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クリニック経営 医師 事務長 2023.02.27 公開

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災害対応事例から学ぶ、診療情報はどうやって保護すべきか

2022年も地震、台風、豪雨など自然災害が各地で発生しました。特に線状降水帯による豪雨被害や大型台風による水害が各地で大きな被害をもたらしました。医療機関においても停電や断水をはじめ、床上・床下浸水などの被害を被った施設もあります。災害時に重要なことは診療継続または速やかな診療復旧であり、そのためには診療情報の保護が欠かせないことは言うまでもありません。実際に水害の受けた静岡県内のクリニックが、どのような対策を施し、電子カルテの診療データを復旧させたのか。その事例を基にあらためて診療データの災害対策について考えてみます。

※本内容は公開日時点の情報です

#労務管理 #マネジメント

目次

一夜にして床上浸水、電子カルテシステムも水没

※PHC株式会社メディコム事業部とPHCメディコム株式会社は2023年4月1日に統合し、ウィーメックス株式会社となりました。

2022年9月23日(金)から24日(土)未明にかけ、台風15号による記録的な大雨により静岡県内では河川の増水などで住宅への浸水や土砂崩れの被害が相次ぎました。24日夕方時点の被害状況は、床上浸水が静岡市の878棟を筆頭に1190棟に及び、床下浸水も690棟に達しました。ライフラインも大きな被害を受け、24日午前時点では停電が静岡市内11万7000戸で発生、携帯電話サービスが利用できない状況が各地で続きました。

そうした中、PHCメディコム静岡営業所管内ではクリニックの床上浸水により電子カルテシステムなどの被害が9件発生しました。「24日朝から被害を受けたクリニックから電話が相次ぎ、『電子カルテ本体が水没した』という説明がありました。詳しい被害状況は不明でしたが、とにかく施設のシステム復旧が第一と考え、ハードウェア保守会社と手分けして即座に被害施設に出向きました」(PHCメディコム東海営業本部静岡営業所所長の小林潤史氏)。しかしながら、道路の冠水も各所で発生していたため、水が引くのを待って現地に到着できたのがお昼過ぎや夕方に、中には当日行き着けなかった施設もあったといいます。

被害のあった9施設の中で電話連絡がなかった施設では、院長をはじめ全スタッフが出勤できず、電話回線も不通だったことが後でわかったといいます。「近隣の薬局が床上浸水に遭ったという情報を入手したため、そのクリニックも被害を受けただろうと推測し、営業所から手を尽くして連絡をとった次第です」(小林氏)。

PHCメディコムは、全国約70拠点の保守サービス会社に高い知識と技術力を持つエンジニアが常駐。ハードウェアの故障やトラブルに素早く対応するハード保守サービスを提供しています。静岡営業所と保守サービス会社の災害時の初期対応は、PHCメディコムのサポート体制があったからこそ可能となったこととも言えます。

診療データをいかに災害から守るか

浸水被害のあった9件はいずれも休診を余儀なくされましたが、被害状況を実際に確認したところ、3施設は無停電電源装置など電子カルテシステム本体以外に留まったものの、6施設では電子カルテシステム本体に被害が及んでいました。そのうち3施設の電子カルテシステム本体の診療データが毀損するほどの被害でした。具体的には、2施設はサーバ機とセカンドサーバとして診療データをミラーリングしているクライアント機の両方が被害を受けていました。ただ、データバックアップ用として設置した外付けストレージに保存していた診療データは被害を受けることなく安全が保たれていました。

PHCメディコムではシステム障害対策のデータバックアップ方式として、厚生労働省のガイドラインに沿ってサーバ機のデータをクライアントでミラーリングする方式で診療データを保護し、さらに外付けストレージでの保存による3重化を導入時に構築しています。
外付けストレージで診療データが保護されていた2施設は、ハードウェア保守会社とPHCメディコム静岡営業所の担当者が電子カルテシステムの代替機を用意して復旧することができました。電子カルテシステムのサーバとクライアントが水害に遭いながら外付けストレージだけが無事だったわけは、外付けストレージを棚の上など高い場所に設置していたためでした。「電子カルテシステムを構成する一連の機器は診察室や受付のフロア上に設置するのが一般的です。静岡市は元々、水害の発生リスクが高い地域であるため、電子カルテ導入時に外付けストレージが浸水被害を受けないよう高い場所に設置することを推奨し、実践してきました」(小林氏)。こうした営業所の方針が診療データの災害対策に役立ったわけです。

最も被害の大きかった1施設は、外付けストレージの設置環境により高所設置ができなかったため、院内の診療データバックアップが機能せず、復旧不可能に陥りました。しかし、同クリニックはPHCメディコムが提供する「ネットワークバックアップ」サービスを利用していたため、医療機関にとって最も重要な診療データの消失は免れました。ネットワークバックアップは、電子カルテ・レセコン・薬局の電子薬歴などのデータを遠隔地のデータセンターに自動的にバックアップするサービス(2011年6月提供開始)。災害などで院内システムのデータが毀損しても、デンターセンターに保存されたバックアップデータと代替機を使えば復旧することができます。同様のサービスは現在、「Medicom Cloud運用継続サービス」として提供されています。

データセンターへのバックアップで救われた診療データ

診療データ保護のためにインターネット経由でデータセンターに毎日データバックアップしていたとしても、実際のデータ復旧作業は被災状況によって容易ではないこともあります。最も被害の大きかったクリニックは、電源やネットワークも失われてしまったため、保守サービス会社による現地でのデータ復旧ができない状況でした。そこで静岡営業所は営業所内でデータ復旧のためのシステム環境を構築することにしました。「クリニックでは停電が続き、インターネットも使えない状態だったため、営業所内に被災したクリニックと同等の電子カルテシステムを用意し、データセンターからデータをダウンロードするためのVPN接続環境を構築して復旧作業を行いました」(PHCメディコム東海営業本部静岡営業所インストラクターの野村光史氏)。

Medicom Cloud運用継続サービスを必須対策に

台風15号によるクリニックの被災は建物自体が被害を受けたところが多く、休診が続いたり、2週間後に規模を縮小しての診療再開を余儀なくされたりしました。中には2023年を迎えても未だ診療を再開できずにいるクリニックもあります。ただ、診療は再開できずとも、被災が月末に近かったためレセプト請求のために診療データの復旧が急がれました。幸い電子カルテシステム本体系が被災した全施設とも、院内のバックアップデータまたはネットワークバックアップのデータにより、月初のレセプト請求を可能になったといいます。被災したクリニックは医事一体型の電子カルテシステムであったため、特にデータセンターにバックアップされたデータはカルテデータとレセプトデータの両方が保護されたことも幸いだったと言えます。

様々な自然災害におけるあらゆる被災状況を想定して対策を講じることは非常に困難です。しかし、PHCメディコム静岡営業所の事例でも理解いただけるように、クラウド環境にカルテデータ・レセプトデータをバックアップしておくことの重要性があらためて浮き彫りにされました。院内でデータ保護の2重化、3重化を施しても、災害の被災状況によっては毀損する危険性があったわけですから。「今回の台風被害などのように、災害発生後はデータセンターでのバックアップサービス契約が増加することは過去にも経験してきました。しかし、時間経過とともに関心は薄れてきます」(小林氏)と言います。当然ながら災害は、いつ誰にも襲いかかる危険があります。診療データ保護の重要性は医療関係者の誰もが理解されていることであり、その備えとして院内の電子カルテシステムとクラウドサーバをハイブリッドで運用するデータバックアップは必須といっても過言ではないでしょう。

現在提供されているMedicom Cloud運用継続サービスは、医事一体型電子カルテシステムのデータを逐次クラウド上に保存しています。院内のデータが使用できなくなった際にはデータ復旧の環境構築や作業の必要もなく、クライアント証明書をインストールしたパソコンとID/パスワードさえあれば、即座に平常時とほぼ同じ環境で電子カルテ運用ができます。Medicom Cloud運用継続サービスの活用は、災害時の診療データ保護に加え、診療継続を可能にするものです。

インタビュー対象者

PHCメディコム静岡営業所
所長 小林潤史氏

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