クリニック開業にかかる資金はいくら?費用内訳から調達方法まで解説
クリニックの開業資金は診療科や開業形態によって異なるものの、一般的に5,000万〜1億円以上が目安です。内科・小児科などは7,000万〜1億円超、整形外科・眼科では1億5,000万円程度になる場合もあります。本記事では、診療科別の費用目安を一覧で確認できるほか、調達方法・コストを抑えるポイント・廃業リスクへの備えまで1記事でわかる構成としております。昨今の物価高騰や人件費上昇により開業コストは上がり続けているため、早めの情報収集が肝です。開業前の資金計画を固める際の参考になさってください。なお「物価高のいま、開業すべきか」判断軸も整理していますので、タイミングに迷っている方もあわせてご確認ください。
※本内容は公開日時点の情報です
目次
クリニックの開業資金はいくら必要?全体像と内訳の目安
クリニックを開業する際には、物件・内装から医療機器、採用・広告、運転資金まで、多岐にわたる費用が発生します。まず全体像を把握したうえで、診療科や開業形態にあわせた詳細な資金計画を立てる流れがセオリーです。
開業資金の内訳
クリニック開業にかかる費用は、大きく以下の5項目に分類できます。テナントビル内での開業を想定した場合の内訳を整理しました。
| 費用項目 | 目安金額 |
|---|---|
| テナント契約費用 | 約360万円 |
| 内装工事費 | 約3,600万円 |
| 医療機器・什器備品 | 約2,650万円 |
| 開業準備費用(その他) | 約750万円 |
| 運転資金 | 約3,000万円 |
※上記はあくまでも目安であり、立地・物件・診療方針によって変動します。
自己資金の目安
開業資金全体では1億円程度を見込み、2,000万円を自己資金として準備できると理想的です。自己資金が2,000万円あれば残りの8,000万円の借入審査も比較的通りやすくなり、金利面でも有利になるためです。
自己資金をまったく用意せずに開業することは不可能ではありません。しかし、開業時や開業後のコストが高くなり管理が煩雑になるため、あまり現実的ではないでしょう。
開業形態で変わる費用の目安
開業形態によって初期費用は大きく異なります。下表を参考に、ご自分の状況に合った形態を検討なさってください。
| 開業形態 | 特徴 | 費用傾向 |
|---|---|---|
| テナント開業 | ビル内の区画を賃借して開業 | 初期費用を抑えやすい |
| 戸建て開業 | 土地を購入または賃借し建物を建築して開業 | 建築費が加わり高額になりやすい |
| クリニックモール開業 | 複数の医療機関が集まるモール内に入居して開業 | テナント費を抑えやすく、相互集患も期待できる |
立地エリアや物件条件によって費用は大幅に変動するため、複数の選択肢を比較検討したうえで判断を進めましょう。
【診療科目別】クリニック開業資金の目安一覧
診療科によって必要な医療機器や施設基準が異なるため、開業資金には大きな差があります。以下では、主要な診療科ごとの目安をまとめました。なお、昨今の情勢を踏まえた物価高騰の影響による変動は考慮しておりません。あくまで参考値としてご確認ください。
診療科別の開業ポイントをまとめたお役立ち資料も用意しているため、あわせて参考になさってください。
▶ダウンロードはこちらから(無料):診療科別クリニック開業のポイント
内科
内科クリニックの開業コストは、総額8,000万〜1億2,000万円程度です。他科含めた考え方のベースといえるでしょう。
主な内訳は、以下のとおりです。
- 賃料・礼金等(約600万円)
- 内装工事費(2,400〜3,600万円)
- 医療機器・什器備品(2,000〜3,000万円)
- 開業準備費用(約800万円)
- 運転資金(約3,000万円)
整形外科
整形外科の開業コストは内科より高額で、総額1億〜1億5,000万円程度です。
リハビリテーションを行う場合は、施設基準により理学療法士が施術するリハビリ専用室(45㎡以上)の確保と、X線撮影装置や各種リハビリ機器などの専門機器が必要になります。
また、リハビリ機器に加えて運動機器の設備と、理学療法士等の専門職の採用に伴う人件費も考慮が必要です。
小児科
小児科の開業コストは比較的抑えめで、総額7,000万〜1億円程度です。
基本的な医療機器が中心のため、設備投資は2,000万円程度で済む場合もあります。一方で子どもと保護者が一緒に来院するため待合室は広めに設計し、キッズスペース・授乳室・子ども用トイレ・おむつ交換スペースなどの確保が求められます。
精神科・心療内科
精神科・心療内科は他の診療科と比べて開業コストが抑えられ、総額5,000万〜7,000万円程度です。
高額な医療機器や処置室・検査室が不要なため30坪前後での開業も可能です。また、立地面でも駅近でアクセスがよければ上層階でも構わないため、賃料を抑えられます。
なお、内装は診療内容の特性を考慮し、防音工事や落ち着いた雰囲気づくりに重点を置きましょう。その際の坪単価は、60〜70万円程度が目安です。
眼科
眼科の開業コストは、手術の有無で大きく異なります。手術なしの場合は総額6,000万円、手術ありの場合は1億〜1億5,000万円程度必要です。
眼底カメラ・OCT・視野計・角膜形状解析装置などが基本設備、白内障手術に対応する場合はさらに手術用顕微鏡が必要になります。
皮膚科
皮膚科の開業コストは、保険診療のみの場合は総額6,000万〜8,000万円程度です。
なお、美容皮膚科を併設する場合はレーザー脱毛器・シミ治療用レーザーなど高額機器の導入が必要となるため、総額1億円以上になる場合も珍しくありません。
耳鼻咽喉科
耳鼻咽喉科の開業コストは、総額9,000万〜1億2,000万円程度です。
耳鼻科ユニット・内視鏡システム・聴力検査機器・鼻腔副鼻腔手術機器などが高額機器に挙げられます。
内装工事では、防音設備や診察室の独立性が求められるため坪単価70〜80万円程度が目安です。また、ネブライザー治療用スペースや処置室など専用コーナーの設置も必要です。
クリニック開業資金の調達方法と選び方
多くの医師が融資を活用して開業資金を調達しています。主な調達先の特徴を把握し、状況に合った方法を選択しましょう。
融資の活用
主な資金調達先は以下の4つです。各機関の特徴を比較したうえで、金利・返済期間・担保条件などから総合的に判断なさってください。
| 資金調達先 | 制度 | 概要 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 | 新規開業・スタートアップ支援資金 |
|
| 独立行政法人福祉医療機構 (WAM) |
医療貸付事業 |
|
| 医師信用組合 | 新規開業ローン |
|
| 民間金融機関 | 開業医専用の融資メニューが用意されている場合あり | 金融機関ごとに異なる |
出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html)
出典:独立行政法人福祉医療機構(WAM)「医療貸付事業」(https://www.wam.go.jp/hp/guide-iryokashitsuke-outline-tabid-516/)
出典:神奈川県医師信用組合「新規開業ローン(パッケージ型)」(https://www.ishishin.co.jp/service/plan03/item18/)
補助金・助成金の活用
地方自治体が実施している医療事業や創業支援の補助金・助成金も活用できます。地域の医師不足解消を目的とした補助制度が設けられている場合もあるため、開業予定地の自治体窓口や商工会議所に問い合わせて確認しておくとよいでしょう。
勤務医のうちにやっておくべき信用情報の整え方
融資審査を円滑に進めるためには、勤務医の段階から信用情報を整えておくよう準備を進めておくとスムーズです。
以下のポイントを考え方の参考になさってください。
- 自己資金を総額の10%以上用意し、開業への意欲を示す
- 些細なことも誠実に対応する
- 収支見通しについては根拠のある堅い数字を提示する
- 浪費・遊び好きなどルーズな印象を与える言動を控える
- クレジットカードの滞納が発生しないよう注意する
なお、融資を受けるためのポイントをまとめたお役立ち資料もご用意しております。事業計画作成から一連の流れを把握する際に、ご活用ください。
▶ダウンロードはこちらから(無料):銀行の融資を受けるための事業計画のポイント
開業資金を抑えるための5つのポイント
開業資金を抑えると、開業後の経営安定にもつながります。以下5つのポイントを資金計画の参考になさってください。
ポイント①クリニックモールで物件費用を抑える
クリニックモールでの開業は、テナント契約や建築費用を抑えやすい選択肢です。複数の医療機関が集まるため患者さんの相互送客も期待でき、集患面でも利点があります。
なお、クリニックモールでの開業は独自のメリット・デメリットがあります。詳細を解説した記事も用意しているため、参考になさってください。
ポイント②医療機器はリース・中古活用を検討する
高額な医療機器をリースにすれば、初期費用を大幅に圧縮できます。たとえば、新品では1,000万円を超える据え置き型エコーが、中古では100万円程度で入手できる場合もあります。ただし、中古医療機器の選択には薬機法上の制限が伴う場合があるため、メーカー保証の継続可否もあわせて確認なさってください。
ポイント③医業承継で初期費用を抑える
既存クリニックを承継する医業承継では、診療科や施設条件が合致すれば、1から新規開業するよりも初期費用を大幅に抑えられます。また、内装・医療機器・患者基盤などを引き継げる点もメリットです。
なお、承継元の院長先生やスタッフとの面談など、信頼関係の構築が承継では大切になります。ポイントをまとめた記事も用意しているため、参考になさってください。
ポイント④医療DX活用で人件費を最適化する
少子高齢化が進む現在、医療業界では慢性的な人材不足が続いています。そこで、従来は人が担っていた業務をシステムへ移行する医療DX化(デジタルトランスフォーメーション)を前提とした業務設計ができれば、採用・人件費を最適化できます。
なお、政策含めた医療DXの詳細について解説した記事も用意しているため、あわせてお役立てください。
ポイント⑤電子カルテ選びで運用コストを最適化する
電子カルテはクラウド型を選択すると、オンプレミス型と比べてサーバー購入費用や保守費用を抑えられ、初期費用の削減につながります。受付・会計・レセプト業務との連携機能が充実したレセコン一体型を選べば、スタッフの業務効率化も図れます。
ウィーメックスが提供している「Medicom クラウドカルテ」は、レセコン一体型の完全クラウド型電子カルテです。導入費用を抑えつつ、使いやすい設計とレセコン開発50年以上の実績を踏まえた算定機能が特長です。
発売以降アップデートを重ねており、利用いただける機能や機器連携の幅も広がっています。詳細は製品ページ、使い勝手は導入ページを参考にいただき、気になる点がございましたらお気軽にご相談ください。
いま開業すべき?現状と廃業リスクを整理
開業を検討する際には収入面のメリットだけでなく、現在の経営環境や廃業リスクについても把握しておく必要があります。ここでは5つのポイントを整理してお伝えします。なお、開業医の収入に関する誤解と事実を解説した記事もご用意しているため、あわせてお役立てください。
勤務医と開業医の収入比較
厚生労働省「第25回医療経済実態調査(令和7年度)」のデータによると、勤務医の平均年収(一般病院開設者別全体)は1,485万円です。
一方、診療所院長の平均年収は有床診療所(入院診療収益あり全体)で3,139万円、無床診療所(入院診療収益なし全体)で2,835万円となっています。
収入ポテンシャルは開業医のほうが高い傾向にある一方で、経営リスクも伴います。
出典:厚生労働省「第25回医療経済実態調査(令和7年度)」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450381&tstat=000001235362&cycle=0&tclass1=000001235363&stat_infid=000040372898&result_page=1&tclass2val=0)
クリニックの廃業状況
東京商工リサーチの調査によると、2025年の医療機関(病院、診療所、歯科医院除く)の倒産は41件(前年比5.1%増)、うち「破産」が40件(前年比11.1%増)と全体の97.5%を占めています。
従業員数別では「5人未満」が15件と最多で、小規模クリニックほど経営悪化のリスクに注意が必要な状況です。
出典:東京商工リサーチ「2025年の「病院・クリニック」倒産 41件 中堅病院が増加、コストと診療報酬が不均衡2026/01/19」(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202314_1527.html)
物価高・人件費高騰が開業に与える影響
近年は建築費や医療機器価格などの上昇が続いており、開業資金は年を追うごとに高騰しています。最低賃金の引き上げや他産業との人材獲得競争が激化するなか、診療報酬に収益が左右されるクリニックでは、賃上げ原資確保が難しい構造であることは念頭に置いておきましょう。
物価高騰がクリニック経営に与える影響をまとめた記事もご用意しているため、より詳細に確認されたい場合は、ご活用ください。
潰れるクリニックに共通する特徴
倒産・廃業に至るクリニックには、以下のような共通点が見られます。
- 明確な運営方針・ビジョンの欠如
- 地域ニーズを無視した立地選定
- 過剰投資と資金管理の失敗
- スタッフとの連携不足と人材活用ミス
- 患者満足度を高める戦略の不足
反面教師として開業前の計画段階で対策を講じれば、廃業リスク低減に役立ちます。
開業前の自己診断チェックリスト
これまでの内容を踏まえ、以下のチェックリストで開業準備の現状を確認なさってください。
クリニック開業を成功させるためのポイント
開業資金の確保だけでなく、事業計画の精度を高め適切なスケジュールで準備を進められるかどうかが、開業の結果を左右します。ここからは、成功に向けた3つのポイントを整理してお伝えします。
事業計画書作成のポイント
事業計画書は融資審査において中心的な役割を果たします。とくに、収益予測に関して楽観的な数字ではなく、根拠のある保守的な見積もりを示せれば、融資担当者の信頼獲得につながりやすいでしょう。
ご自身のクリニックの話ではありますが、計画書作成においては、客観的な視点からチェックを進めることで説得力が高まります。
開業スケジュールの目安
物件決定後の準備期間は5〜6か月が一般的です。保健所・厚生局への届出、スタッフ採用、システム導入など、多くの手続きを並行して進める必要があります。
おおまかな流れは以下のとおりです。
なお、開業に必要な手続き含めた開業準備の全体像を解説した記事も用意しているため、あわせてご参照ください。
開業コンサルタント・専門家を活用すべき場面
クリニック開業は、物件や医療機器の選定と並行して、保健所・厚生局への手続きや資金調達を同時進行で進める必要があります。日々忙しい診療のなか、先生一人ですべてをこなすのは難しい場面もあるでしょう。
準備の負担が大きくなった際には、専門家への相談も有効な手段です。ウィーメックスでも開業に関するコンサルのご相談を承っています。以下のフォームより、お気軽にお問い合わせください。
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まとめ
クリニックの開業資金は診療科・開業形態・立地によって大きく異なるものの、5,000万〜1億円以上を見込んでおくのが一般的です。自己資金は総額の10〜20%を目安に準備し、不足分は日本政策金融公庫や医師信用組合などを活用して調達します。
まずは、物価高騰や人材不足といった外部環境も踏まえながら、資金計画・事業計画の立案から進めてみてはいかがでしょうか。
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