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医療テック記事 医師 事務長 2023.04.20 公開

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医療DXの実現に向けた電子カルテ情報の標準化

2023年4月に保険医療機関・薬局におけるオンライン資格確認のシステム導入が原則義務化となり、医療DXの推進が加速してきました。医療DXの実現に向けた基盤整備として電子処方箋の稼働を皮切りに、電子カルテ情報の標準化をはじめ、標準規格化に向けた動きは今後ますます活発化していく予定です。そこで、電子カルテ情報の標準化に向けた国の動きや必要とされている理由、課題やメリット・デメリットについて紹介します。

※本内容は公開日時点の情報です

#医療政策

目次

電子カルテ情報の標準化に向けた国の方針

2022年9月に厚生労働省が発表した資料によると、電子カルテに関する今後の動きとして、以下を徐々に普及させていく方針が示されています。

●電子カルテ情報及び交換方式の標準化

●標準規格化の範囲の拡張

●小規模な医療機関向け標準型電子カルテの開発

そのほかにも質の高い医療を提供するために、全国の医療機関や薬局などが患者さんの診療情報を共有できる「全国医療情報プラットフォーム」の構築に向けた審議が進められています。なぜ、標準化が必要とされているのでしょうか。まずは、標準化が必要とされている理由と今後の流れを見ていきましょう。

▽参考記事
厚生労働省『第1回医療DX推進本部幹事会 議事次第』

電子カルテ情報の標準化が必要とされる理由とは?

電子カルテ情報の標準化が必要とされる背景には、次のような理由があります。

【医療機関】
●カルテや器材の取り違え、医薬品を使用する際の用法用量の間違いなど、医療事故防止のため
●医療機関同士、薬局や行政などとのスムーズなデータ交換や共有を推進するため
●医療従事者の問診や診療時などの負担を減らすため

【患者さん】
●国民自身の健康増進のため
●どの医療機関にかかっても質の高い医療が受けられるようにするため

さらに標準化の動きが早まるきっかけとなったのが、新型コロナウイルス感染症の流行です。感染症流行時に以下のような情報を医療機関が把握することが難しく、医療提供体制の課題が浮き彫りになりました。

●患者さんの診療情報の入手
●重症化リスク
●持病の有無やその治療内容
●服用や使用不可の薬剤の把握
●手術歴や移植歴、透析歴の確認

これらの課題を解決し、感染症の流行時や災害時にも迅速に対応でき、全国の医療機関でスムーズな情報共有を実現するため、電子カルテ情報を標準化することが必要と考えられるようになったのです。

電子カルテ情報の標準化における今後の流れ

今後の流れとしては、オンライン資格確認等システムにおける安全な専用ネットワークを使い、全国の医療機関と薬局の間でさまざまな医療情報の共有が進んでいくことが予想されます。これにより、患者さんへの良質な医療の提供につながります。具体的には、厚労省標準規格として採択された以下の3文書6情報が段階的に確認できるようになっていく予定です。これらの情報は「電子カルテ情報交換サービス(仮称)」において活用されていく形となります。

<3文書>
●診療情報提供書
●画像などを含む退院時サマリー
●健康診断結果報告書

<6情報>
●傷病名
●アレルギー情報
●感染症情報
●禁忌薬剤情報
●救急時に有用な検査情報
●生活習慣病関連の検査情報

さらに、電子カルテ情報の標準化に加え、標準規格化の範囲の拡張、標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテ(標準型電子カルテ)の開発、共通算定モジュール(全国共通の電子計算プログラム)の導入による診療報酬改定DXが進められていきます。

そして、現行のレセプト・特定健診情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、電子カルテなどの医療機関などが発生源となる医療情報(介護含む)について、クラウド間連携を実現し、必要なときに必要な情報を共有・交換できる「全国医療情報プラットフォーム」の基盤が整備されていく流れとなっています。

▽参考記事
厚生労働省『医療分野の情報化の推進について』

電子カルテの現状と標準化に向けた課題

電子カルテの導入状況や入替・改修などが必要になる時期について気になっている方も多いでしょう。そこで次は、電子カルテの現状と標準化の課題を見ていきます。

電子カルテの現状

電子カルテでは、独自の入力情報のみならず、オンライン資格確認を使い、審査支払機関に提出された保険医療機関の電子レセプトから以下の情報を抽出して閲覧できます。そして、患者さんにおいてもマイナポータルにアクセスすることで、自身の診療情報などの閲覧が可能です。

●診療年月日

●医療機関名

●診療情報(過去3年分)

●薬剤情報(過去3年分)

●特定健診情報(過去5回分)

これらの情報は現在、本人の同意があった場合に限り、医療機関や薬局が閲覧できる前提となっています。

電子カルテの普及率

次に電子カルテの普及率を見ていきましょう。厚生労働省の調査によると、2020年時点でクリニックなどの一般診療所における普及率は約50%です。しかし、400床以上の規模の一般病院では約91%となっており、独自に電子カルテを取り入れている普及率には差があります。

詳細な数値や2020年以前の普及率については、厚生労働省『電子カルテシステム等の普及状況の推移』で確認できます。

現状と普及率から考えられる課題

一方で、電子カルテの導入および電子カルテ情報の標準化には、以下のような課題があります。

●セキュリティの確立
●導入、維持費用の確保
●不具合や停電時の対策
●異なるシステムの統一
●操作ミスの可能性

紙ベースでカルテを保管している医療機関に関しては、電子カルテ導入にあたり機材の購入やセキュリティ対策の確立が必要となるため、医療機関が費用を確保しなければなりません。また、電子カルテ導入後のセキュリティ対策などの維持費も必要となります。導入・入替においては「IT導入補助金」や今後予定される「電子カルテ標準化関係補助金(医療情報化支援基金)」を活用していくことがポイントになります。

そのほかにも、不具合発生時や停電時には確認できなくなってしまうため、そうした事態にも対応できる環境整備も課題と言えるでしょう。

さらに、現在の電子カルテはシステムごとに出入力形式が異なるため、標準化にあたってどのように統一するかも課題となっています。そこで2022年9月には、各医療機関に標準コードを付与し、「HL7 FHIR」と呼ばれる規格でデータをアップロードする案が発表されました。

HL7 FHIRは、相互運用性が確保できる医療情報交換の次世代標準プラットフォームです。現在のWEB技術を活用してデータの交換ができるため、既存のデータから必要なデータのみ変換するだけで標準化が可能とされています。

しかしながら、標準コードなどの操作ミスが起こる危険性もあるため、わかりやすいプラットフォームの開発も重要な課題となっています。

▽参考記事
医療機関等向けポータルサイト『電子カルテ標準化関係補助金申請について』

電子カルテ情報を標準化するメリットとデメリット

最後に、電子カルテ情報を標準化するメリットとデメリットについて紹介します。国の目指す標準化は、電子カルテ自体の機能やデータベースの標準化ではなく、出入力データの標準化です。そのため各ベンダーの特徴が損なわれることはなく、むしろ使い勝手の向上や不備の改善につながることが期待されます。

メリット

電子カルテ情報を標準化するメリットとして、次の2つがあげられます。

●持病、診療情報、服薬状況などの情報を一目で把握できる
●医療事故を未然に防ぎやすくなる

電子カルテ情報の標準化により、医師は既往歴や検査結果など患者さんの情報を一目で確認できるため、診断に役立つほか、診察の負担軽減にもつながります。とくに高齢の患者さんは既往歴や禁忌の薬剤、服用している薬剤名、アレルギー情報などを覚えていないケースがあります。ご家族も把握し切れていない場合、それらを医師側で確認できるため、医療事故を未然に防ぐことにもつながります。

デメリット

デメリットとしては、以下の2つがあるとされています。

●停電時や災害時に患者さんの情報を確認できない可能性がある
●(電子カルテ導入済みの場合)情報の出入力方法などが変更された場合、操作を覚え直さなければいけない

停電や災害が起きた際、医療機関でカルテを確認できない可能性もあります。そうした状況に備えて、BCP(事業継続計画)対策を再確認しておくことも重要なポイントになります。

また、電子カルテ情報の標準化により、現行以上に他医療機関との情報共有が求められる可能性が高いでしょう。とくにカルテ情報の出力作業が増えると予想され、新たに操作方法も覚えなければなりません。

電子カルテ情報の標準化は医療の質向上のために必要

本記事では、電子カルテ情報の標準化に向けた動向について紹介しました。
今後は、電子カルテ情報を共有できる仕組みを搭載した電子カルテを使うことになり、患者さんへの切れ目のない質の高い医療を提供していくことが期待されています。
医療機関では負担の軽減や医療事故の防止につながり、患者さんは質の高い医療を受けられる電子カルテは、医療機関と患者さん双方に導入メリットがあります。

オンライン資格確認等システムで得られた情報は医療機関と薬局だけでなく、患者さん自身がアレルギー情報や健康診断の結果などをマイナポータルで閲覧・取得でき、PHR(医療情報管理)アプリでの活用も徐々に広がりをみせつつある状況です。

保健医療情報が医療現場のみならず、さまざまな場面で役立つ日が近づき、医療DXの実現が現実味を増してきたと言えるのではないでしょうか。

▽関連記事
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電子カルテ情報の標準化、仕組みや補助金について解説

著者情報

笹森 昭三

笹森 昭三(ささもり しょうぞう)

株式会社医療経営研究所 主席コンサルタント
FP(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
2001年より現職。厚生行政に関わる膨大な量の資料から価値あるものを的確に精査選別し、Webサイトの情報提供やレポート作成などの執筆業務に携わる。
この他、相談業務や講演業務においても専門的なヘルスケア情報の提供を行っている。経営全般に関わる法務・税務・労務の知識に加え、1級FP技能士として、生活者・患者視点を重視しているのが特徴である。

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