3. 経費を黒字化させるポイントとは?
病院とクリニックでは、経営形態が異なるため、クリニックの経費コントロールについて考えてみます。経費コントロールについては「診療の質を落とさない」「職員のモチベーションを下げない」の2点が重要です。その上でできることを考えていきます。
(1)コストの実態を知る
残念ながらクリニックの院長の中には、自院の経営実態をあまりご存じでない方もいます。「経費コントロールと言えばコスト削減」となりがちですが、まずは自院の利益構造を確認し赤字の実態を探ります。今回は経費コントロールがテーマのため、医療収益の改善や原価については触れません。ただ、単価いくらの患者が何人くる医療機関なのか、基本的な収益構造や原価率は抑えておくと良いでしょう。
その上で、コストについては全体ざっくりでなく、下記の5項目に分けてコストの実態を知ることから始めます。
①人件費
②ランニングコスト(一般経費)
③戦略経費(広告費、研究開発費、教育費)
④金利
⑤減価償却費
一律にコスト削減するのではなく、経費の中身をしっかり把握した上で医院経営を維持する視点でムダをなくす戦略を立てましょう。
(2)経費のムダを探る
経費の無駄を探るという観点では、①②③全てを対象とします。④⑤はすぐに減らすことはできませんが内容を把握しておきましょう。
①人件費
人件費のムダは、働いている人の給与や時給を下げることではありません。採用コストや人事労務管理費のムダはないか確認しましょう。
採用と早期離職の繰り返しは募集時のミスマッチが原因です。採用方法を見直すことで、無駄に繰り返す採用コストの削減、採用とその後の教育に関わる人件費削減ができます。また、専門医療職と非常勤勤務医を雇用しているクリニックは人件費の負担が大きくなりがちです。医療設備投資に合わせて、配置した専門医療職の稼働率は適正かどうか確認しましょう。
②ランニングコスト(一般経費)
医療機器やコピー機、通信費などの保守管理費は適正なのか確認しましょう。開業時に割高な設備や備品を導入したために、毎月の保守管理費や利用料が過大になっている場合もあります。
③戦略経費
戦略経費の中で、広告費は費用対効果をしっかり確認しましょう。効果ないまま、SEO対策の広告費に多額の費用をかけている場合は検討しなければなりません。SEO対策の前に自院の患者さんが知りたい情報をきちんと出し続けるほうが大事です。
(3)院内の労働生産性を上げる
労働生産性を上げるため、ITの活用を考えているクリニックも多いようですが、すぐに大掛かりなIT機器を導入する必要はありません。まずは、院内のスケジュールや情報共有など、院内の連絡や確認で時間が取られることなどからITの活用で改善していくことが重要です。また、新型コロナの影響で、患者さんの問い合わせも増えていますが、すべて電話やメールで個別対応が必要かについてもあらためて検討していきましょう。