2. 働き方改革による医療業界の影響と対策
働き方改革関連法では「時間外労働(残業)に対する上限の厳格化」が行われました。時間外労働に対する上限は一般企業と医療機関とで異なります。また、医師と医師以外の医療従事者でも施行時期が異なります。
医院・クリニックの医師の長時間労働も見直しに!要因・背景は?
診療科や地域による医師の偏在が原因で、病院勤務医を中心に過重労働による医師の過労死が起きています。厚労省の「医師の勤務実態調査」によると、2019年9月の1週間に、医師の上位10%が年換算1,824時間、週38時間もの時間外労働をしています。医師の長時間労働の改善は喫緊の課題です。
医院・クリニックの医師の労働時間の把握方法
働き方改革を推進するため、厚生労働省は2019年4月に労働安全衛生法を改正し、「企業が従業員の労働時間を客観的に把握しておくこと」を義務化しました。医療機関もすべての事業所が適用となっており、反すると法律違反となります。
労働時間の管理については、2017年の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に従います。
医師の労働時間の管理についても、他の従業員と同様に次のような客観的な記録方法とすることが求められています。
①労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること
②使用者が自ら現認するか、タイムカード・ICカード・パソコンでのログインなどで確認する
訪問事業や研修等で直行直帰も含めて、客観的な記録と使用者の確認が必要なのです。
医院・クリニックの医師の長時間労働への対策
医師の長時間労働への対策としては、医師でなくてもできる仕事を他の医療従事者に移管するタスク・シフティングやICTの活用が有効です。
例えば、医師の判断を待たずに診療補助を行うことができる特定行為看護師の育成やクラーク(医師事務作業補助者)のカルテ入力、Web問診などICT技術を活用した業務効率化で医師の負担を減らすことが可能です。
年次有給休暇取得の義務化の対策
入職後6カ月継続勤務し労働日の8割以上出勤したスタッフは、最低10日の有給休暇を取る権利を持ちます。2019年4月以降の年次有給休暇取得の義務化というのは、これらのスタッフに対して、スタッフが希望してもしなくても、5日以上の有給休暇を時季指定して与えてくださいという制度です。
スタッフが既に時季指定や計画的に5日以上の有給休暇を取得している場合は、付与する必要はありません。
また、対象となるのは正職員だけではありません。パートやアルバイトも、年10日以上の有給休暇の権利があれば対象となります。
継続勤務年数(年) |
0.5 |
1.5 |
2.5 |
3.5 |
4.5 |
5.5 |
6.5以上 |
付与日数(日) |
10 |
11 |
12 |
14 |
16 |
18 |
20 |
年次有給休暇の計画的付与制度の活用
年次有給休暇の計画的付与制度を導入するにあたって「就業規則による規定」と「労使協定の締結」をしなければなりません。
年次有給休暇日数のうち5日は個人が自由に取得できる日数として残しておく必要があります。5日を超える日数が計画的付与の対象となります。
計画的付与制度の実施については、次のような例を参考にしてください。
- 年末年始や夏季に病院・クリニックを休みにする。
所定の休日に個別の有給休暇を組み合わせ、長期連休にすることができます。
- 部署別に交代で付与する
交代で計画的に休むことで「お互い様」と有給休暇を取りやすい組織になります。
- 個人別に年次有給休暇計画表を作って付与する
半日休暇を組み込むこともできます。