医薬品の廃棄ロスが薬局経営に与える影響
適切な在庫を備え、廃棄ロスを防ぐ、在庫費用と管理の負担のバランスをとる在庫管理方法は薬局経営の要です。根拠のある在庫管理で、不明確な指示による現場のモチベーションダウンを防ぐ方法を解説していきます。
不動在庫が経営の痛手に
不動在庫とは、処方されずに使用期限まで調剤室の棚を占有し、最終的に廃棄されると薬局経営に大きな影響を及ぼす可能性の高い在庫のことです。
医薬品は管理の難しさから管理薬剤師や発注業務の担当者に余計な作業やストレスを与え人材定着率の低下の要因になります。
どうして不動在庫が発生するのか
薬局では処方箋によって調剤が行われます。「このくらい処方されるだろう」という予測のもとで在庫は備蓄されます。
この流れの中で、普段処方されている薬については、発注量が処方量に対し多すぎたとしても、いずれ消費されることになります。
このような一般的な在庫については、現場の薬剤師や事務員は「いずれ処方されるのだから、患者様に迷惑がかかったりするくらいなら、余分に在庫をとっておけばいいのでは?」という気持ちになるでしょう。
一方の経営者は、在庫管理が甘くなって余計なキャッシュが必要になることを恐れることになります。
このように在庫管理の基準がないために起こる問題は、経営者と従業員の摩擦の原因になるため注意が必要です。
そして、このような一般的な在庫は本来なら時間が経てば消費されるはずなのに、なぜ不動在庫になってしまうのか検討します。
まず、不動在庫とは「購入したのはいいものの、その後に処方されない在庫」です。
そのため下記4つの理由が不動在庫のほとんどです。
①処方されない在庫(パッケージ開封済み)
これは通常の包装単位(100錠等)で購入し、数回処方が出たもののその後処方されなくなってしまった場合です。例えば処方箋を受け取り、引き続きその薬が消費されると予測したものの、何らかの理由でその後消費されなくなった在庫です。
②処方されない在庫(パッケージ未開封+なんらかの理由で返品できない)
これは、処方が出ると予測して発注したものの、未開封のまま長期間処方されなかった結果、使用期限が切迫し卸業者が返品を拒否した場合の医薬品などが当たります。
③今まで一般在庫として処方されていたものの、他の製品に代替されて処方されなくなった在庫
これは、例えば近隣医療機関の医師が、他のメーカーの医薬品に変更して処方するようになったり、いわゆる合剤(複数の薬剤が1つの錠剤に配合された医薬品)の処方に変更したりすると、それまで処方されていた薬がまったく処方されなくなってしまう場合があります。
④念のために開封済みの薬を少量購入した在庫
このような在庫は、備蓄する医薬品の予測が難しい場合に起こります。特に新規オープンの薬局で発生することがあります。
予測どおりに処方されない場合は後で返品をするか、最小限の備蓄をするために近隣の薬局などから小分け(開封済みの医薬品を小単位で購入する)してもらい在庫のバランスを取ります。
しかし、返品を躊躇したり、開封済みの小分け薬は返品できなかったりします。これが不動在庫になってしまいます。
在庫管理の対策とは
在庫量を削減したい場合は、一般的に「処方されるものだけを購入する」ことが鉄則となります。しかし、在庫とは処方に前もって準備し薬局のお客様である患者様の利便性を向上させる機能があります。
そのためには、在庫管理機能を備えた「レセコン」を駆使し、処方量を予測し購入する方法が一般的です。また、在庫管理には人的コストが発生します。この観点を忘れないようにしないと、安価な薬に多大な人件費をかけてしまいます。在庫管理は購入費と管理するための人件費のバランスを考えながら行うと良いでしょう。そのためには次の4つの方法の組み合わせが有効です。
- ・ABC分析
- ・カムアップシステム
- ・発注点管理方式
- ・ダブルビン方式
ABC分析とは、薬局で取り扱う品目を納入価ごとにグルーピングすることを指します。
Aは、特に納入価の高い薬で、種類自体は薬局内の在庫に対して僅かなもの
Bは、薬局の在庫総額の主な部分を占める薬
Cは、在庫総額の下位にあたる、納入価の安い薬で、在庫数が多くても総額が低いもの
ABC分析は、納入価で並び替えた、上位20%をA、下位20%をC、真ん中の在庫をBにグルーピングし、それぞれに適した方法で在庫管理を行う方法です。薬局の在庫管理機能付きレセコンで行うことができる場合があります。使っている在庫管理システムで、納入価順に並び替え使用します。
1錠あたりの影響が大きいAグループは、患者様が何人いて、それぞれいつまでに、どのくらいの薬が必要かをカード形式で管理します。カードには、1枚1患者毎の処方内容をプリントしてカードに貼り、来局予定日ごとに並べておきます。毎日、その後の数日分をチェックしいつまでにどのくらい発注すればよいかをチェックできます。
このチェック方法はカムアップシステムと呼ばれます。
次に、Bグループは発注点管理方式で発注します。
これは、一カ月のうちもっともその薬が処方される日の処方数に、発注してから納品されるまでに処方される処方数を加えた数を発注点にし、発注点を下回ったら発注する方式のことです。
最後に、Cグループは基本的にダブルビン方式で発注します。これは、安価な薬剤の在庫管理には最低限の管理体制で対応し、人件費増加を防ぐ方法になります。
ダブルビンというのは管理手法の名称で、薬局であれば2つの包装のうち1つが開いたら次を頼む、という方法です。一度の処方量や毎月の処方量が多く、納入価も低い薬剤の管理に適しています。
このように、全てを徹底的に管理すると人件費などの管理費用が余計に発生してしまう一方、管理をせずに勘に頼った在庫管理をすると、在庫費用の増加が起こります。在庫の種類を、グルーピングして在庫管理のバランスをとることで、総じて在庫費用面・管理負担面の両方に納得感の高い在庫管理が達成できるのです。
まとめ
いかがだったでしょうか、これらの方法で、不動在庫はある程度削減することができると思います。大切なのは、A・Bグループでの大量の不動在庫を起こさないことです。そのために、まずは上記ルールを導入し適切に運用するところから始めましょう。
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