PHCbi

CASE STUDIES 導入事例

愛媛大学大学院(愛媛)

ライブセル代謝分析装置で拓くT細胞研究の革新的アプローチ

愛媛大学大学院医学系研究科 免疫学・感染防御学講座の山下政克教授は、がん免疫賦活化やワクチン開発、アレルギー・自己免疫疾患に向けた新戦略を目指し、T細胞分化や機能制御の研究を進めています。

山下教授は、T細胞の機能が代謝とエピジェネティクスによってどのように制御されるかに注目し、長年にわたり研究を重ねてきました。

今回、PHCのライブセル代謝分析装置「LiCellMo」が、こうしたT細胞代謝研究でどのように活用されているのかについてお話を伺いました。

先生のご研究テーマについてお聞かせいただけますでしょうか

私たちは免疫学、特にT細胞の機能が代謝とエピジェネティクスによってどのようにコントロールされるかを研究しています。

T細胞の分化は、ナイーブT細胞が抗原刺激を受けることで起こります。ナイーブT細胞が抗原刺激を受けると、全体的な増殖が起こり、その過程で代謝やエピジェネティックな再プログラミングが進行します。ナイーブT細胞が抗原刺激を受けると、クローン増殖が起こり、その過程で代謝やエピジェネティックな再プログラミングが進行します。その後、さまざまなタイプのT細胞へと分化していきます。

過去に製薬会社に勤務していた頃にT細胞の研究を始めたことがきっかけで、発展が著しく奥深いT細胞の世界に魅了され、現在に至ります。約10年前からは特に、T細胞の代謝産物が多くのエピジェネティックな制御因子を調節していることに注目し、代謝とエピジェネティクスの関係性について取り組んでいます。

LiCellMoをご使用になったきっかけを教えていただけますか

これまでの実験では代謝産物の測定タイミングを見つけることが一番の課題でした。LiCellMoがグルコースの消費速度や乳酸の産生速度を図ることが出来るということをお聞きし、分析機器を使用する際に、測定タイミングの決定に活用したかったというのがLiCellMoを使い始めた理由です。

また、以前に解糖系の酵素をノックアウトしたマウスを用いた研究を行っており、ノックアウトしたマウスではT細胞の分化だけでなく、シグナル伝達も長時間維持されないことが分かりました。この知見から解糖系をしっかりと観察する必要性を感じていました。

通常の培養と変わらない手軽さ
代謝解析の初心者、すでに代謝解析にも慣れた研究者のどちらにも有用な機器

実際にお使いになられたご感想としてはいかがでしたでしょうか

T細胞の分化において、CD4陽性T細胞をTh1、Th2、Th17、制御性T細胞に分化させたり、CD8陽性T細胞を細胞傷害性T細胞に分化させたりする際、それぞれのタイムポイントでの代謝変化や反応を比較することが可能になりました。

初心者にとっては、LiCellMoは代謝を直感的に理解しやすいツールであり、代謝解析に馴染みのない研究者にも有用だと考えられます。一方で、既に代謝解析を行っている研究者にとっては、予測した動きを検証するための強力な補助ツールとして活用できる点が魅力だと感じました。

使い勝手も非常に良く、シンプルな構造で、初めての人でも使いやすい印象を受けています。一度始めれば自動で測定を進めてくれるため、通常の培養とほとんど変わらない手軽さがあり、特別なプレートを使用しないため準備も簡単です。

消費速度の変化を観察することで、全体の変化の傾向を掴むことが出来る

LiCellMoを使用することで、グルコース消費速度が急激に上がったものなのか、緩やかに上昇し続けているものなのかを区別できるようになりました。
これは、経時的な測定の大きな利点であり、全体の変化が詳細に見えることが非常に役立っています。

これまでは、24時間や48時間といった経験によって判断した特定のタイムポイントでの代謝状態を測定していましたが、その間の反応速度については把握できていませんでした。LiCellMoを使用することで、例えば同じ24時間後の結果であっても、培養条件の違いによって代謝の活性化具合の変化がどのように進行しているかが分かるようになりました。

具体例として、例えば愛媛県から東京に移動する場合、最終的に東京に到着するという結果は同じですが、その移動手段が飛行機だったのか、
新幹線を使ってゆっくり移動したのかといった「途中経路」が見えるようになった、ということです。

実際に、特定のサイトカインを加えた場合と加えない場合で、48時間後の代謝状態が同じように見えても、その間の経過や速度が異なることが分かりました。
このような詳細な情報を得られる点が非常に参考になっています。

経時的な測定がT細胞の分化や活性化の変化の観察を可能に

どういった点にLiCellMoの強みを感じておられますでしょうか

一番の利点は、やはり経時的に測定できることだと思っています。特に免疫系の分野では、T細胞やB細胞、マクロファージの分化や活性化の際に、抗原を認識する明確なトリガーがあり、そこを起点に代謝の変化が劇的に起こります。そのため、免疫学分野においてLiCellMoは非常に適していると感じています。

また、T細胞が抗原刺激を受けて解糖系が劇的に活性化した後、その維持にはサイトカインであるIL-2が必要だということも分かっています。
そのようなプロセスも、LiCellMoを使うことでin vitroで確認できます。実際に、私たちはT細胞だけでなくB細胞でも代謝を観察できることを確認しています。

また、ヘルパーT細胞のサブセット(例えばTh1、Th2など)をin vitroで分化誘導する際、同じCD4陽性T細胞であっても、分化条件によって解糖系の活性レベルや持続時間が大きく異なることが分かりました。これも経時的に観察することで初めて明らかになった点です。

例えば、解糖系の活性がどの程度持続するか、消費速度がどのように変化するかといった情報は、経時的な測定がなければ分からないことでした。

さらに、解糖系の下流分子である乳酸が減少している場合でも、それが消費速度の変化によるものなのか、それとも他の要因によるものなのかを区別するためには、LiCellMoのようなツールが非常に役立つと感じています。LiCellMoを使用することで、グルコースおよび乳酸代謝が「せき止められて減少している」のか「大量に使用されて減少している」のかを経時的に測定できるようになりました。これまでのスナップショット的な測定では分からなかった点が明確になるのは大きな利点です。
もちろん、グルコースと乳酸を都度定量的に測定すれば分かる部分もありますが、経時的な測定が可能な機器はこれまでありませんでした。

任意のタイミングで測定を終了出来る機能や細胞数の確保が容易な24wellプレートというサイズ感により、
他の解析にそのまま転用可能

LiCellMoの利点は、測定中に「細胞の詳細な観察を行いたい」と思ったタイミングで測定を終了し、細胞を回収して別の測定機器で詳細な解析を行える柔軟性にあります。その際、24ウェルプレートを使用することで十分な細胞数を確保できるため、フローサイトメトリーやウェスタンブロッティングなどの他の解析にも活用できる点が大きな特徴です。

例えば、48時間ごとに細胞を回収し、グルコース消費速度を測定しながら、回収した細胞を他の分析機器での解析に利用しています。または解糖系が活性化したタイミングで細胞内のマーカーの変化を観察し、代謝と分子マーカーの関連性を詳細に検証することができます。この点は、他の分析機器では断片的にしか得られない情報を補完する重要な役割を担っています。

今後の研究における展望をお聞かせいただけますでしょうか

LiCellMoは疾患特異的な代謝産物やタンパク質が、細胞の代謝、特に解糖系に与える影響についてスクリーニングをする目的で活用したいと考えています。
例えば、疾患に伴う解糖系の活性化を観察し、単なるマーカーの発見だけでなく、創薬につながるような物質のスクリーニングに役立てることなどを想定しています。


今回の山下教授のインタビューでは、LiCellMoを導入された動機や、T細胞研究においてLiCellMoがどのようにご研究に貢献しているのかについて具体的にお話しいただきました。

今後は、創薬のための薬剤スクリーニングへの活用が見込まれるなど、PHCのLiCellMoが免疫学研究において役立つ画期的なツールとなることが期待されています。

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