、「Assessment(評価)」、「Plan(計画)」のことであり、医療の場で広く使用される記録方法の一つです。それぞれの項目に合った内容をわかりやすく記載するようにしましょう。

電子カルテの書き方のポイントとして、こちらの記事も参考にして下さい。

参考:「わかりやすい薬歴の書き方にはコツがある」

電子カルテに記載すべき項目

電子カルテには、診療時の情報や判断を全て記載します。具体的には、どのような情報を入れるのか詳しく解説してみましょう。

患者さんの基本情報

患者さんの既往歴、家族歴、社会歴、嗜好(飲酒・喫煙歴など)、アレルギーの有無、内服歴などの基本情報は、医療を提供していく上で非常に大切な情報の一つです。診療に直接関係ないと思われる内容も記載しておくと、別の疾患で受診したときに役立つかもしれません。特に初診時はこれらの情報を正しく聞き取り、間違えがないように記載することが大切です。

現在の症状

受診時の患者さんの訴えは時系列を追って詳細に記載する必要があります。問診の際には、クローズドクエスチョンではなく、できるだけオープンクエスチョンで訴えを聞きましょう。カルテを時系列にまとめるとわかりやすくなり、抜け漏れのない内容に仕上がります。

身体所見や検査結果

診療時の身体所見と検査結果は客観性を重視して見やすく端的に記載しましょう。特に身体所見は、診察を担当した医師しか客観的な評価ができないため、後から別の医師やコメディカルが見てもわかるように正しく記載することが大切です。
電子カルテの場合、検査結果は全データが表示されるようになっていますが、医師の記載欄には異常値や異常所見など診断の根拠となる重要な情報を抜粋して記載するとよいでしょう。

診断と治療方針

電子カルテには診断の記載が必須ですが、患者さんの訴え、身体所見、検査結果などからどのようにして診断に至ったのか経緯も正しく記載しましょう。また、治療方針についての考えやその後の経過観察に関する考えも記載しておくと、後から確認したときにわかりやすくなります。

SOAPとは

電子カルテは診療に必要な情報を網羅して記載することが大切ですが、体系立った記載をしないと情報が見にくく、かつ次回以降の診察時に「見落とし」の原因となります。一般的に、医療の場では「SOAP」という記録方法が採用されており、電子カルテもSOAPに沿った記載をするのが望ましいとされています。

SOAPとは、「Subject(主観的情報)」、「Object(客観的情報)」、「Assessment(評価)」、「Plan(計画)」の順に体系立てて診療の情報を記載する方法ですが、それぞれの要素はどのような意味があるのか詳しく見てみましょう。

Subject(主観的情報)とは

「S」は主観的情報のことであり、診療時に患者さんが訴える症状のことです。具体的には、「お腹が痛い」「熱がある」「便秘がある」などという主訴のことを指します。記載する場合には訴えだけでなく発症時期や程度などの情報も問診して記載しなくてはなりません。

また、「S」には患者さんの訴えだけでなく、家族や施設職員などから得られる情報も含まれます。特に意思疎通が難しい小児や高齢者の場合は本人だけでなく周囲からも正しく情報を得るよう心がけましょう。

Object(客観的情報)

「O」は客観的情報のことであり、身体所見や検査結果など客観的に患者さんの現状を捉えた情報のことです。記載する内容は行われた診療によって異なりますが、聴診・触診・視診・内診などの所見、血液検査や画像検査の情報になります。

この項目の情報は診断への大きな根拠となる部分でもあるため、必要な情報を網羅して記載することが大切です。特に身体所見は後から見たときに自分以外の医師やコメディカルが確認してもわかるように記載しましょう。

Assessment(評価)

「A」は「S」と「O」の情報を総合的に分析や考察をして導いた評価のことです。単に診断だけを記載するのではなく、「S」と「O」の情報からどのようにして診断に至ったのか記載しておくと後から振り返るときもわかりやすく、万が一医療過誤などを問われても正当性を訴える根拠となります。また、必要であれば除外診断も記載しておくとよいでしょう。

Plan(計画)

「P」は「A」で下した評価に対してどのような治療や経過観察を行っていくかを計画する項目です。具体的には薬剤の処方内容、内服終了後の受診指示などを記載します。適切な治療計画を立てるには「S」「O」「A」を体系立てて記載して医療情報を整理することが大切ですが、「P」にも次回の診察につながるような内容を記載する必要があります。診療時に立てた計画がうまくいかなかったとき、どのように方針転換をしていくかといった考察を交えて記載しましょう。

SOAPのメリット・デメリット

現在、医療の場で多く用いられているSOAP方式の記録は、医療情報を体系立てて記載できる方法の一つです。実際に活用するにはどのようなメリットとデメリットがあるのか詳しく解説していきましょう。

SOAPのメリット

SOAPにのっとり記載された電子カルテは診断に至るまでのプロセスや今後の治療方針がまとめられているため、後から誰が見てもわかりやすいのが最大のメリットといえます。また、診察時の状態を主観的情報と客観的情報に分けて記載することで、さまざまな情報が入り混ざらないので、考察の流れが明確になりやすいのもメリットの一つです。
特に、どのような情報が重要なのか判断がつきにくい若手医師はSOAPにのっとって記載する習慣を身につけることで、問題点を洗い出し考察するスキルを習得できます。

SOAPのデメリット

SOAPによる電子カルテ記載は診療内容の整理がしやすく、かつ記載者以外の医師やコメディカルが後から見てもわかりやすい反面、記載するのに時間がかかるかもしれません。そのため、一刻を争う救急医療の場ではSOAPで運用することが難しいといわれています。

また、原則的にSOAPは一つの問題に対する評価や計画を導くための記載方法であるため、多発外傷といった同時にいくつもの症状がある患者さんの場合は情報が散見することがあるかもしれません。さらに、病歴が長くなる場合はカルテを見返すのに時間を要するため、重要な情報が見落とされるといったデメリットもあります。

SOAPで書く際のポイント・注意点

SOAPにのっとった電子カルテは前述したようにさまざまなメリットがありますが、記載方法に注意しないとメリットが活かせないこともあります。どのような点に注意すべきか詳しく見てみましょう。

必要な情報を簡潔にわかりやすくまとめる

SOAPは診断に至るプロセスや治療方針の決定を体系立てて記載ができる記録方法の一つです。しかし、主観的情報や客観的情報の項目に診断と関連性のない情報を入れたり、過剰な鑑別診断を評価に入れたりすると情報量が非常に多い電子カルテとなります。医師やコメディカルが見返したときに重要な情報を見逃してしまうリスクがあるかもしれません。大切な情報を入念に確認するためにも、情報をできるだけ簡潔にわかりやすくまとめるのがポイントです。

評価と計画は考察もしっかり記載する

主観的、客観的情報からどのように考えて評価を下し、計画を立てたのか正しく記載することも大切です。診断や治療方法のみを記載すると、見返したときにどのようなプロセスでその結果となったのかわからなくなるので、万が一医療過誤があったときなどに問題となる可能性があります。また、次に別の医師が診療をするときも考えを伝えることが可能です。

SOAPでの記載例

最後に、SOAPにのっとって電子カルテを記載するときの具体例をご紹介します。実践するときの参考にして下さい。

要約

50歳、男性。既往歴なし。4日前から発熱、痰がらみの咳とのどの痛みがあり受診。38.0℃、意識清明。BP120/56、脈拍70/分、SpO2 97%。インフルエンザ迅速診断キットでA陽性。胸部聴診所見に異常なく、咽頭は赤く腫れている。胸部レントゲン検査で異常所見なし。
インフルエンザA型と診断した。発症から72時間以上経過しているため抗ウイルス薬の投与はせずに、非ステロイド系消炎鎮痛剤、鎮咳去痰薬などを用いた対症療法で様子を見ることとした。

SOAPの記載例

「S」
4日前から発熱、痰がらみの咳、咽頭痛がある。
既往歴なし。

「O」
38.0℃、SpO2 97%
インフルエンザ迅速診断キットでA陽性
聴診所見異常なし。咽頭は赤く腫れている。
胸部レントゲン検査で異常所見なし。

「A」
迅速診断キットの結果より、インフルエンザA型と診断した。

「P」
バイタルの問題なく、発症から72時間経過。
抗ウイルス薬の投与はせず、自宅療養を指示した。
症状が強いため、非ステロイド系消炎鎮痛剤と鎮咳去痰薬を処方して様子を見る。
数日以内に軽快が予想されるが、処方薬を飲み切っても症状が続くようであれば再診を指示した。

まとめ

電子カルテは大量の医療情報を効率よく保存できるシステムです。電子カルテの導入によってスタッフ同士で多くの医療情報を共有しやすくなりました。一方で全ての医師やコメディカルが確認してもわかりやすい電子カルテを記載するスキルも求められています。今回は、電子カルテに適したSOAPにのっとった記載方法について詳しく解説しました。メリットもデメリットもありますが、この記事を参考にどの項目に何を記載すべきか注意しながら体系立てた記載ができるようにしましょう。

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