2. 物件の選び方
開業エリアを絞り込んだら、次はいよいよクリニックの開業物件の検討です。いきなり不動産物件を探すのではなく、複数の候補エリアについて、「○○区内」や「○○市内」、または「○○線沿線」「幹線道路○○号沿線」などの範囲で、人口分布や競合クリニックの存在などを調べ、さらにエリアを絞り込んでから開業コンサルタントや地域の不動産会社に相談するのが効率的です。
(1)購入か賃貸かで選ぶ
開業形態の中で、「戸建て開業」は土地や建物を購入して開業する方法です。初期投資額は大きくなりますが、自由に設計でき不動産が資産として残ります。親族が土地を所有しているときや首都圏郊外や地方で開業するときの選択肢です。土地・建物をすべて購入する方法以外に、土地は借地で戸建てのクリニックを開業する方法もあります。
テナントビルでの開業ではどうしてもスペースに限りがありますが、リハビリ重視の整形外科や透析内科、介護施設の併設など広い敷地が必要な場合は、戸建てのほうが設計の自由度が高く、駐車場も広くとることができます。
初期投資は賃貸のほうが抑えられますが、長期的に考えると購入のほうが総支払額で有利になる場合もあります。開業地域の特性や不動産物件の希少性で判断します。
最近、増えているのが「建て貸し戸建て」です。地主さんに希望通りのクリニックを建設してもらい、土地・建物一括で借り上げる方式です。人口減で郊外の土地にマンションを建てるよりクリニックを建てて貸したほうが初期費用はかかっても20年から30年以上空室となるリスクがないので、地主さんにも歓迎されています。
戸建て以外では、ビルテナントの賃貸もしくは医療モールの賃貸契約が一般的です。
(2)医療物件のタイプで選ぶ
医療物件は、戸建て型、ビルテナント型、医療モール型の3つに分類されます。
①戸建て型
戸建て型といえば、一昔前は地方の開業医の先生が住居兼診療所として開業するスタイルが主流でした。最近では、診察時間以外はプライバシーを確保したい医師や家族の希望もあり、診療所だけ独立して建てることも増えています。「建て貸し戸建て」の場合はビルテナント契約とは異なり、15年から20年の長期賃貸契約になります。
テナント物件が少ない地域で、かかりつけ医として地域医療に貢献したいと考える先生にとっては良い選択肢です。開業準備期間としては、ビルテナントや医療モールより1年ほど早く準備を進める必要があります。
②ビルテナント型
ビルテナントの場合は、ビルの一室もしくはワンフロアを借りて開業します。駅前や人通りの多い路面やわかりやすい場所に希望の物件があれば有利です。診療科によって、路面1階が有利とか高層階で目立たないほうがいいという条件があり、条件に合わせたビルを選択できます。駐車場がない場合もあり、交通アクセスの便利さ・わかりやすさも条件になります。
クリニック内装工事には、電気容量、排水管の位置、天井高、換気や重量制限など建物の条件があるので、事前に条件を満たしているかどうかを確認する必要があります。
③医療モール型
1つのビルのワンフロアまたは複数フロアで、診療科目が異なる複数のクリニックを集めて開業する形式です。駐車場やビル内の共有スペースを広く設けることができます。地域の医療モールとして認知度が高く、医療モール単位で広告もするので集患しやすいメリットがあります。しかし、一般のビルに比べて、賃料や共益費が高く設定されています。