4. 開業の動機は様々
前述の日本医師会定例記者発表のアンケート調査によると、開業の動機として「①理想の医療の追求」「②将来に限界を感じた」「③経営も含めたやり甲斐」がベスト3に上げられています。
引用:
社団法人日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」
(1)理想の追求
開業動機のトップは、理想の医療の追求です。勤務医としての将来に限界を感じるとともに、勤務医では得られない仕事へのやりがいを求めて、医師としてのキャリアアップをめざしている姿が浮かびます。
理想を求めて開業を目指す背景には、当直や勤務の拘束時間が多いことや毎日の診療に追われて医師としての医療水準の維持が難しいことなどを負担に感じる勤務医の業務実態の課題があります。
後述のグラフにもあるように、5年以内の開業医の6割は、このまま勤務医を続けるより開業して理想の医療を追求したいと開業しています。
引用:
社団法人日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」
(2)労働環境が悪い
その次に上げられた開業動機は、④精神的ストレスや⑤過重労働に疲弊など、労働環境に関するものです。
同じアンケートの開業後年数別のまとめによると、開業10年以内の開業医の3割は、過重労働や精神的なストレスに疲弊したことを動機としています。あらためて勤務医の過重労働が負担になっている実態がうかがえます。
具体的な理由としては、当直に加えて長時間勤務の時間的拘束、診療以外の会議や資料作成が負担となっているようです。
(3)収入が少ない
日経メディカルの調査によると、勤務医の平均年収は男性1,220万円程度、女性1,016万円程度で、医師全体としてはおおむね高額な給与を受け取っており、6割以上は給与面では満足と応えています。ただし、35歳未満の医師に限っては、主たる勤務先からの収入779万円でアルバイト収入を加えても940万円(2013年の調査)となっています。
勤務医の収入に関する満足度調査では、少し古い資料になりますが、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が「勤務医の就労実態と意識に関する調査(2012年9月)」を公開しています。1000万円未満では5割以上の人が不満・少し不満としています。厳しい勤務でアルバイトもままならない若手勤務医の不満が下記のアンケート結果に表れているようです。
参照:
日経メディカル「医師の生涯年収は何億円?」
参照:
独立行政行政法人労働政策研究・研修機構 「勤務医の就労実態と意識に関する調査」